ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月11日放送)に双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が出演。パンデミックに対する考え方について解説した。
遺伝子の配列のコピーミスはよく起きる
1月2日、ブラジルのアマゾナス州から羽田空港に到着した10代から40代の男女4人が、イギリスや南アフリカで見つかったものとは異なる変異ウイルスに感染していたことがわかった。このウイルスへの感染が国内の検疫で確認されたのは初めて。
飯田)新たな変異ウイルス、イギリスや南アフリカで見つかったものと共通の変異はあるものの、遺伝子の配列は異なると。すごいいろいろな変化をしていて、よくわかりませんね。
吉崎)遺伝子の配列というのは、コピーされていきながら子孫ができていく、これは生き物のメカニズムなわけですけれども、コピーミスっていうのはわりと起きるのだそうです。特にウイルスの場合はそうやって新種がどんどん出てくる。
「隔離と旅行制限はあまり効果がない」2005年のWHOのパンデミック報告書に記載
吉崎)15年くらい前に出た、WHOのパンデミックに関する報告書(『Avian influenza: assessing the pandemic threat』2005年 WHO発表)というものを読んでいましたら、やはり
・パンデミックは予測不可能である。
・ウイルスによる潜在的な感染力は「波」によって違ってくる。
1度目に影響を受けなかった年代や地域が、第2波には脆弱になりやすい
~『Avian influenza: assessing the pandemic threat』より
吉崎)……と書いてあるのです。それを読んでいると、ギクッとするようなことが結構書いてあって、例えば……
隔離と旅行制限はあまり効果がなかった。
~『Avian influenza: assessing the pandemic threat』より
吉崎)……とか。これはつまり、いまから100年前のスペイン風邪とか、あるいは香港風邪とか20世紀に起きたパンデミックをいろいろと検証した結果で、経験則として分かってくるのは、例えば……
国内の感染は「密接」と「密集」に関わっているので、一時的な集会禁止と学校閉鎖は潜在的に有効である。
~『Avian influenza: assessing the pandemic threat』より
吉崎)……いまで言う“3密禁止”は効きますと。ただ……
これらの処置は長期にわたって強いる必要はない。
~『Avian influenza: assessing the pandemic threat』より
吉崎)……あまり長く続けても意味ないよと。けっこうぞっとするようなことが書いてあって「早く言ってよ」という感じです。
飯田)本当ですよね。15年も前にそんなもの出していたのですね。
吉崎)(この報告書の中に)2005年に鳥インフルエンザというものが流行ったときに出た、パンデミックに関する12の教訓というレポートが出ていて、それを読んでみるとけっこういま当たっていることがあって。そのなかでいちばんギクッとするのは……
ワクチンによるパンデミックへの効果は潜在的には大きいが、検証の余地がある
~『Avian influenza: assessing the pandemic threat』より
吉崎)……ワクチンはあまり期待しない方がいいよと。
飯田)そうですか。
吉崎)結局、
1957年や1968年にはワクチンの製造能力に限界があったため、生産者が急いだものの効果を上げるだけの量は間に合わなかった
~『Avian influenza: assessing the pandemic threat』より
吉崎)……ワクチンは効くかもしれないけれども、生産が間に合わなかったりするので、けっこう大変よという風に書いてありました。
飯田)それよりも、ある程度の人数がかかって免疫ができるって、集団免疫みたいなものが終息には結局のところ効果があったということなのでしょうか。
世界と比べるとうまくやってきている日本、もう少し自信を持っていい
吉崎)楽観的に見れば、パンデミックっていつか必ず終わるので、それは20世紀にも3回くらいあった、我々がそれをすっかり忘れているだけで、それはあるのですよ。スペイン風邪なんて、当時の日本の人口の1%弱くらい亡くなっていますよ。
飯田)いまで言ったら1億3000万人、ということは130万人くらい。
吉崎)だから当時はアメリカなんかもそうですね。当時のアメリカって人口が1億ですよ。67万人くらい亡くなっているのです。プラス第一次世界大戦もあるので、もう本当に1%弱ですよ。日本が当時5500万人くらいで、やはり45万人くらい亡くなっていますから。すごいことなのですよ。問題は、我々がスカッと忘れてしまっているということ。
飯田)人類が過去にも経験してきたことではあると。その、いかに被害を極小化しながら収束を待つか、みたいなことになってくるのでしょうかね。
吉崎)いまのところ、なんだかんだ言って日本は死者数がすごく少ないわけですよ。全世界で180万人と言っていますが、この国は全世界の人口の1%以上はいるのですから、信じられないくらい、いままではうまくやっている。それはね、もう少し自信を持っていいのではないかなと思います。
飯田)対策に注力するあまり、他のところで、例えば経済が失速して、それが原因で命を絶つ人とかいう、いろいろな問題点が出てきますからね。
吉崎)そうですね。人口10万人あたりの死者数というデータがあって、大体交通事故で3,5人くらい。いまコロナの死者数って丁度それと同じくらいですよね。ただこれが怖いのは、自殺ってすごく多くて、15人くらい。だから、けっこう死因って本当にいっぱいあるわけですけれども、コロナだけ見ていると本当に怖くなってしまうのだけれども、他にも人間の死因っていっぱいあって、ちょっと一歩引いて考えなければいけないところがあるかな、と思います。
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