番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは79歳で、全日本マスターズ陸上選手権・10連覇を達成。周りから「超人」と呼ばれている競歩選手のグッとストーリーです。
陸上競技のなかで「最も過酷な競技」と呼ばれている「競歩」。ただトラックを歩いているだけに見えて、実は歩き方に厳しいルールがあり、両足が地面から離れるなど、少しでも「走った」と見なされると反則を取られます。違反が3回重なると失格。厳格な審判の目が光るなか、走らずに「速く歩く」には、人並み外れた体力と精神力が要求されるのです。
その過酷な「競歩」を、59歳になってから始め、シニア世代が参加する「全日本マスターズ陸上選手権」で前人未踏の10連覇を達成した選手がいます。千葉県船橋市に住む、米澤清彦さん・79歳。……人呼んで「超人」。
中学・高校時代は水泳部に所属していましたが、ずっと補欠だった米澤さん。大会にも出られず、プールの掃除や選手たちのケアなど雑用がほとんどで、競技をする楽しさは味わえませんでした。
社会人になってから、地元・船橋のスイミングクラブに入会。趣味で水泳を続けていましたが、定年を間近に控えた59歳のとき、コーチの何気ない一言で、米澤さんの人生は大きく変わりました。
「米澤さん、あなた陸上やったらどう? 競歩なんか向いてるんじゃないの?」
米澤さんが、強靱なスタミナや持久力を持っていることを見抜いたコーチによる、突然の提案。この言葉に、米澤さんは背中を押されました。
「『ああ、他人のほうがむしろ、自分のことをよく見ているんだな』と思いましたね。『よし、定年前に新しいことをやってみよう!』と決意したんです」
さっそく陸上クラブに入り、競歩のコーチに指導を仰いだ米澤さん。しかしそのコーチは、米澤さんにしばらく競歩の大会に出ることを禁じました。それは「水泳と競歩では、使う筋肉がまったく違うため、焦って故障をしないように」という配慮からでした。その間、米澤さんは競歩の基本と戦い方をみっちり学び、水泳向けだった体を陸上向けの体に造り替えてから、64歳で初めて大会に出場。
全国各地で行われる大会に、年間20試合以上参加し、目覚ましい成績を残していった米澤さん。69歳のとき、シニア大会の頂点である「全日本マスターズ陸上選手権」に初めて出場し、みごと初優勝したときは、これまで味わったことのない感動に、思わず涙しました。
以後、国内の大会では無敵を誇り、連勝記録を200以上に伸ばしていった米沢さん。2016年には「世界マスターズ陸上競技大会」に初出場し、75歳から79歳までの「M75」クラスでみごと優勝。日本人初の金メダルを獲得しました。
そして去年の9月に行われた、10連覇が懸かる全日本マスターズ。なんとか連覇を阻止しようとする「M75」クラスの手強いライバルたちと、米澤さんの持ちタイムは横一線でしたが、米澤さんには秘策がありました。
「私は同じクラスの選手を見て戦うのではなく、同じトラックを走っている、自分よりちょっと若い『M70』クラスの選手たちをライバルと思って、戦ったんです」
当然、年が若いクラスほどタイムは速くなりますが、そのペースに負けじとついて行き、彼らとほぼ変わらないタイムでゴールインした米澤さん。気付けば、同じクラスの選手たちを大きく引き離し、圧勝で10連覇を達成したのです。
今年の全日本マスターズは、米澤さんは80歳になるため、80歳から84歳までの「M80」クラスで戦うことになりますが、超人・米澤さんはこう宣言します。
「80歳以上で競歩をやっている選手は、ほとんどいません。あと10年、90歳になっても、足が動く限りは現役で、競技を続けていきますよ」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
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