40歳になった『ズッコケ三人組』のいま
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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、児童文学作家・那須正幹が出演。中年になった『ズッコケ三人組』について語った。
黒木)今週のゲストは『ズッコケ三人組』などで知られる、児童文学作家の那須正幹さんです。第54回JXTG児童文化賞の受賞、おめでとうございます。
那須)ありがとうございます。
黒木)いろいろな賞を受賞されたのを存じ上げていますが、いかがですか?
那須)僕はいま77歳ですが、51年間書いているからね。
黒木)半世紀。
那須)過去のそういう業績に対するお祝いだと思います。
黒木)嬉しいですよね。有名なズッコケ三人組は、どんどん大人になって行きますよね。何と全61巻描かれています。
那須)子ども版は50巻で、ズッコケ三人組はめでたく小学校を卒業して、1年後から中年三人組。40歳になった3人です。毎年歳を取らせて、11巻で50歳になった熟年ズッコケ三人組で、めでたく終了です。
黒木)歳を取らせて行こうと思ったのは、時代もありますか?
那須)それもありますし、三人組がどのように歳を取って行くかに興味がありました。いままでと同じずっと40歳では芸がないので、今度は成長小説にしようと思いました。
黒木)どういう職業にしようとか、例えばハカセ君でしたらご自分がモデルですよね。どうするか考えるときは楽しいのではないですか?
那須)ハカセは中学校の先生だからね。モーちゃんは自分の故郷のみどり市に帰り、そこでレンタルビデオ店のアルバイトをして、ハチベエはコンビニエンスストアのオーナーです。だんだん描いているうちに、読んでいる人が同世代ではないですか。身につまされたとか、励みになりますというファンレターをいただきました。
黒木)この61巻で終わりと思っていらっしゃいますか?
那須)はい。
黒木)そうですか、残念ですね。大ヒットしたということですが、最初に出された本『首なし地ぞうの宝』が30歳になる2ヵ月前に入選して、これがきっかけで児童文学作家になられたということでしたね。
那須)現代の宝探し、小学5年の3人組です。3人の少年が造成地で見つかったツボのなかに宝の暗号を見つけて、それを手がかりに宝を探すというものです。
黒木)どうやって思いついたのですか?
那須)宝探しの話は昔から好きで、小栗上野介の赤城山の埋蔵金などの話が子どものころから好きでした。いちばん得意です。
黒木)子どものころに興味があったものが、構想に役立ったということですね。
那須)そうですね、宝探しはエンターテインメントです。当時は宝探しというテーマは珍しかったです。
黒木)当時は斬新で新しかった?
那須)宝探しの話はスティーヴンソンの『宝島』なのですが、なぜか日本の児童文学ではそういう目線で書く人がいませんでした。
黒木)考えてみるとすごいことですよね、書く人がいないなかで書いたことは。
那須)人が書かないものを書くのが好きです。後追いはしたくないです。ズッコケ三人組も、人が書かないことばかりを書きました。あれで子どもが喜んだのではないでしょうか。
那須正幹(なす・まさもと)/児童文学作家
■1942年、広島市生まれ。
■島根農科大学林学科(現在の島根大学生物資源科学部)で森林昆虫学を専攻。
■卒業後、東京で自動車の営業マンとして働くも、2年ほどで辞め、広島の実家に帰省。実家の書道塾を手伝うかたわら、広島児童文学研究会に入ったのをきっかけに児童文学の創作を開始。
■1970年、『首なし地ぞうの宝』が第2回学研児童文学賞佳作に入選。1972年に学研から刊行され、作家デビュー。
■1978年からは『それいけズッコケ三人組』に始まる「ズッコケ三人組」シリーズを発表。その後、3人の40代を描いた「ズッコケ中年三人組」シリーズも執筆。全61巻は累計2500万部という大ベストセラーとなり、2015年に完結した。
■現在までに出版された単行本は220点以上。ノンフィクションからSF・ミステリー・ユーモア・時代物・冒険物・文芸物など、さまざまなジャンルで作品を発表された。
■2019年度JXTG児童文化賞を受賞。
◎「ズッコケ三人組」シリーズ(1978~2015年)
■全61巻、累計2500万部の大ヒット児童文学。
■元気いっぱいだけどおっちょこちょいの「ハチベエ」、物知りなのにテストは苦手な「ハカセ」、体が大きく動作がスローモーな「モーちゃん」の小学6年生3人組が、短所を補い合って、探検や事件解決に活躍する物語。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳