DeNA・ロペス 夢は「東京オリンピックを生で観ること」

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、5月16日に「一塁手の連続守備機会無失策」のNPB記録を更新したDeNA ホセ・ロペス選手のエピソードを取り上げる。

DeNA・ロペス 夢は「東京オリンピックを生で観ること」

7回、一塁手として連続守備機会無失策のプロ野球記録を更新したDeNAのホセ・ロペス内野手=2019年5月16日、横浜スタジアム 写真提供:時事通信

「記録は知らなかった。すごくうれしい。足を動かして、どんな球でも取れるようにしている。でもいつかはエラーする(笑)」

5月16日、横浜スタジアムで行われたDeNA-中日戦で、偉大な新記録が達成されました。7回2死一塁の場面で、ファーストのロペスが、中日・ロメロのセカンドゴロを処理した瞬間、一塁手の連続守備機会無失策、つまりエラーなしの連続記録を「1517」まで伸ばしたのです。

従来の記録は、東京オリオンズ(現在の千葉ロッテマリーンズの前身)の伝説の名選手・榎本喜八が作った「1516」でしたが、これを51年ぶりに更新しました。

イニング終了後、「1517」と書かれた大きな看板を手渡され、場内から拍手を浴びたロペス。打った瞬間、場内から祝福される打撃の記録と違って、守備の記録は地味ですが、半世紀以上も誰も抜けなかったことでも分かるように、この記録、実は大変な偉業なのです。

内野ゴロの送球を受けてアウトにするのは一塁手の仕事ですが、1試合中、何度も守備機会がある上に、ときにはとんでもなく高い送球や、ワンバウンドの送球なども処理しなければなりません。

加えて、ピッチャーからの牽制球や、左打者の放つ鋭いライナーも飛んで来ますし、一塁線を襲うライン際の打球に素早く反応したり、一・二塁間の挟殺プレーや、6-4-3、3-2-3のゲッツーなど、とにかく一塁手はボールに触れる機会が多いのです。

決して楽なポジションではありませんし、一塁手がエラーばかりしていたら、大量失点につながってしまいます。実は、いちばん守備力を問われるのがファーストなのです。

ベネズエラ出身、メジャー通算9年間で5球団を渡り歩いたロペスが来日したのは、2013年のことでした。メジャーでは主にセカンドやサードを守っていましたが、最初にプレーした巨人ではファーストを担当。安定した守備力でゴールデングラブ賞を受賞。打っても打率3割をマークし、リーグ優勝に貢献しました。

実はいま、ロペスが使っているファーストミットは、来日1年目から愛用しているもので、巨人時代にチームメイトから譲り受けたものなのです。元の持ち主は、現在巨人のファームでコーチを務める古城茂幸氏です。

古城氏は著書(「プロ野球生活16年間で一度もレギュラーになれなかった男がジャイアンツで胴上げしてもらえた話」)のなかで、こんなエピソードを記しています。

ロペスがゴールデングラブを獲ったあと、「やったね!」と祝福した古城氏に、ロペスは、

「『使いやすくて助かりました。古城さんのおかげで賞が獲れました』。そう言って、お礼にネックレスと高級時計をプレゼントしてくれた」

ロペスの律儀な一面が窺えるエピソードです。しかし、来日2年目は阿部慎之助の一塁コンバートなど、チーム事情からスタメンでの出場機会が減り、オフに自由契約に。そこへ「ぜひウチに」と声を掛けたのが、巨人OB・高田繁氏がGMを務め、中畑清監督が率いるDeNAでした。

打っては3番・5番を打ち、若き4番・筒香を支え、守っては鉄壁の一塁守備を披露。同じベネズエラ出身のラミレス監督が就任した16年は、チームを球団史上初のCS(クライマックスシリーズ)進出に導き、17年はCSでMVPに。3位から日本シリーズ進出の立役者になりました。

愛すべきキャラクターでチームメイトから慕われ、「チャモ」の愛称でファンにも親しまれているロペス。スペイン語で「少年」という意味ですが、35歳になったいまも、野球に対して純粋な心を失っていません。

練習では常に、セカンドやサードなど、他のポジションでもノックを受けているロペス。連続無失策記録は、こういった不断の努力もあってこそなのです。

「横浜の街も、横浜スタジアムも大好き。ここで野球をするのは楽しいよ」

とよく口にするロペスの夢は「東京オリンピックを生で観ること」。横浜スタジアムは、東京オリンピックの会場でもあるのです。それまで日本で野球を続け、日本でキャリアを終えるのが「チャモ」の願いです。

「(記録達成は)試合に勝てばもっと喜べたけどね。負けたことがすごく残念」

常に「フォア・ザ・チーム」の精神を忘れないロペス。その姿勢は、若手たちのよき手本となっているのです。

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