番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、さくらももこさんに憧れて、アルバイトとして出版社に入り編集長に昇格。ヒット本を多数生みだし、夢を実現させた女性編集長のグッとストーリーです。
最近の出版界で大きなブームになっているのが、人気ブランドとコラボしたアイテムが付録に付いている、女性向けの「ブランドムック本」。その先駆けとなったのが宝島社です。
今年4月、サングラスをかけた顔がデザインされた「a〜jolie(アジョリー)サングラス かごバッグBOOK」が発売1カ月で完売。異例の重版も決定しました。この本を企画したのが、宝島社・マルチメディア局の女性編集長・皆川祐実さん、32歳です。
街に出ると、行き交う人たちをボーッと観察するのが、皆川さんの日課。自分の目で集めた情報から、ヒット本を作るヒントが生まれてくるそうです。
「おととしぐらいから、ショーウィンドウのマネキンが持っているサングラスのかごバッグが何となく気になっていたんです。去年は、表参道や新宿でもたまに目にするようになって」
さっそく販売元のブランドに連絡しすると、注文から1年待ちの状況。「これを付録につけたら、絶対に売れる!」と確信した皆川さんは、付録用バッグのデザイン決めから、製造工場の手配などの交渉もこなし、大ヒットにつなげました。
「本が売れると、スタッフも、ブランドも、書店さんもみんなハッピーになれるんです。だから“売ること”には、すごくこだわっていますね」
そんな皆川さんですが、子どもの頃の夢は「絵描きさんになること」。とくに大好きだったのが、さくらももこさんのマンガ『ちびまる子ちゃん』でした。
「わたし、大きくなったら、さくらさんみたいに素敵な本を作る人になりたい!」
そんな夢を抱いた皆川さんは、栃木の高校を卒業すると、多摩美術大学に進学します。
卒業後、本の装丁を担当するデザイナーを目指しましたが、求人は経験者が対象のものばかりで、すべて不採用に……。2008年春、たまたま編集のアルバイトを募集していた宝島社で働き始めました。
「周りは年上の編集者ばかりで『仕事は自分で見て覚えよ』という感じでした」
パソコン関係の本や、年賀状の本作りから始めて、だんだん編集のスキルを身に付けていった皆川さん。契約社員を経て、正社員に昇格しました。
ちょうど皆川さんが入社した頃、宝島社では新規事業として「従来の本のイメージにとらわれない、物を主体にした本」を作るマルチメディア局が発足。その初期メンバーになった皆川さんは、さくらももこさんの大ファンだと周囲に公言していたことが実って、『ちびまる子ちゃん』連載開始25周年記念・豪華付録付きアニバーサリーブックの編集を担当することになりました。ついに憧れのさくらももこさんと、直接仕事をすることに……。
「さくら先生は、原稿はすべて手書きなんです。初めて『宝島社 皆川様』という直筆原稿のFAXをもらったときは、先生に認識してもらえたのが嬉しくて、思わず泣いちゃいました」
その後も、さくらさんサイドの信頼を得て、『ちびまる子ちゃん』や『コジコジ』の付録付きムックを多数手掛けていった皆川さん。ただし、あまり表に出なかったさくらさんと直接対面したことは、一度もありませんでした。
「先生の本が作れるだけで満足でしたし、いつかお逢いできるように頑張ろう、と思っていたんです」
ところが……8月に飛び込んできた、突然の訃報。
編集部で一報を聞き、一瞬、頭が真っ白になったという皆川さん。そのあと一人になったときに、堰(せき)を切ったように、涙が止めどなく流れてきました。
「私は、自分のやりたいこと、みんなが喜ぶことをやっていったほうが、仕事って楽しいと思うんです。自分にウソがないように……まさに、さくら先生がそうでした」
いま皆川さんは、さくらさんへの感謝の一冊を企画中です。
「自分がファン代表として、いちばんいい本を作れると思っています。先生への恩返しの意味でも、みんなが喜んでくれる、素敵な本を作ってみたいですね」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
番組情報
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