日米貿易交渉 農作物の関税・遺伝子組み換え・TPPと複雑な事情

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ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』(4月29日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。日米貿易交渉について解説した。

日米貿易交渉 農作物の関税・遺伝子組み換え・TPPと複雑な事情

笑顔で会談するトランプ米大統領(右)と安倍首相=2018年9月26日、米ニューヨーク(共同) 写真提供:共同通信社

 

日米貿易交渉、トランプ氏5月下旬の合意を求める

先週末、安倍総理とアメリカのトランプ大統領がホワイトハウスで会談し、トランプ大統領は貿易交渉で次回の来日の5月末までに合意したいと成果を急ぐ考えを鮮明にしました。安倍総理は農業や自動車など貿易交渉について、7月の参院選までは無理だが大統領選のことは考えていると非公開の会談でトランプ氏をとりなしたということです。

飯田)今回の会談で何らかの合意が欲しいということを、事前の茂木さんとライトハイザーさんの会談のなかでももちかけていた、というような報道がありました。

須田)もちろんトランプさんとしては、ここでなんらかの成果を出して、アメリカの国民のもとに、特にトランプさんの支持層のある内陸部の、仕事がないとか、あるいは低賃金であるといった人に仕事を、あるいは賃金をもたらすような具体的な成果というのが必要だったんではないかなと思いますよね。

そういった点でいうと、日本の自動車産業が、工場を作って、沢山雇用をして、それによって経済的にプラス効果を呼ぶというところを約束して欲しかったんだろうと、トランプさんとしては思いますよね。

その一方で、その話は枝葉です。大きな枠組みでみるとアメリカのなかで最大の対日貿易のなかで、問題になっているのは対日貿易赤字なんです。膨大なね、これを具体的にどうやって減らしていくことができるのかと。それについても、合わせて要求していたんだと思いますね。

飯田)これ会談冒頭のところでトランプさんが農業について非常に言及していて、関税を下げてくれと、どんどん輸出をしたいんだと。アメリカは日本に対して関税をかけていないのに、と言ったところ、安倍総理が即座に「アメリカさん、2.5パーセントの関税かけていますよね」って言ったという、そのあたりからバトルは始まっている感じもありましたけどね。

大統領選にとって中西部の穀倉地帯は重要

須田)アメリカにとって大統領選を強く意識するならば、中西部という地域とかね、ああいう穀倉地帯ですよ。穀倉地帯の票というのは全く無視できないんですね。そういう有権者に納得してもらうためにはアメリカからもっともっと買えと、農作物を買えというのも1つの大きな柱何だろうなあと思いますよね。

ただですね、アメリカがもっと農作物を買えと言っても、そんなにたくさんの種類のものを作っているわけではないんですね。大豆、小麦、トウモロコシ、菜種、大麦なんですよ。この場合のトウモロコシとは、デントコーンといってですね、畜産物に食べさせる飼料用の穀物なんですね。

そういった点でいうと、いちばん大きな問題というのは、日本国内のキャパを超えて輸入することはできないということはありますが、遺伝子組み換え作物が重要な問題です。

もっとも、トウモロコシについては、遺伝子は残らない状態になります。家畜がそれを食べて肉になったら残らないから、ここはいいんだろうと思うんですよ。ただ問題なのが、小麦とか大豆とか、そういった製品なんですね。ところが日本の場合、アメリカもそうなんですけど、これは遺伝子組み換え作物を使っていませんという表示義務がああります。そうすると、なかなか消費者の方がこれを受けられない、だから買えない、というような体裁をとっていますが、それに対しておかしいだろうというのがアメリカの主張ですよ。そういったところで、もっと入っていけるような、そういう仕組みを作れというところが本音としてあるんだろうなと思いますね。

飯田)いわゆるそういうのは関税の上げ下げで輸入量を規制しているのではなくて、非関税障壁というやつの一環。

須田)そうですね。だからアメリカの農作物が日本のマーケットに入っていけない、そういう仕組みを日本はとっているじゃないか。

飯田)向こうからするとそういう主張になる。

須田)これは不平等であると、そういう考え、発想なんですよ。

アメリアのTPP戦略の失敗

飯田)非関税障壁の話は別途協議することになると思うのですが、TPPやっているときの方が関税は低く抑えられたじゃないですか。これなんで抜けちゃったの、という話になってきますよね、こちらとしては。

須田)これは明らかにアメリカの戦略上のミスなんだと思うんですよ。トランプ政権になってからは、もともとこのTPPというのはアメリカ政府が主導する形で、旗振り役をする形で進められてきた貿易政策ですよね。

ところがトランプ政権になってアメリカがいのいちばんに抜けてしまった。何故なのかって考えてみますとね、これはオバマさんがやっていたことだからと。当初、トランプさんがなんて言っていたかといいますと、TPPは中国の陰謀だと。いやいや、中国入っていないんです。つまり、TPPに対してほとんど理解していなかったんですよ。だから、つまり前政権がやっていたことはすべて否定だというところで入ってきましたからね。とは言っても、いまさらTPPに復帰というところもなかなか馴染まないんだろうと思う。

ですから、日本との間で新たな貿易協定を結んで、事実上そこにTPPをドッキングさせるという方向で進んでいるわけですよ。そういった点でいうとね、アメリカの貿易戦略というのは、政権交代によって非常にまずいというか、接続しない状況になってしまったのかなと思いますけどね。

飯田)揺らいじゃったと。これ、TPPの水準、本当にTPPと同じ水準であれば日本としては反対する理由はないというか、あそこまでは譲っちゃったもんなというところはあるわけですよね。その線だとアメリカの方が納得しないということですか。

須田)加えてですね、貿易摩擦というか、貿易上の対立が起こった時にどう解消する仕組みをシステムをとっていくのか。その仕組み作りをもう1回ゼロからやらなけれないけないというところも問題としてあるでしょうね。

飯田)そういう実務で汗をかく人が少ないということですか。

須田)ですからトランプ政権の場合はですね、もうほとんどいません。実務をやっている人が。

飯田)いないんですか。

須田)はい。どんどん首を切っていったり、あるいは辞表を出していった経緯から言ってですね、実務を知っている専門家がほとんどいなくなっちゃったんですよ。だから積み上げて、最終的にトップ交渉で合意するという仕組みがとれない。だからトップダウンで全部やっていかなければならない。こう決めたんだからこうやれというね。

飯田)トップ同士で細かいところまでは詰め切れないですものね。

須田)お互いそこまで細かく理解しているかは疑問ですけどね。

 

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