黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に脳科学・AI研究者の黒川伊保子が出演。男性脳と女性脳の違いについて語った。
黒木)今週のゲストは人工知能研究者で感性アナリストの黒川伊保子さんです。黒川さんの著書『夫のトリセツ』から、夫婦円満のための夫の扱い方を伺いたいと思います。
黒川)このトリセツは、実は私が人工知能に人間の取扱説明を教えているのです。共感してもらいたい人にいきなり問題解決をするなとか、問題解決を急いでいる人に無駄な共感はするなとか。そういうことを人工知能に対して、「人間のトリセツ」という形で私は設計して行くわけですけれども、それを生身の人間にお裾分けしたのがこの本なのです。『夫のトリセツ』というと、「夫の取扱説明書って乱暴な言い方ね」と思われるかも知れませんが、とりあえず脳は電気回路なので、「夫の脳」という電気回路をどんなふうに扱えば夫のために、自分のためになるかというものです。『妻のトリセツ』も同じ観点で書かれています。「ついで家事」って、おわかりになりますか?
黒木)「ついでに家事をする」ということですか?
黒川)家事は洗濯や掃除など、名がついているものはシェアしやすい。ところがシェアしにくい家事があります。私は「ついで家事」と呼んでいるのですが、例えばテレビを観ていて、CMが入りました。この間にトイレに行こうかなというとき、だいたい主婦をやっている女性は、行って帰って来るだけということはないですよね。ビールのコップを片付けて、洗濯物を取って来て畳んで、などと。
黒木)必ず何か入れます。どうせ動くなら。
黒川)どうせ動くならあの傘も畳んでおこう、あれもしておこうとバタバタ動いて、5つか6つの家事を片付けて、主婦はCMの間にテレビの前に戻るのに、なぜ夫はただトイレに行って帰るのか、あれが絶望的です。それを男性脳がするのはものすごく大変です。
黒木)それは、この本を読んで理解しました。知らなかった。
黒川)知らなかったですよね、私だって知らなかった。研究をした過程のなかで、男性の脳が「ゴール思考型」と言って、元来、狩りをしながら進化して来たため、遠くの目標を決めたら、目の前のあれやこれやが見えないように脳がフィルタリングする。「あのウサギを狩ろう」と思ったのに、目の前にバラや苺があることに気づいたら、もう狩りができません。見えないようにして遠くの目標に一所懸命になれるからこそ、できることもたくさんあるので、ここは許してあげるしかない。でも脳は工業生産品ではないので、女性脳型で生まれて、奥さんが出しっぱなしにしたものを片付けてくれるご主人も世の中にはいます。
黒木)それは羨ましいですね。
黒川)面白いことに、夫婦は真逆になる場合もあるのです。どちらかが異性型だと、その相手も異性型。この場合、奥さんの方は男性のようにまったく気が利かないので、うまく行くのです。夫婦はよくできているなと思います。
黒木)たまたまでしょうけれどね。
黒川)いえ、そうでもないのです。私たちの脳は、自分と免疫抗体の下等な遺伝子が遠く離れて、一致しない相手に恋をするようにつくられています。暑がりと寒がりが夫婦になれば、暑さに強い遺伝子と寒さに強い遺伝子を残せる。せっかちとおっとりが夫婦になればどちらの遺伝子も残せるので、遺伝子多様性の論理に則って、自分にない感情を持っている人に惚れるようになっている。どうしても真逆の相手になるのです。
黒木)合いすぎる場合のことも書いてありました。
黒川)それも合って、親友のようになれる夫婦もすごく幸せだと思います。うちの場合は真逆で、35年経ってもまだ新しい発見があります。「そう来たか」と思うし、だから飽きない。
黒木)脳を研究し尽くしていらっしゃるから、腹も立たないという感じでしょうか?
黒川)いや、立ちます。とっさには腹が立ちますけれども、長引かない。「そうか、あの脳だからね」と。
黒木)そう思ったらイラっとしませんね。
黒川)イラっとしません。あと、どうしてもやってもらいたいことはルールにします。
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)/人工知能研究者・感性アナリスト・エッセイスト
■1959年、長野県生まれ。栃木県育ち。
■1983年、奈良女子大学理学部物理学科を卒業。
■富士通ソーシアルサイエンスラボラトリで、14年にわたり人工知能の研究開発に従事。その後、コンサルタント会社勤務、民間の研究所を経て、2003年に株式会社感性リサーチを設立。代表取締役に就任。
■2004年、脳機能論とAIの集大成・語感分析法『サブリミナル・インプレッション導出法』を発表。サービス開始と同時に化粧品、自動車、食品業界などの新商品名分析を相次いで受注し、感性分析の第一人者となる。
■著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社+α新書)など。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳