伊藤健太郎 映画『グリーンブック』から感じる希望とは?

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ひろたみゆ紀アナウンサーが、映画『グリーンブック』の記者会見を取材した模様を紹介する。

伊藤健太郎 映画『グリーンブック』から感じる希望とは?

今年のアカデミー賞では作品賞をはじめ3部門に輝いた話題の映画『グリーンブック』。もうご覧になりましたか?日曜朝5時からの「ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町」でもご紹介しましたが、今年一!と言いたいほどの本当に素晴らしい作品です。日本では3月1日に公開され、4日間で28万人を動員、興行収入は3.4億円と、大ヒットの兆しを見せています。そのピーター・ファレリー監督の初来日緊急記者会見があるというので、ワクワクして行って来ました。

伊藤健太郎 映画『グリーンブック』から感じる希望とは?

「アリガァト!」と言いながら明るく会見場に現れた長身でロマンスグレーのダンディーな監督。初来日の感想を聞かれると「昨日食べたステーキが人生最高!」といきなり会場を沸かせてくれました。アカデミー賞受賞については「やっと実感が湧いてきたところ。まさか自分の生涯でアカデミー賞を取るなんて!」

その作品とは…人種差別が残る1960年代のアメリカ。天才黒人ピアニストがガサツな白人ドライバー兼用心棒と二人で、特に差別が酷い南部に演奏旅行に出かけます。旅のお供は黒人用旅行ガイドブック「グリーンブック」。住む世界が違う二人は事あるごとに衝突。しかしだんだん二人の間の壁は崩れていくのです。そんな時、大事件が!二人は無事演奏旅行を終えて、ニューヨークに戻ることができるのでしょうか?

とても優しい眼差しに溢れた素敵な作品です。ピーター・ファレリー監督は「これまでコメディを手がけてきましたが、いつかはこういう違うタイプの作品を作りたいと思っていました。そして本当に偶然ストーリーを耳にした時、絶対作らなければと感じたんです。とても柔らかく優しさに溢れた物語でありながら、恐ろしいまでの人種差別というテーマが盛り込まれています。今日の世界の問題に共通し、何か響くものがあるとても重要な物語であると思って映画化しました」と力強く語りました。

また、この作品がなぜ多くの人々の琴線に触れたのかについては「希望があるからだと自負しています。主人公の二人は真逆ですが、話をすることで共通点を見出すことができました。この話は実話ですが、二人は生涯の友になります。非常に希望がある部分が皆さんに響いたのだと思います」と分析。

さらに「私はカルマを信じています」という発言も飛び出しました。「三人で執筆した脚本ですが、そのうちの一人ブライアンさんは、仕事を休んで7年間も認知症の母親の介護をして見送りました。そして戻って来た時、この映画の企画に出会ったのです。彼が母親に尽くした“徳”のおかげでこの美しい作品が生まれました。私はそのお裾分けを頂いたと思っています」と監督のお人柄もわかるエピソードを披露してくれました。

伊藤健太郎 映画『グリーンブック』から感じる希望とは?
そして会見の後半戦、なんと、この作品が大好きという俳優の伊藤健太郎さんが登場!
アカデミー賞の作品賞と助演男優賞は絶対『グリーンブック』だと予想もしていたそうで「今日はメチャクチャ嬉しいです!」と満面の笑顔でした。

車好きの伊藤さんが「作品の中の車は色々候補があったのでしょうか?」と質問すると監督は「実際に二人が乗っていたキャデラック。モデル、型も同じだったのですが、色は黒でした。この映画はモノクロタッチの色彩設計をしたので、色が欲しかった。だからグリーンにしたのです」と真相を話してくれました。

さらに監督からは「あっという間にスーパースターになったんですよね?どんな気持ちですか?私が伊藤さんの歳にはナイトクラブのアルバイトでした。日本アカデミー賞で新人賞も受賞されましたよね?」と逆質問が!伊藤さんは、タジタジで照れ笑いをしながらも「自分でもびっくりしています。まだ追いついていないですね」そして「ハリウッドはいつか行ってみたいです。海外で活躍するには俳優として何が必要ですか?」と質問。「伊藤さんはどこにいても素晴らしいお仕事をするタイプだと思いますが、まずは行ってしまうことが必要なのかもしれません。そして、いつか私と仕事をして下さい!」と監督からオファー。これには伊藤さんも瞳を輝かせながら「嬉しい!是非是非!僕も頑張ります!」と意気込んでいました。

伊藤健太郎 映画『グリーンブック』から感じる希望とは?

また、伊藤さんの印象を聞かれた監督が「ムービースター、映画スターらしさをすごく感じます」と答えると「え~?そうですか?(笑)でも嬉しいです。いつかハリウッドに行った時は、“あの時のこと(一緒に仕事をしようと言ったこと)、忘れてませんよね?”って言いますよ~」と会場を爆笑の渦に巻き込みました。

大ヒット祈願の鏡開きの後、最後にメッセージを頼まれた二人。伊藤さんは「いろんな意見がありますが、難しく考えずシンプルに観て欲しい良い映画です。一人でも多くの人に観て頂きたいです」とアピール。ピーター・ファレリー監督は「観客の皆さんに希望を感じて欲しいと思っています。世界は厳しい時代になっていて、私の住むアメリカでも人種問題がありますが、いつだって希望はあると信じていますし、お互いに話すことさえできれば希望は生まれるのだと考えています。話すことから始めなければどこにも行くことはできません。それがこの作品のメッセージの一つです」と熱い想いで締めてくれました。

アメリカと日本のアカデミー賞受賞者同士の出会いは、和やかで楽しく、そして希望が持てるような体験をさせてくれました。

ところで、映画のタイトルの「グリーンブック」ですが、ホテルやレストランなど“黒人が利用できる施設”を紹介したガイドブックで、逆にいうと、黒人はここに書かれた施設以外は利用できなかったのです。ヴィクター・ヒューゴ・グリーンさんが、1938年~66年まで毎年出版していました。この物語は、人種差別が激しかった時代の闘いの…いえ、ただの闘いではありません。とっても素敵な人間の魂の物語なのです。全く違う世界に住む二人が、旅を通してだんだんお互いを理解し合い、最後には生涯の相棒になる!ラストシーンは涙なしには見られませんでした。監督が仰っているように、本当に希望に溢れた映画なのです。

笑って泣いて怒って…見ている間ずっと心が忙しく、感動に震えます。こんな世の中だからこそ是非ご覧になって、この感動を分かち合いませんか?

 

『グリーンブック』
2019年3月1日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー
(C) 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.
配給:ギャガ 提供:ギャガ、カルチュア・パブリッシャーズ
スタッフ・キャスト
監督:ピーター・ファレリー『愛しのローズマリー』『メリーに首ったけ』
出演:ヴィゴ・モーテンセン『イースタン・プロミス』、
マハーシャラ・アリ『ムーンライト』
作品情報:原題:GREEN BOOK/2018年/アメリカ/130分
公式サイト:Gaga.ne.jp/greenbook

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