開幕13連勝&通算100勝 打線が菅野を援護する理由

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、10月6日のDeNA戦で、プロ野球新記録となる「開幕投手からの13連勝」と、通算100勝を同時に達成した巨人・菅野智之投手にまつわるエピソードを取り上げる。

【プロ野球巨人対DeNA】開幕13連勝と通算100勝を達成=2020年10月6日 写真提供:産経新聞社

「素直に嬉しい気持ちと、感謝の気持ちでいっぱいです」「先人たちが築き上げて来た記録は、なかなか抜けないものだと思っていた。それを更新できて嬉しいですし、まだまだ伸ばして行きたい」(菅野、ヒーローインタビューより)

10月6日、東京ドームで行われた巨人-DeNA戦。リーグ連覇に向けラストスパートに入っている巨人の先発は、エース・菅野でした。菅野は前回登板(9月29日、広島戦)で開幕12連勝を飾り、「開幕投手からの連勝」では、2004年、チームメイトの岩隈久志が近鉄時代につくったプロ野球記録に並びました。さらに、登板前までに積み重ねた通算勝利数は99。つまりこの試合は、マジック減らしだけではなく、2つの大きな記録も懸かっていたのです。

中6日で、満を持してマウンドに立った菅野ですが、この日のできは決して本調子ではありませんでした。巨人は初回、岡本のライト線への二塁打で先制。援護をもらった菅野は、初回・2回を無得点に抑えますが、3回、先頭の大和を四球で歩かすと、犠打とヒットで進塁を許し、神里の犠飛で同点に追い付かれます。

巨人打線はその裏、松原、岡本の安打で一死一、三塁となり、丸が3ランを浴びせて3点を奪い、DeNA先発・坂本をKO。3回を終えた時点で4-1となり、いつもの菅野なら楽勝のパターンでした。ところが……援護をもらった直後の4回、菅野は佐野に二塁打を打たれ、ロペスに2ランを被弾。4-3とたちまち1点差に。

「おやおや?」というムードになりかけましたが、ここから自分できっちり修正して行けるのが菅野の非凡なところです。以降3イニングを無失点に抑え、7回4安打3失点で降板。いっぽう、巨人は5回にウィーラーが2ランを放って、これで勝負あり。8回・9回は中川-デラロサのリレーで締めて、6-4で逃げ切り勝ちを収めました。

これで巨人は、貯金を今季最多タイの「29」とし、優勝へのマジックナンバーは「16」に。さらに菅野自身も、「開幕投手からの13連勝」というプロ野球新記録と同時に、平成生まれでは初となる通算100勝を達成しました。プロ入りから通算192試合目での100勝到達は、チームの大先輩・江川卓を超える歴代7位のスピード記録です。

ゲームを終えた時点で、菅野の通算成績は100勝47敗。これだけ投げていて、通算防御率2.32という数字にも驚きますが、通算勝率も6割8分。7割近い高い勝率は、負け数の少なさゆえです。エースの条件は「1人で貯金をつくれること」。過去3年間の菅野の成績は、2017年→17勝5敗(貯金12)、2018年→15勝8敗(貯金7)、2019年→11勝6敗(貯金5)。菅野は勝ち星が多いだけでなく「負けない投手」でもあるのです。

また投手の貯金は、そのままチームの貯金につながります。菅野の今季(2020年)成績「13勝0敗」は、言い換えると「菅野1人で貯金を13も稼いでいる」ということでもあります。菅野に勝敗が付かなかった試合は3試合ありますが、リードを許した状態でマウンドを降りたのは、6回途中5失点で降板した6月26日のヤクルト戦だけ(その後打線が反撃し逆転勝ち)。

あとの2試合は、リリーフ投手が打たれて同点に追い付かれ「勝ちが消えた」ものですが、いずれも巨人はサヨナラ勝ちしています。つまり「菅野が先発した試合は負けなし」なのです。このままリーグ優勝すれば、間違いなくMVPは菅野でしょう。

これだけチームに貢献しながら、「俺がいるからチームは勝っている」という驕りが一切見られないのも菅野の素晴らしいところです。6日の試合後、ヒーローインタビューで菅野は、チームメイトへの感謝を忘れませんでした。

「あらためて、野球というのは“助け合いのスポーツ”なんだな、と実感しています」

口先だけではなく「チームのため、ファンのため、みんなのため」という気持ちが、投げる姿から伝わって来るからこそ、バックを守る野手も「何とかしよう」という気になりますし、それが打線の援護にもつながっているように思います。

6日のDeNA戦で象徴的だったのは、先制のタイムリー二塁打を含め4打数4安打と大活躍した4番・岡本です。岡本は前回、菅野が先発した試合(9月29日、広島戦)でミスを犯しました。5回、3-1とリードした場面で先頭打者・菊池涼介のサードゴロを後逸。続く代打・坂倉が二塁打を放ち、無死二・三塁、一打同点のピンチを招きます。

ここで、菅野の表情が一変。エラーが出た直後にヒットを許してしまった自分への怒りもあったのか、鬼のような形相に変わったのです。いわゆる「スイッチが入った」というやつで、「絶対に点はやらん!」と顔に書いてありました。続く大盛・田中広輔を連続三振に斬って取ると、最後は鈴木誠也をライトフライに仕留め、岡本のエラーを「なかったこと」にしたのです。

これぞエースのピッチングであり、失策を謝る岡本の頭を笑いながらポン、と叩いた菅野の姿も印象的でした。6日の岡本の活躍は、このときの「お返し」でもあり、こういう「助け合い」の精神が、巨人の強さの秘密でもあるのです。

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