ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月8日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。岸田総理が就任後初めて行ったロシアのプーチン大統領との電話会談について解説した。
ロシアとの対話は続けて行くべき
岸田総理は就任後初めてロシアのプーチン大統領と電話で会談し、停滞している北方領土問題を含む平和条約交渉について、これまでの両国間の諸合意を踏まえ交渉を継続して行くことを確認した。また、対面での首脳会談を早期に行う方向で調整を進めることで一致した。
飯田)10月7日夕方5時半ごろから、北方領土問題を含めて約25分間行われたということです。
宮家)ロシアとの問題において、簡単に解決できるものは1つもないのだけれども、中国、アメリカなど他国のことを考えた場合、やはりロシアとの対話は続けて行かざるを得ないし、続けて行くべきだと思います。
飯田)続けて行くべきだと。
宮家)あれだけ安倍政権時代に努力をしたわけですけれども、相手はプーチンさんです。どちらが「きつね」でどちらが「たぬき」かはわかりませんけれども、そういう部分もあったかも知れない。なかなか進まなかったわけですが、だからと言って、対話を止めるというような話ではありません。引き続き交渉して行かなければならない。
5年間の外相経験は今後の岸田外交に活きる
宮家)これに限らず、岸田さんの外交は、いい意味で私は正統派の外交だと思います。5年間、外務大臣をやられた。安倍晋太郎さんだって3年8ヵ月でしたので、5年というのは相当な経験です。総理になられたいま、それは大きなアセットだと思います。
飯田)外務大臣の経験は。
宮家)彼を支えるシステムとしては、外相時代の秘書官が官邸に秘書官として入っていますし、NSCができてから外交、安保、防衛省との調整も含めて連携がよくなっています。私は岸田さんの外交について心配していません。彼の考えた通りにやって行けばいいと思うし、私も一応「参与」なのだけれども、日々の細かいことについてとやかく言うつもりはありません。
外相時代から続くブリンケン国務長官との信頼関係
飯田)外相だったのは、第2次安倍政権が発足した2012年末からの5年間。あの当時、アメリカはオバマ政権で副大統領がバイデンさん。その辺りのパイプなどもあるのですか?
宮家)米国務省のブリンケンさんは、国務長官ですから、日本で言えば外務大臣ですよね。ブリンケンさんがなぜか岸田総理のご就任に祝福メッセージを出しているのです。こういうことは普通あまりしないのだけれども、2015年の日韓合意のとき、事実上は一緒に仕事をしていたからなのでしょう。
飯田)当時、ブリンケンさんは国務副長官でした。
宮家)ブリンケンさんはあの合意にずいぶん貢献しました。オバマ政権のときからの岸田首相と米側の信頼関係は続いていると思います。その意味でも、やりやすいのではないでしょうか。
日韓関係について
飯田)そう考えると、日韓合意がどうやってまとまって行ったのか、アメリカ側も熟知しているということですね。
宮家)みんな知っています。
飯田)ちゃぶ台をひっくり返したのはどこの誰だということも、よくわかっているわけですね。
宮家)それもよくわかっています。
飯田)これは大きいですか?
宮家)大きいと思います。日韓関係については、いまの状況だと韓国側の大統領選挙を待つしかありません。もちろん日韓関係を悪くしようというつもりはないですけれども、向こうだって相当の努力をしてもらわないと困るわけです。韓国側にあれだけやられてしまったら、こちらから譲歩するわけにはいかないですよね。
飯田)そうですよね。
宮家)待つべきものは待ち、進めるべきものは進めるというメリハリがあって良いのではないでしょうか。安全保障戦略を改定することも含めて、日本側は着々とやるべきことをやっている気がします。
対中国 ~「新たな安全保障環境に対応する政策」としての抑止力の強化と対話
飯田)対中国、あるいは東アジアについて、基本的にここの路線も踏襲する形で行くわけですか?
宮家)「安倍政権の踏襲だ」とみんな言うのだけれども、私に言わせれば、ちょっと違う。もちろん安倍さんの外交は素晴らしかったのですが、2010年、2012年に日本の尖閣に関する重大事件がありました。あの2つの事件を境にして、この地域での安全保障環境は激変したと思います。
飯田)尖閣の事件で。
宮家)それに対してまともな対応をしたのは安倍政権で、それがいまの日本外交のスタンダードになっているわけです。安倍さんがやったことを踏襲するというよりも、「新しい安全保障環境に対応する政策」となれば、自ずから方法は限られて来るわけです。それをオーソドックスにやること自体、大事なことだと思います。新しいことをやる必要はありません。むしろ、いまあることを進化させて、抑止力を強化する、他方、対話は続けるというように、両方やって行かなければいけないと思います。
国際会議で重要な休憩時間での会話 ~外交のあるべき姿は対面でのもの
飯田)アメリカもそうですが、対面での会談や国際会議の実施が難しく、オンラインが多くなっています。今回のG20は総選挙のタイミングにも被るということで、オンラインで参加することになりましたけれども、今後は対面も増えて行くのでしょうか?
宮家)今回のG20だけを考えれば、中国は別ですが、民主主義国家であれば選挙がいかに大事かというのは各国首脳ともによくわかっていますから、大きな問題にはならないと思います。
飯田)今回のG20は。
宮家)2022年以降は対面を増やして行くのだと思います。やはりTVスクリーンだけではダメです。会談や国際会議では、休憩時間に首脳同士で「この間の話だけれどもね……」というような率直な話をすることが重要になるのです。やはり対面会談の重要性は捨てがたいですね。
飯田)サミットのタイミングなどでは、「コーヒーブレイクが大事だ」などという話があります。
宮家)それに至る過程が大事なのです。テレビカメラが入って映すのは最後の結果であって、文書づくりが重要なのですが、同時に首脳同士の「ちょっとした雑談」も単なる雑談ではありません。とても重要な部分なのです。そういうことを、世界中がこの1年半くらいできなかったわけですね。来年以降は外交が本来あるべき姿に戻って欲しいと思います。
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