黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に脳科学・AI研究者の黒川伊保子が出演。男女の脳の違いから来る会話の行き違いについて語った。
黒木)今週のゲストは人工知能研究者で感性アナリストの黒川伊保子さんです。著書『妻のトリセツ』と『夫のトリセツ』は、いずれもベストセラーとなっています。『妻のトリセツ』のなかの「妻の言葉を翻訳すると」という章に、「あっち行って」という妻の言葉があります。
黒川)「あっち行って」は、「あなたのせいでめちゃめちゃ傷ついたの、ちゃんと謝って」という意味ですね。
黒木)「勝手にすれば」はまあ、よく言います。
黒川)「勝手にすれば」は、「勝手にしたら承知しないから」でしょう。
黒木)そうそう。「私の言うことをちゃんと聞いて」という感じで。
黒川)あるセミナーで、男性から「女性はなぜ5W1Hに答えないのですか?」という質問を受けました。5W1H、つまり「いつ」「どこで」「何を」などの質問に真っ直ぐ答えない。直球が返って来ないと言うのです。家に帰ったら、妻が見慣れない新しいスカートを履いていた。新しいのかなと思って確認しようと、いつ買ったのかを聞いたら、「安かったから」と答えたと言うのです。「いつ」と聞いたのに、なぜ安かったからと答えるのかと。旦那さんのほうは見慣れないな、いつ買ったの、と聞いたのだけれど、家計を預かっている側は「俺に黙っていつ買ったの?」と聞かれた気がするから、「安かったからよ」と答えたのです。でも男性はなぜ、まずスペック確認なのでしょう。新しいと思ったら「それいいね、似合うよ」と言えばいいではないですか。なぜ5W1Hなのか。実は男性のゴール指向問題解決型というのは、必ず質問が5W1Hなのです。昨今、会話の少ない夫婦は離婚率が高いと言われていますが、妻と会話をしなさいと言われた中高年男性が、「きょうは家に帰って久々に妻と話をするか」となったときに、何を言い出すかと思ったら「お前、きょう何をしていた?」と。昨日まで会話のなかった夫が「何をしていた?」って、どんなマウティングだと思ってしまいます。「どうしてそこから行くの?」と思うのだけれども、男性は5W1Hが浮かんで来る。男性としては、それに真っ直ぐ答えてもらえばいいのだけれど、気持ちで答えてしまう。「おかずはこれだけか」と言われたら、「それだけよ。足りなかったらふりかけもあるけれど」と言えばいいだけのことを、何となく「1日家にいて、これだけかよ」と言われたような気がしてムカつく。5W1Hの質問が男性はストレートなのに、女性はストレートではない。これを知っておかないと、夫婦の会話はとてもすれ違います。疑問に思うところがおかしいでしょう。
黒木)ときどき、突拍子もないことを答えているなという自覚はあります。でも、そこは逆質問してしまいます。
黒川)だから、こちらもときどきつっけんどんになる。先日、うちの夫が「君、明日の午前中は何してる?」と聞くから、午前中はいろいろなことをしているのに、なぜこの人に答えなければいけないのだろうと思って、面倒くさくなって「何をして欲しいかから言ってくれない?」と言い返したのです。そうしたら「宅急便を受け取ってくれないかな」と。最初から言えばいいではないですか、そうしたら答えがすぐ出るのに。なぜ「明日は何をしているの?」から始まるのか。質問の意図がずれますね、お互いに。
黒木)確かにありますね。でも脳の回路が違うんだ、と思えばいいのですよね。
黒川)そうです。そしてずれるのを「そう来るか」と思って楽しんでいただくと、長い夫婦生活が飽きないです。30歳で結婚したとして、人生100年時代ですから、夫婦生活は70年もある。圧倒的な時間を2人で飽きずに暮らすためには、ちょっとした会話のすれ違いを楽しんでしまえばいいのです。
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)/人工知能研究者・感性アナリスト・エッセイスト
■1959年、長野県生まれ。栃木県育ち。
■1983年、奈良女子大学理学部物理学科を卒業。
■富士通ソーシアルサイエンスラボラトリで、14年にわたり人工知能の研究開発に従事。その後、コンサルタント会社勤務、民間の研究所を経て、2003年に株式会社感性リサーチを設立。代表取締役に就任。
■2004年、脳機能論とAIの集大成・語感分析法『サブリミナル・インプレッション導出法』を発表。サービス開始と同時に化粧品、自動車、食品業界などの新商品名分析を相次いで受注し、感性分析の第一人者となる。
■著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社+α新書)など。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳