番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、過疎の島に一家で移住し、古民家を改装して図書館をオープン。島民同士のふれあいの場を作った女性の、グッとストーリーです。
香川県の高松港からフェリーでおよそ40分。瀬戸内海に浮かぶ、外周およそ5キロほどの小さな島、男木島(おぎじま)。かつては1,200人ほどの島民が暮らしていましたが、年々、高齢化と過疎化が進み、現在、島の人口は200人を割っています。しかし、美しい自然に惹かれて移住する若い人たちも、最近少しずつ増えてきました。4年前の春、大阪から男木島に一家3人で移住したのがWebデザイナーの、額賀順子(ぬかが・じゅんこ)さん・43歳。
「男木島は、夫の生まれ故郷なんです。すごく小さい島なので、どこからでも海が見えるのがいいんですよね」
20年ほど前、夫の大和(やまと)さんと初めて男木島を訪れた順子さん。福島県郡山市の出身で、海のない盆地で育った順子さんは、自然豊かなこの島がすぐに気に入りました。大和さんはIT系の企業を経営していますが、2013年の夏、瀬戸内国際芸術祭の手伝いをするため男木島に長期滞在。このとき順子さんは、小学生の娘さんも連れて同行しましたが、男木島で日々過ごすうちに、家族全員でこの島で暮らしたい、と強く思うようになりました。
「でも移住するには一つ、大きな問題があって……小・中学校が休校になっていたんです」
娘さんはまだ小学生だったため、島に学校がないとなると、移住は不可能になってしまいます。大和さんが子供のいる他の移住者とともに、市議会などに学校再開を働きかけた結果、それが実現。2014年春、一家は晴れて男木島に移住しました。なんとか教育環境は復活しましたが、文化が根付かなくては、新たな若い移住者は増えないと考えた順子さんは、島に図書館を作ることを思い立ちます。
「私は本を2千冊ほど持っていて、前から夫に『何とかしろ』と言われていたんですが、図書館を作って寄付すれば、まさに一石二鳥だなと思って(笑)」
そんなある日、順子さんは、男木島育ちの木材で作られた、空き家になっている築100年の古民家に出逢い、この建物をリフォームして図書館にしようと決意。権利者を探し出して、改装する権利を手に入れ、有志のみんなと、草むしりや大掃除、改修工事を進めていきました。
「『あんなボロ家を図書館にするなんて、ムリでしょ』と言っていた島の人たちも、だんだん興味を持ってくれるようになったんです」という順子さん。本の魅力を島民にPRするために始めたのが「移動図書館」です。「オンバ」と呼ばれる手製の台車に、順子さんが選んだ本を80冊ほど載せ、島の集会所などを巡回していきます。
「『何か面白い本ない?』とか、『今度こんな本持ってきて』とか、だんだんリクエストも来たりして、嬉しいですね」
はじめ「漁師に活字はいらんわ!」と言っていた年配の男性が、ヘミングウェイの『老人と海』を読むようになったり、本屋さんが一軒もない島に、だんだん読書習慣が根付いていったのです。
一方、古民家も、1年がかりで改装が終了。2016年2月、ついに念願の「男木島図書館」がオープンしました。9月に島を襲った台風の影響で、もともと傷んでいた屋根から雨漏りが発生。大切な本が50冊ほど水浸しになってしまうアクシデントもありましたが、修繕費用を賄うために全国から300人以上が、総額200万円以上の寄付を寄せてくれました。本を寄付してくれる人も多く、蔵書は5千冊以上に増加。改めて、本好きの人たちの温かさに心打たれた順子さん。
オープンから2年が経過した今、男木島図書館には、宿題を片付けにくる子供たちや、仲間と茶飲み話をしにやって来るご老人たち、仕事が終わってから読みたい本を探しに来る若い人など、様々な人が訪れ、島民同士の貴重なふれあいの場になっています。順子さんに、これから男木島図書館をどう発展させていきたいか、目標を聞いてみると…
「蔵書は増やしたいですが、図書館を大きくすることよりも、続けることですね。自分たちに無理のない形で、まず10年は続けたい。図書館は、ただ本を読む場所ではなく、人と本、人と人とをつないで、島の文化を継承していく場所ですから」
【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2018年3月24日(土) より
番組情報
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