世界の“SOROBAN”へ活路を開く「トモエ算盤」社長のストーリー

By -  公開:  更新:

番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

きょうは、父親が創業したそろばん会社を受け継ぎ、デジタルの時代を生き抜くために新たな活路を切り拓いた女性社長のグッとストーリーです。

世界の“SOROBAN”へ活路を開く「トモエ算盤」社長のストーリー

「トモエ算盤」会社の外観(左)と内装(右)のようす

日本が誇る計算器具「そろばん」。中国から伝わったものは、上の珠が2つ、下の珠が5つでしたが、昭和13年に現在の「上の珠が1つ、下の珠が4つ」という形に改良され、これが世界中で普及。現在、ローマ字で「SOROBAN」と言えば、日本式のそろばんを指すようになりました。

日本のそろばんメーカーのなかでも、昔から世間に知られているのが「トモエ算盤(そろばん)」。大正時代の1920年に創業され、来年、ちょうど100周年を迎えます。
創業者のお父さんから34年前に会社を受け継いだのが、二代目社長・藤本トモエさん・64歳。

世界の“SOROBAN”へ活路を開く「トモエ算盤」社長のストーリー

「トモエ算盤」二代目社長の 藤本トモエ さん

「私は、父が56歳のときに生まれたんですが、父は本当に元気な人で、その背中を見て育ちました」と言うトモエさん。名前はカタカナで「トモエ」と書き、社名とまったく同じです。

父親の勇治さんは兵庫県出身で、赤穂浪士の『でんでん太鼓』でも有名な三つ巴のマークを付けた「トモエ印のそろばん」を売り出しました。その愛称が定着したことから、1953年に社名を現在の「トモエ算盤」に変更。翌年生まれたトモエさんにも、会社と同じ名前を付けたのです。

「小さい頃は『そろばんのトモエちゃん』と呼ばれるのがすごく嫌でした」と言うトモエさん。一人娘でしたが、お父さんから「将来会社を継ぐように」とは言われず、大学は法学部に進学しました。

世界の“SOROBAN”へ活路を開く「トモエ算盤」社長のストーリー

取り扱っているそろばん スタンダード・高級なもの(左上・右上)から児童用・教授用(左下・右下)まで様々

ゼミの一環で訪れた少年院で、少年たちがボロボロのそろばんを使って計算を学んでいるのを見て、改めてそろばんの重要性を知ったトモエさん。家に帰って「お父さん、新しいそろばんを少年院に送ってあげて」と頼みました。大学卒業後は、教えることが好きだったので、教師の資格を取って英語の先生になりましたが、赴任先は商業高校で、そろばんは必修でした。

「そろばんに関係ない道を選んでいるのに、なぜか行く先々でそろばんに出逢うんですよ。きっと、そういう運命なんですね(笑)」と言うトモエさん。

27歳のときに商社マンと結婚し、英語教師を続けながら幸せな夫婦生活を送っていましたが、ある日、ご主人が出張先の韓国で急に亡くなってしまいます。大きなショックを受け、教師も辞めてふさぎ込むトモエさんに、「悲しんでばかりいないで、違う環境で働いてみたらどうだ?」と、父・勇治さんはトモエ算盤への入社を勧めてくれました。

世界の“SOROBAN”へ活路を開く「トモエ算盤」社長のストーリー

チュニジアで行ったそろばん指導のようす

その親心に感謝し、父と一緒に取引先を回ったトモエさん。ところが入社から11ヵ月後、今度は勇治さんが亡くなり、85年、トモエさんが会社を継ぐことに。

わずか1年足らずの間に最愛の夫と父を亡くし、いきなり社長に就任……。ちょうどこの頃、電卓の普及でそろばんの売れ行きが急速に減り、先が見えないなかでの船出になりました。

そろばんの価値について、改めて考え直したトモエさん。新たに経営方針として打ち出したのは、そろばんを「計算器」ではなく「論理的思考を養うための道具」としてアピールすることでした。

世界の“SOROBAN”へ活路を開く「トモエ算盤」社長のストーリー

モロッコでのそろばん指導

「数」という抽象的な概念を、そろばんの珠で表すことで、パッと一目で理解することができる日本のそろばん。繰り上がりの動きなど、珠を自分で動かすことで、計算の結果だけではなくその過程を自然と学ぶことができ、暗算も速くなります。これは電卓にはない長所です。

全国各地にそろばん教室を展開し、そろばん人口の拡大に努める一方、まだインターネットがそれほど普及していなかった96年に、いち早く会社のホームページを設置。すると、そろばんの良さを知った外国の人たちから、注文が続々と届くようになりました。

「使い方を教えてほしい」と言われたら、韓国、ロシア、モロッコ……世界中のどこにでも飛んで行き、社長自ら指導を行っているトモエさん。最近は認知症対策として、老人ホームへの普及活動も行っています。トモエさんは言います。

「父が会社のマークを三つ巴にしたのは、そろばんを通じて、会社と社会とお客さんがともに繁栄するように、という意味もあるんです。デジタルの時代だからこそ、使う人たちに直接向き合って、そろばんの良さをアピールしていきたいですね」

世界の“SOROBAN”へ活路を開く「トモエ算盤」社長のストーリー

『トモエ算盤』の職人技や指導の様子は、YouTubeなどでもご覧いただけます

■そろばん職人の珠すくいの技

https://www.youtube.com/watch?v=Ukda-6qt4ro


■『ターボそろばん』を使った英語による指導

https://www.youtube.com/watch?v=pLyGf_ocJyc

世界の“SOROBAN”へ活路を開く「トモエ算盤」社長のストーリー

そろばん珠の動きをイメージしやすい「ターボそろばん」

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50

八木亜希子 LOVE & MELODY

番組情報

LOVE & MELODY

毎週土曜日 8:30~10:50

番組HP

あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
今、聴きたい曲を書いて送ってくださいね。

Page top