番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

きょうはふるさと・奈良の斑鳩（いかるが）の街を活性化するため、ちょっと珍しいカフェを開店した、鍼灸師さんのグッとストーリーです。

「CAFE・鍼灸 ZADAN」の内装　掘りごたつの席もある

聖徳太子ゆかりの寺院で、世界遺産でもある法隆寺のお膝元、奈良県・斑鳩町。法隆寺夢殿のすぐ横に、古民家を改装したカフェがあります。

8畳間が4つあるゆったりした造りの店内には、ソファに、掘りごたつの席、夢殿が見られる座敷、木のカウンターなど、全部で25席の落ち着ける空間が広がっています。自家焙煎した豆を挽いて淹れた、香り豊かなスペシャルティコーヒーが味わえると評判で、地元の常連さんと観光客でいつも賑わっていますが、
「最近、ヒザが痛むんですよ」「どんなふうに痛むんですか？　なるほど、原因はたぶん…」

お客さんとそんな会話を交わしているのは、このカフェのオーナーで、鍼灸師でもある川口真さん・39歳。実はこのお店、中庭を隔てた奥に鍼灸院が併設されており、希望者はそこで治療が受けられるのです。店名は「CAFE・鍼灸 ZADAN（ざだん）」。なぜ真さんは、鍼灸師を志し、一風変わったこのカフェを開業したのでしょうか？

「ZADAN」オーナーで鍼灸師でもある 川口真 さん

「うちの姉が難病にかかっていて、『お姉ちゃんを少しでも楽にしてあげよう』と鍼灸師を目指すことにしたんです」
……お姉さんの病気は、当時国内に患者が2人しかいなかった背骨が横に曲がる難病の、脊柱側湾症（せきちゅう そくわんしょう）。高校卒業後、アルバイトで学費を稼ぎ、鍼灸の専門学校に進んだ真さんは、大阪の接骨院や病院で働きながら鍼灸師の資格を取得。

背骨がねじれて肺が圧迫され、呼吸が苦しくなったお姉さんに針を打ってあげると、「真ちゃんのおかげで、だいぶ楽になったよ」と喜んでくれました。

その後、大阪から地元の斑鳩町に戻った真さんは、実家の一室を使って鍼灸院を開業しましたが、「どうも鍼灸はとっつきにくい、というイメージがある。もっと気軽に治療を受けられる場所を作って、斑鳩の街を元気にしたい」という思いから、街なかに鍼灸院を開こうと決意。そこで思いついたのが、カフェを併設することでした。

「……実はうちの妻の親戚が、コーヒーの焙煎士で、いつも自家焙煎したおいしい豆を送って来てくれたんです」

「CAFE・鍼灸 ZADAN」の内装　ランプが特徴的で可愛らしい

じっくり焙煎したおいしいコーヒーが飲めて、健康相談にも乗ってもらえて、針灸治療も受けられる、そんなお店を作って敷居を低くし、もっと鍼灸のことを知ってもらいたい。そして、生まれ育った故郷・斑鳩の街の魅力も伝えたい……物件探しは苦労しましたが、4年前、法隆寺夢殿の真横にある古民家が空き物件となり、外観はそのままに、内装を造りかえ、夫婦で「鍼灸カフェ」をオープン。

ローマ字で「ZADAN」という店名には、このお店に集ってもらい、お客さんたちに自由に語り合ってもらいたい、という真さんの願いが込められていました。
「鍼灸治療を受けたお客さんは、コーヒーが半額で飲めるサービスもやっています。お客さんの体の状態に合わせて、施術後にどんなコーヒーを飲んだらいいかもアドバイスしてますよ」

コーヒー豆は、奥さんの彩さんが、通常の倍の30分掛けて自家焙煎。「時間を掛けて焙煎した豆は、シワが伸びて、宝石みたいに光るんですよ」と言う真さん。
オープンから4年、「ZADAN」は真さんの願い通り、知らない人同士が出逢い、つながる場へと発展し、知り合った人同士がお店のスペースを借りてイベントを行ったりしています。

「この店をやっていなければ、こんなにたくさんの人とつながれませんでした。これからも、『ZADAN』に行けば楽しいことを教えてもらえて、いろんな人とつながれる……そんな店にしたいですね」

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送　土曜　8:00-10:50