安倍総理の欧米6ヵ国歴訪　WTOの見直しから戦後体制のリフォーム

By - NEWS ONLINE 編集部　公開：2019-04-30 　更新：2019-04-30

ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』(4月30日放送)にジャーナリストの有本香が出演。安倍総理の各国訪問に際する解説をした。

日カナダ首脳会談　会談する安倍首相（左）とカナダのトルドー首相＝２８日、オタワ（共同）

安倍総理、欧米6ヵ国の歴訪から帰国

欧米6ヵ国を歴訪していた安倍総理大臣は全日程を終え、日本時間昨日（4月29日）午後6時過ぎ、政府専用機で羽田空港に到着した。最後の訪問国となったカナダでは、トルドー首相と会談し、Ｇ20大阪サミットの成功やWTO世界貿易機関の改革に向け、緊密に協力していくことで一致した。
飯田)今回はフランス・イタリア・スロバキア・ベルギー、そしてアメリカ・カナダと6ヵ国訪問ということで。トランプさんと会ったのがハイライトという感じになるんですかね。

有本)それにしても、総理もかなり忙しい日程です。最後、アメリカに行くというのも驚きました。ここでもいくつか重要なことをいくつも話し合われていて、特に私たち今後も含めて印象に残りそうなことは、WTOの見直し、紛争処理の見直しに対するあり方に言及したことです。

かなり色々な国から賛同を得られているじゃないですか。アメリカ、カナダを始めとして。このWTOが今後WTOの本来の趣旨、公正で自由な貿易をより進めていくという趣旨に叶ったかたちの組織にするためにどうしたらいいかということは常に見直しが必要ですよね。

今回の訪問のなかでの話題ではありませんが、NPT体制も見直さないといけないとか、あるいは国連改革とかですね、やはりいろんな国際的枠組みそのものがそろそろちょっと見直さないといけない。特にアメリカのトランプ大統領はかなり激しくストレートに、脱退してもいいんだという発言もされていますよね。このあたり実はいちばん芯を食った発言かなという気がしますね。

いまの枠組みだったら、果たしてそこにいる意味はどこにあるのか多くの国が感じるようになる、日本のように影響力の強い国はそこも含めて考え直す必要があると思います。いろんな意味での戦後体制のリフォームというのが世界的にも必要になってきているということだと思います。

飯田)いろんなところで戦後70年以上たって軋みが出てきた部分をなんとかしなきゃいけないと、トランプさんがよく言っていますけど、この仕組みをただ乗りしている国が多いんじゃないかと。

有本)つき詰めてしまえばそこなんですよね。これはトランプさんはEUに対してもあるいはNATOの問題なんかでも同じようなことをつきつけていますよね。

トランプ大統領独特の激しい物言いというものに皆驚かされるけれども、実は色々な意味で正鵠を射たことを、トランプ大統領の時代になって新たにいろいろ世界に提言されているなと感じます。

その一方で今回の各国歴訪の中で旧東欧諸国、そこの首脳とも随分総理は会談をしていたというのが、これは結構印象に残ることで、今後ヨーロッパとの関係というのは、EPAもなっていますし、そういうのでヨーロッパと日本との関係というのはより一層緊密になっていくんだろうという風に思われます。
日米貿易交渉でアメリカが強気に出られない理由

有本)もう一方では気になるのは日米の貿易交渉ですね。いま並行して茂木大臣とライトハイザーさんとの間でやっていますが、これがどうなるのか。やっぱりトランプ大統領の胸先三寸ひとつみたいなところもアメリカはありますからね今回トランプ大統領の発言を総理が慌てて訂正するというような場面もありましたけれどね。トランプ大統領と安倍総理の関係というのはかなり深まってはいるので、そのあたりで色々と調整しながら、両方の国でメリットが大きくなるような形っていうのを模索して欲しいと思いますよね。

飯田)日本としてはTPPというもので、あの時はそこそこ妥協した部分もあった、それに対して国論も、かなり割れました。なんとか調印にこぎつけただけにそのライン以上譲るというのは難しいですよね。

有本)ただアメリカは特に政治的な圧力を持っている農業関係の団体です。こういうところの声もちょっと割れているようですね。要するに、とにかく日本に対してもっと要求しろと言っている人もいれば、TPPのラインあたりで折り合えればいんじゃないかというところもあるんですね。

なぜかというと、あんまりアメリカが強気なことばかり言ってしまうと、逆に日本の顧客逃してしまうという危機感があるわけですよ。ここ数年でも豚肉だとか他のものも相当他へ流れてしまいましたからね。かつてもっぱらアメリカから入れていたものがそうではなくなってしまった。これは大きくて、今回の交渉でもここ数年のいろんな動きっていうのをあちらも見ながら、こちらもそういう点でいろいろおすところは押しながらという形で着地させたいというところだと思いますよね。