女性の視点で“6次産業”を発展させる育雛場経営者のストーリー
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、お父さんが始めたニワトリのひなを育てる会社を継ぎ、女性の意見を経営に取り入れて大きく発展させた女性社長のグッとストーリーです。
最近よく聞く「6次産業」という言葉。農業など第1次産業の経営者が、第2次産業の食品加工や第3次産業の流通・販売も同時に手掛けることを指し、1×2×3で「6次産業」なのです。
この農業の「6次化」を理想的な形で進めているのが、福岡県飯塚市で「畠中育雛場」を経営する2代目社長・ 畠中五恵子さん・54歳。
「育雛場(いくすうじょう)」は「育てる雛の場所」と書きますが、もともとは五恵子さんのお父さんが脱サラして始めた会社で、ひなを育てて養鶏場に売る本来の事業のほか、余ったひなに良いエサを与えて育て、黄身が濃厚な高級卵も生産しています。五恵子さんは、その卵を使ってスイーツなどの加工品を作り、20年前からいち早くネットでも販売。成功を収めてきました。
「私は男のきょうだいがいなかったので、子供の頃から父に『お前が跡を継ぐんだ』と言われて育ったんです。私は反発していたんですけど、なぜかこうなっちゃって(笑)」
お父さんのススメで大学は獣医学科に進んだ五恵子さん。そこでご主人と出逢い、結婚しました。
「私は跡を継ぎたくないから、卒業後は県の職員になったんですが、夫が『僕は次男だから、お婿さんに行ってもいいよ』と言うんで、私も公務員を辞めて、夫と一緒に父の会社に入ったんです」と言う五恵子さん。
当然、ご主人が社長になってくれると思っていましたが、ご主人に「僕は経営者より現場の仕事がしたいから、経営は君がやって」と言われ、五恵子さんは主婦業をしながらお父さんのもとで修行し、会社経営にあたることになりました。
経営にはまったくの素人だった五恵子さんでしたが、「うちの卵でお菓子を作ってみたら?」というお父さんの一言がきっかけで、同僚の女性社員と一緒に講習を受けて、スイーツ作りを始めました。
卵が濃厚な「たまごんプリン」や「窯出し半熟チーズケーキ」「米粉ロールケーキ」などの人気商品はすべて「卵の美味しさを伝えたい!」という思いから生まれたもので、何度も女性社員と試食を重ね、どれも女性の意見が反映されています。
「だから売れるんです。いちばんの消費者でもある女性は、味や値段への評価が的確なんです。男性は経営者の視点で商品を作ってしまいがちですけど、農業を『6次産業化』するには、女性の視点が絶対に必要ですね」と言う五恵子さん。
卵の美味しさをPRするため、9年前に始めた「たまごご飯カフェ」も五恵子さんの発案です。メニューは卵かけご飯だけしかありませんが、350円で卵もご飯も食べ放題、というこのカフェは行列ができるほどの人気です。
「卵本来の美味しさを知ってもらうために、赤字覚悟でやってます」と言う五恵子さん。8年前にお父さんが亡くなったあと、二代目社長に就任。女性社員やパートの女性たちに「どんどんアイデアを出してよ! いいものは採用して商品にするから!」と呼び掛け、女性が活躍できる職場づくりを実現させています。
女性の社会進出と言うと、どうしても家事や育児との両立が問題になりますが、実は五恵子さん自身も双子を含む5人のお子さんを育てながら、会社を経営していました。
「『すごいですね』ってよく言われるんですけど、勤務時間がキッチリ決まっている会社だったら、とても無理でしたね。時間が自由になる農業だから何とかできたんです」と言う五恵子さん。そのパワーの源は何なのか、聞いてみました。
「自分が『楽しい』と思うことを、どんどんやってみることですね。私もそうですけど、好きなことをやっているときの女性のパワーは、本当にすごいものがありますから(笑)」
八木亜希子 LOVE&MELODY
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