菅総理が河野大臣を「ワクチン接種担当大臣」に任命した背景にあるもの

By - NEWS ONLINE 編集部　公開：2021-01-27 　更新：2021-01-27

ニュース飯田浩司のOK! Cozy up!篠原裕明飯田浩司新型コロナウイルス感染症

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（1月26日放送）にテレビ東京政治部・官邸キャップの篠原裕明が出演。1月25日からスタートした衆議院予算委員会について解説した。

グループインタビューに臨む河野太郎行政改革担当相＝2020年10月1日午後、東京・永田町　写真提供：産経新聞社

衆議院予算委員会がスタート～政府のコロナ対応などをめぐり与野党の議論が本格化

小川淳也衆議院議員）ワクチンの確保は2021年前半を見込んでいるのか、目指しているのか、政権内で情報発信の乱れがありましたので総理自身の手で正してください。

菅総理）ワクチンについては、目指しています。

衆議院予算委員会は1月25日から、2020年度第3次補正予算案の審議が始まり、ワクチン接種に向けた準備状況など新型コロナウイルスの対応について議論が交わされた。

飯田）本格論戦スタートと言われますが、どうご覧になりましたか？

2021年1月21日、発言する菅総理～出典：首相官邸ホームページ（https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202101/21keizaishimon.html）

坂井官房副長官の発言を河野ワクチン接種担当大臣が取り消す～「見込み」から「目指す」へ

篠原）国民がいま注目するのは、このワクチンの話ですが、かなりドタバタが続いています。21日に加藤官房長官の代理で坂井官房副長官が記者会見をしました。坂井副長官は、ワクチン確保の時期について、「全国民のワクチン確保は6月を見込んでいる」とかなり断定的に発言しましたが、その直後に、河野ワクチン担当大臣がその発言を取り消しました。閣僚と政府高官の発言が食い違う異例の事態となったのです。25日の予算委員会での総理答弁を聞いていますと、坂井副長官の断定的な言いぶりを否定して、「6月確保を目指す」と弱めた発言をしています。

飯田）政府としては目指していますと。

篠原）微妙な違いではありますが、「見込み」ではなくて、「目指す」と。

「大阪コロナ重症センター」で研修する看護師ら＝2020年12月11日午前11時9分、大阪市住吉区の大阪急性期・総合医療センター　写真提供：産経新聞社

国会がスタートした18日にドタバタと決まった河野大臣への「ワクチン接種担当大臣」の任命

篠原）政府内での調整がバタついているのはこれだけではなくて、実は河野大臣のワクチン接種担当大臣への任命もバタバタだったのです。

飯田）そうなのですね。

篠原）河野さんが任命されたのは18日でしたが、18日に何があったか飯田さんは覚えていますか？

飯田）国会が召集されて、スタートした日。菅総理の施政方針演説が行われた日ですね。

篠原）でも菅総理の施政方針演説でワクチン接種担当大臣の話はありませんでした。

飯田）まったくなかったですね。

篠原）本来、これだけの話題であれば、演説に盛り込むはずです。演説に盛り込めないほど急に決まった話だということです。

飯田）事前に報道もなかったですよね。

篠原）なかったです。夕方に「何だ何だ」と関係閣僚が集まったら、どうも河野さんがワクチン接種担当大臣になるらしいというのが、午後5時過ぎくらいに我々に伝わって来たのです。複数の政府関係者に取材しますと、河野大臣の起用というのは、総理の強い意向で当日にドタバタと決まったということです。

緊急事態宣言地域に7府県が追加され国民に対しさらなる協力を呼びかける菅義偉首相＝2021年1月13日午後、首相官邸　写真提供：産経新聞社

菅総理が河野大臣を「ワクチン接種担当大臣」に任命した理由

篠原）なぜ総理がそれだけ強い意向を持って、この大臣の役職をつくったのか。総理に近い方に話を聞くと、厚労省は専門知識を持った医系技官が、その知識を盾にして、政治の言うことを聞かないというのです。安倍政権もそうしたこともあって、コロナ対策は、厚労省から分離して西村大臣に担当させたのです。

飯田）官邸が主導でやるぞということですよね。

篠原）そうです。西村大臣は菅政権でも引き続き担当大臣ですが、菅総理としては、「西村大臣も、最近は医系技官を始めとする厚労省や医師会の側に立ち過ぎているのではないか、西村は大丈夫なのか」という問題意識を強く持っていたということです。

飯田）なるほど。

篠原）それで、ワクチン接種という2021年の政治にとって、非常に重要な課題をやるに当たり、菅総理としては、自らがいちばん信用している河野大臣を起用したいということになったようです。

飯田）安倍政権の振り返りのところで、コロナ対策の話になると、当時の菅官房長官と、当時の西村経済再生担当大臣があまり噛み合っていなかったという話も出て来ますよね。

篠原）噛み合っていなかったですね。西村大臣の周辺も、菅政権発足当初はあまり総理との面会がなかったと言います。「コロナが深刻化してからは、大臣はよく総理に呼ばれるようになった」と言っていました。

FRANCE - HEALTH - VACCINE ILLUSTRATION PFIZER LABORATORIES＝2020年11月18日　Hans Lucas via AFP　Photograph by Magali Cohen / Hans Lucas.　写真提供：時事通信社

政府オールプロジェクトになるワクチン接種～河野大臣の発信力に期待する菅総理

篠原）このワクチン接種担当大臣の第一の仕事は各省の調整です。ワクチンと言うと厚生労働省というイメージがあるではないですか。でも、いろいろあります。例えば、ファイザーのワクチンは超低温冷凍で保管しなくてはいけない。

飯田）マイナス70度と言われています。

篠原）その冷凍庫の調達は経産省がやり、トラックなどの輸送の手配は国交省がやる。自治体との連絡は総務省がやり、使い終わった針の処理は環境省がやるということになります。政府オールプロジェクトという感じなのです。

飯田）なるほど、省庁横断になるのですね。

篠原）この調整の司令塔を河野大臣がやるということです。さらに、菅総理はある政権幹部に対して、「河野大臣の発信力に期待しているのだ」と言っています。河野さんはツイッターで220万人以上のフォロワーがいます。特に政府は若者に向けてコロナの発信をしたいという思いがありますから、そういう意味でも、河野さんに期待しているのです。いずれにしても、日本では、一般の人は5月から接種開始という案も浮上していますが、まだスケジュールは確定していません。そうしたなかで、接種を実施する自治体も集団接種のノウハウがなくなりつつあります。というのも、1994年に予防接種法が改正されてから、児童へのインフルエンザワクチンの集団接種がなくなってしまったからです。我々が小さいころはありましたが。

飯田）体育館にクラスごとに呼ばれて列をつくって。

篠原）そういうことがなくなってしまったので、集団接種のノウハウが自治体にもなくなりつつあるのです。27日に川崎市で集団接種の訓練が行われますが、各自治体との調整や省庁との調整、国民への情報発信など、河野大臣の責任は大きいと思います。