黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」（ニッポン放送）に漫画家のけらえいこが出演。漫画家の日常について語った。

ニッポン放送「あさナビ」

黒木）今週のゲストは漫画『あたしンち』の作者で、漫画家のけらえいこさんです。けらさんは本名ですか？

けら）本名は「螻川内（けらかわうち）」という姓です。大分県の耶馬渓という、紅葉で有名なところです。

黒木）耶馬渓には同じ姓の方がたくさんいらっしゃるのですか？

けら）それほどでもないのですが、いますね。九州は変な名前が多いのですけれど、その1つです。

黒木）それでわかりやすく「けら」と。

けら）頭だけとって。螻川内だと長いので、みんなから「けらさん」「けらちゃん」と言われていたため、そのままですね。

黒木）パジャマで仕事をしていらっしゃるということですが。

けら）そうなのですよ。漫画家さんにはいろいろなタイプがいて、女性の漫画家さんはフルメイクでするというプロダクションがあるとも聞いたのですが、いちばんイメージしやすいのは浪人生ですね。受験生や浪人生はずっと机について勉強しなくてはならないから、半纏を着て、はちまきで机についているイメージだと思うのですが、あれが何十年も続いているのが漫画家なのですよ。ずっと受験なのです。

黒木）ずっと受験。

けら）週刊連載をしているので、週刊で受験しているような感覚ですね。家の雰囲気としては。

黒木）パジャマで寝て、ひらめいたら起きて描いて。

けら）いまはパソコンで仕事をしなくてはいけないので、メールもたくさん来ますし、パソコンをやっていると3時間くらい経ってしまいます。その後は執筆があったり、思いついたことをそのままにはできないから整理したり、ある程度は本や漫画を読んでテレビも観なくてはいけないし、ご飯もつくらなければいけない。掃除もしなければいけない、買い物もしなくてはいけない。それでも机でもぞもぞとしている時間が、10時間くらいあるのではないでしょうか。

黒木）浪人生ですね。

けら）浪人生なのです。だから、あまり服を着替えることにだんだん意味を見出せなくなって来て、パジャマでいることが多いのですよ。そんな人は少ないと思うのですけれど。

黒木）パジャマが勝負服みたいなものですね。だからパジャマをたくさん持っていらっしゃるのですか？

けら）そうなのです。仕事服なので、見栄えよりも着心地のいいものを選んでいます。

黒木）仕事がはかどるパジャマとか、いろいろあるのでしょうね。

けら）ジャージをパジャマにしています。

黒木）いかにも、というパジャマではないのですね。スウェットのような。普通に花柄のパジャマなどを着ていらっしゃるのかと思っていました。

けら）パジャマ売り場で「何で花柄しかないのかな」と思って、怒りながらパジャマを選んでいます。

黒木）『あたしンち』の誕生はどんな感じだったのですか？

けら）私がいちばん面白いと思うのは、人間を描くことなのですよ。人間が描きたいと思っていて、人間が生活することがまず面白い。家族をモデルにすると描きやすいというのがまずあって、でも描いている内容は人間を描くと言いながら「何で花柄のパジャマしかないのかしら」と思ったり、日々思うことが私にとっていちばん面白いのです。私や私と違うタイプの人が、こういう場面でどう思うのかを想像するのが好きなのですね。そして、こんな漫画になってしまったという感じです。編集さんからはよく「あるある」と言われるのですが、ファンの人は「ないない」と言ったりもするのですよ。どっちもあって、その幅を描くのが楽しいですよね。

ニッポン放送「あさナビ」

けらえいこ／漫画家

■1962年、東京生まれ。
■東京都立井草高校卒業。早稲田大学第二文学部卒業。高校・大学ともに漫研所属。
■1987年、4コマまんが『3色みかん』（ヤングサンデー）で漫画家デビュー。　早稲田大学漫画研究会の先輩であった上田信治さんと結婚。
■1991年、本人の結婚生活を書き下ろした漫画『セキララ結婚生活』がベストセラー。また『たたかうお嫁さま』も刊行。のちに連続ドラマとして放映された。
■1994年6月、高校時代の自らの家族をモデルに日常生活をつづった『あたしンち』を読売新聞日曜版で連載開始。人気作品となりアニメ化・映画化もされた。※アニメは2002～2009年。また2015～2016年まで放送された。
■1996年、『あたしンち』が第42回文春漫画賞を受賞。
■2010年、単行本『あたしンち』が累計1000万部を突破。翻訳出版されるなど、海外でも人気になっている。
■2012年、『あたしンち』の足かけ18年の連載を終了。
■2019年12月、雑誌「AERA」にて『あたしンち』の連載を再開。
■その他、数々の作品を発表。埼玉西武ライオンズのファンとしても知られる。