亀井・大竹・雄平・岩田……引退選手「最後の言葉」のストーリー
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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、今シーズン限りでユニフォームを脱いだ野球人たちのエピソードを紹介する。
2021年、今年もプロ野球界では、名選手たちが現役生活に別れを告げました。「平成の怪物」西武ライオンズ・松坂大輔をはじめ、通算2000安打も達成した「鉄人」千葉ロッテマリーンズ・鳥谷敬、首位打者も獲得した「鷹の打撃職人」福岡ソフトバンクホークス・長谷川勇也など、かつて一時代を築いた選手たちとの別れは寂しいものがあります。
もちろん、タイトル経験などはなくても、ファンの記憶に残る選手たちはたくさんいます。今回はそのなかから、4人の選手たちの「最後の言葉」にまつわるストーリーを紹介して行きます。
■読売ジャイアンツ 亀井善行
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『自分も2010年から本当に不振で苦しんで、ケガもありましたけど、そのときに拓さんに「野球は9人でやるものじゃない。控えでも輝けるところがある」と教わりました。「1軍のピースは必ずある」と。自分もそういう選手になりたいと』
~『日刊スポーツ』2021年10月21日配信記事 より(亀井善行・引退会見でのコメント)
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巨人の頼れる切り札・亀井が語った、「拓さん」こと故・木村拓也コーチからの教え。現役時代は内外野どこでも守り、捕手もこなした木村コーチ。試合前の練習中に突然倒れ、帰らぬ人となりました。
その言葉通り、チーム最年長の立場で迎えた今シーズンも「1軍のピース」になるため、これまで苦手にして来たことに取り組んでいました。
それは「ウエイトトレーニング」。2020年の日本シリーズでは、4試合で9打数ノーヒットに終わり、第4戦の際には最後の打者となってしまった亀井。ソフトバンクホークスに4連勝での日本一を許してしまった悔しさから、変化と進化を目指し続けたのです。
その成果をまさに発揮したのが、今年(2021年)の開幕戦でした。7対7で迎えた9回裏、亀井は代打で登場すると、3球目のスライダーをバット一閃、とらえました。打球はライトスタンドへ飛び込み、史上初の「開幕戦代打サヨナラホームラン」に。控えでも輝くため、新たに手にした「パワー」がもたらした一打でした。
■東京ヤクルトスワローズ 雄平
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『人と人とのつながり、沢山の方とつながれたことが今財産になっていまして、本当に沢山の方に感謝しています』
~2021年10月5日掲載 東京ヤクルトスワローズ公式サイト より(雄平・引退会見でのコメント)
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「投手・高井雄平」として入団した雄平は、高卒1年目で5勝を挙げ、将来を大いに期待されました。しかし、課題だったコントロールに苦しみ出番が少なくなると、打者に転向。2015年、勝てばリーグ優勝の試合で放った「優勝決定サヨナラタイムリー」はいまでも語り草になっています。
そんな苦労人が引退会見で語った「人と人とのつながり」。この言葉を証明するシーンが11月1日に行われた引退試合でありました。雄平が守備についた6回、同じタイミングで41歳のベテラン左腕、石川雅規がマウンドに上がったのです。
石川がリリーフを務めるのは何と13年ぶり。それどころか、石川は今年、295試合連続先発登板のセ・リーグ新記録を樹立。さらに、306試合まで記録を更新しています。日本記録更新まであとわずか「5」と迫っていました。
そんな記録よりも、「盟友をグラウンドで見送る」ことを優先した石川の男気、そしてそれほどまでに慕われて来た雄平の2人に対し、SNSではファンからの熱いメッセージが絶えませんでした。
■読売ジャイアンツ 大竹寛
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『間違いなく、シュートがあって野球を長く出来たと思います。シュートをちゃんと使うようになった分岐点は黒田さんがいたから。大先輩がシュートを使っていて、見よう見まねで右打者の内角に思い切って投げたのが始まりです。自分を助けてくれたボールだと思います』
~『日刊スポーツ』2021年10月25日配信記事 より(大竹寛・引退会見でのコメント)
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引退会見の際、「102勝しても101敗した男からの懺悔」として「101杯のカップ麺」を報道陣のために用意した大竹。粋な計らいとして大きく報じられましたが、その分、会見での「言葉」が全面に出ていない印象を受けました。
筆者が印象深かったのは、決め球・シュートへのこだわりについて言及していた点です。前日の引退登板では「マウンドに上がったらスイッチが入った」と、右ヒザの痛みを押して、5球連続で得意のシュート攻め。相手のバットをへし折って、伝家の宝刀の切れ味を最後までファンに示したのでした。
■阪神タイガース 岩田稔
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『大阪で育ち、高校・大学も大阪でお世話になって。その中で関西の球団となればやはりタイガースなので。素晴らしい縦縞のユニフォームを着られて幸せです』
~2021年10月1日掲載 阪神タイガース公式サイト より(岩田稔・引退会見でのコメント)
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毎日数回は注射を打ってインスリンを補充し続けなければ命にもかかわる1型糖尿病を患いながら、阪神一筋16年で60の勝利を積み重ねた岩田稔。入団時に「同じ難病を抱える人たちの『希望の星』になりたい」と語った通り、「岩田稔基金」を設立して、1勝あげるたびに10万円を寄付する社会貢献にも尽力。同じ病に苦しむ人たちに勇気と希望を与えて来ました。
そんな不屈の男が引退会見で語ったのは「縦縞」への感謝。すると、後日行われた引退セレモニーでは粋な演出が用意されます。
長男・輝大君が投手としてマウンドに立ち、受けるキャッチャーが岩田。打席には長女・美來さんが立ち、次女・菜心美さんが審判役。そして、子どもたちはみんな「縦縞」のユニフォームを着てセレモニーに臨みました。
引退会見でも、60勝のなかでいちばんの思い出に「長女が生まれた日の完封勝利」を挙げるなど、家族思いで知られる岩田。それだけ愛した「家族」と「縦縞」に囲まれての引退セレモニーとなったのです。
今回取り上げた選手、それ以外の選手たちも、これからの人生に幸多からんことを。