アフターコロナの恐怖~スペイン風邪の10年後に起こった大恐慌
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月15日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。飲食店の取引先などに支給する最大40万円の中小事業者向け一時金の概要を経産省が発表したニュースについて解説した。
タクシーや旅館、飲食店の納入業者などにも最大40万円の一時金を支給へ
新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を受け、経済産業省は1月14日、飲食店の取引先などに支給する最大40万円の中小事業者向け一時金の概要を発表した。食品や割り箸などを飲食業に提供する事業者と、農家や漁業者の他、人の流れが減少したことで影響を受けた事業者も対象とし、旅館や土産物店、観光施設、タクシー会社などを想定している。
飯田)2021年1月、または2月の売り上げが、前年の同じ時期と比べて半分以上減ったことが条件になるということです。
宮家)私は専門家ではありませんが、対象を拡大したということは評価すべきだと思います。しかし、おそらくこれだけだと十分ではないですよね。1990年代辺りから経済のサービス化ということが言われて、製造業よりサービスの比重が増えて来て、いまのサービス産業があるわけですが、コロナというのは、サービスを徹底的に叩きましたよね。
痛手を受けるサービス業~経済格差がさらに広がる可能性も
宮家)私が心配するのは、もちろん感染の拡大、患者さんの増加というような問題もありますが、どれくらい続くかわからないコロナ禍が経済に与える影響、特に、経済格差が広がる可能性を心配しています。こんな状況なのに株はいま2万8000円なのでしょう。素人なので「なぜなのか」と思ってしまうのです。ということは、ここで儲かる人は儲かっていて、そうでない人との差がどんどん広がっているということです。
飯田)株価は上がっていますね。
宮家)トランプ現象というのも、「忘れ去られた白人労働者層の怒り」が爆発した結果なのです。日本は幸いなことに、ヨーロッパやアメリカと違って、それほど格差が広がっているわけではない。しかし、不満がないわけではないと思います。やはり苦しい生活をされている方がたくさんいて、それが確実に増えているのです。それを考えると、サービスが痛手を受けているときに、何らかのことをしなくてはいけないというのは、正しい。しかし、これでどのくらい回復できるかというのは、私にはよくわかりません。
飯田)確かに、雇用の受け皿の部分でも、サービス業、特に飲食や宿泊が大きな比重を占めていて、そこが大打撃を受けたということは、かなり影響を与えますよね。
宮家)日本の社会はどちらかと言うと安定している方だし、民度も高いし、それほど深刻に考えていませんが、全体的な流れを見ると、コロナが一巡したところで大きな経済のダメージが全国で起きたならば、必ずドロップアウトしてしまう人たちが出て来るはずなのです。そのような人たちをどのようにして少なくするか、救うか、ということが日本社会の将来の安定に関わって来ると思い、私は非常に心配しています。
スペイン風邪流行の10年後に起こった大恐慌
飯田)宮家さんは、以前から外交や安全保障の面で、1930年代に近いのではないかというお話をされています。あの時代は確かに経済の面で言うと、例の「暗黒の木曜日」という大恐慌が起こった。その部分にも近づいて行っているのではないかという嫌な予感がしますね。
宮家)あのときも、その10年くらい前にスペイン風邪があったのですよね。
飯田)そうですね。
宮家)そのスペイン風邪が大恐慌に直接つながったわけではないのですけれども、第一次世界大戦をやっているときにスペイン風邪があって、大きな傷ができたのだと思います。それが大恐慌という形で追い討ちをかけられた。そこで不満が出て来て……という流れは、完全に同じことが繰り返されるわけではないけれども、歴史は韻を踏むわけです。同じことが繰り返されるということを心配しているわけではありませんが、人間はそれほど変わりませんからね。そこが心配ではあります。
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