番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、450年続く糀の老舗を受け継ぎ、昔ながらの製法で作る、米粒の入った甘酒を復活させたご主人のグッとストーリーです。
群馬県高崎市の、旧中山道沿いの角地に建つ老舗・糀屋(こおじや)。創業は永禄6年、西暦1563年。日本は当時、戦国時代でした。
糀屋は、糀を使って作る味噌・たまり漬けなどを販売。当主は代々「藤平(とうへい)」という名前を名乗り、450年以上にわたって高崎の地で商売を続けて来ました。
13年前、第22代の当主に就任したのが飯島藤平さん・62歳。先代の当主であるお父さんが亡くなったあと、役所に改名届を出して、跡を継ぎました。
「450年の歴史を受け継ぐ、覚悟の表れ、ということです」と言う藤平さん。
糀屋は代々、伝統を受け継ぎながらも世の中の変化に対応して、商売を続けて来ました。
22代・藤平さんも新商品を開発。その名も「糀屋藤平の甘酒」です。ビン入りのこの甘酒、ラベルには先々代が当主だった大正時代の糀屋の写真が印刷されています。
米糀から、江戸時代より伝わる伝統の製法で造ったもので、お米の粒々が入った昔ながらの甘酒。健康志向の高まりから、地元のドラッグストアが「昔ながらの自然な製法で造られた、食感のいい粒々入りの甘酒を造れないだろうか?」と糀屋に依頼したことから、開発が始まりました。
しかしこれが、かなりの難題でした。粒々入りの甘酒は、加熱すると変色して風味が落ちてしまうため、滅菌が非常に難しく、賞味期限が短いものしか造れないのがネックでした。糀屋は異分野の技術を応用することで、滅菌しても風味が落ちない、粒々入り甘酒の開発に成功。
さらに100人以上を集めた試飲会を6回行い、3年かけて味と食感を追求して行きました。
こうして完成した、粒々入りの「糀屋藤平の甘酒」。去年の2月から販売が始まり、「昔の甘酒が帰って来た」と評判も上々。新たなユーザーも開拓し、今後、製造本数を増やして行く予定です。
「老舗の伝統を守りながら新商品を出すというのはプレッシャーがかかりますが、そもそも粒々のない甘酒を開発したのも、うちの先代でしたから」と言う藤平さん。
昭和30年代、先代の藤平さんは賞味期限を延ばすため、粒々を漉(こ)した濃縮タイプの「こうじのしずく」という甘酒を開発。糀屋の主力商品へと成長させました。藤平さんは言います。
「当時はまだ冷蔵庫が十分に普及していませんでした。粒々のない甘酒は先代が流通に乗せるために、何とか日持ちがするものを、と苦心の末に考え出したものなんです」
粒々をなくした甘酒も、粒々を復活させた甘酒も、時代の要請を反映したもの。世の中の動きに応じて新しいものを生みだし続けて来たからこそ、糀屋は450年も営業を続けて来られたのです。
子供の頃から、父親である先代の藤平さんに様々なことを教えられたと言う、現在の藤平さん。
「実は私、次男なんですよ(笑)」本当はお兄さんが跡を継ぐはずでしたが、別の道に。断熱材関連の企業に就職し、ゆくゆくは叔父さんが社長を務める断熱材メーカーに入る予定だった藤平さんが、後継者として呼び戻されたのです。
「糀屋で育ったので、糀のことは特に勉強しなくても詳しかったんです。私のなかにも、糀の菌が住み着いているんですね(笑)」
藤平さんが、先代から口を酸っぱくして言われたことがあります。
「商売がうまく行っても、自分の力だと思うなよ。周りの人に可愛がってもらっているから商品を買ってもらえるんだ。だから、地域の人たちに貢献することを考えなさい」
いま糀屋では、親子で参加できる「手作りみそ教室」を定期的に開催しています。ふるさとの味・家庭の味を忘れないようにと、先代のときに始まり、40年以上続けているこの教室。子どもたちの「食育」にもつながると好評です。
藤平さんは言います。
「同じ土地で450年、商売を続けて来られたのも高崎の人たちのお陰です。これからも、地元に貢献する新商品を考えて行きたいですね」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
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