不動産の営業マンに転身した元プロ野球投手のストーリー
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、35歳で、まったく未知の世界に飛び込み、第二の人生を切り拓いた元・プロ野球のピッチャーの、グッとストーリーです。
東京・練馬区の住宅街を毎日スーツ姿で廻り、家を買おうと思っている人に、物件について説明。時には購入してくれた人の所に行って、修繕の手配など、アフターケアも行う不動産会社の営業マンがいます。5年前、まったく経験のなかったこの世界に飛び込み、今は大勢のお客さんから信頼されているのが、城北不動産・練馬桜台支店主任の 鎌田祐哉(かまだ・ゆうや)さん・39歳。
お客さんに名刺を渡すと「もしかして…ヤクルトの?」と言われることもよくあるという鎌田さん。実はかつて、東京ヤクルトスワローズでプレーしていた、元プロ野球のピッチャーです。2000年、早稲田大学から、ドラフト2位でヤクルトに入団。先発投手として活躍しました。その後、楽天イーグルスに移籍しますが、故障で戦力外になり、今度は台湾のチームに移籍。16勝を挙げて最多勝のタイトルを獲りましたが「来年はアメリカ人の助っ人を獲るから」と言われ、1年で解雇……。
「台湾で活躍して『やりきった』という思いもあったんですよね。家族もいますし、早く次の道を探さなければ、と思って…」という鎌田さん。ハローワークに通ったりもしましたが、思うようにはいきませんでした。
そんなとき、知人に紹介され、食事をすることになったのが、現在所属する会社の専務でした。「君は真面目そうだし、ウチで頑張ってみないか?」とスカウトされ、鎌田さんは未知の世界に飛び込むことを決意。2013年4月、35歳で城北不動産に入社し、戸建て売買の営業職に配属されました。しかし、会社勤めの経験がまったくなかった鎌田さん、入社当時は、コピーの取り方、電話の応対、言葉遣いにも戸惑い、ときに上司から厳しく叱責されることもありましたが……
「今でも心が折れそうなときは、自分が活躍した試合の映像を見て自信を取り戻してます。プロ野球選手って意外と打たれ強いんだなって、野球を辞めてから気付きました(笑)」
家は一生の買い物。そう簡単に売れるものではありません。なかなか販売成績が伸びないとき、上司から「お前はまだ、プライドを捨てきれていない」と指摘されたことがありました。自分では、この世界に入ったときに、元プロ野球選手というプライドは捨てたつもりでしたが、野球選手特有の「気持ちの強さ」が、お客さんを遠ざける原因になっていたことに気付きます。
「大事なのは、自己犠牲の精神だと思うんです。自分の欲とか思いとかよりも、まずは相手のことを考える。そうすることで、信頼されるようになるんです」
以後、お客さんの気持ちに沿って接客をするようになり、選手時代に、教え上手なコーチから学んだ人の心のつかみ方なども応用できるようになりました。販売成績も上がり、「どんなことがあっても、家はあなたから買いますから」と言われるようになった鎌田さん。家を買ってもらったお客さんとは、その後も付き合いが続き、まるで家族のような関係になるそうです。
「『この家に住んでよかった』というお客さんの笑顔を見ていると、この仕事をやっていてよかったと思いますね」
新しい道を選択し、第二の人生を歩む人に、鎌田さんからこんなメッセージをもらいました。
「何とかしなきゃ、と焦って自分を追い込むんじゃなく、『何とかなる』と思って前向きにやることです。そうすると、本当に何とかなるんですよ。まずは、目の前のことに一所懸命取り組むことです。そうすると、それを見ている誰かが、必ず手を差し伸べてくれますから……」
【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2018年4月7日(土) より
番組情報
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