ジャーナリストの鈴木哲夫が5月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。国会で審議入りした2022年度補正予算案について解説した。
2022年度補正予算案、5月26日から衆議院で審議
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政府の物価高対策の財源の裏付けとなる2022年度補正予算案が5月25日午後、国会で審議入りした。一般会計の歳出総額は2兆7009億円。政府・与党は月内の成立を目指している。
飯田)26日~27日に行われる衆議院予算委員会は、総理出席だということです。
鈴木)久々に総理と野党の面々が対峙するわけです。当然、予算なので、予算そのものの問題もありますが、いま予算委員会ではいろいろな問題があります。トータルで集中審議も含めて6回ほどあると思いますが、他の問題も含めて注目したいですね。
飯田)他のことも含めて。
鈴木)一般会計の歳出総額2.7兆円については、大方の人も言っていますが、やはり規模が小さいのではないかということがまずあります。
一般会計の中身を見るとやるべきことは小さくまぶしてある ~野党としては攻めにくい
鈴木)24日夜に自民党の某幹部と久々に話し、25日夜は立憲の予算委員会の某幹部とも話をしたので、自民・立憲の両方に取材することができました。
飯田)そうなのですね。
鈴木)追及する側である立憲民主党の幹部が言うには、「2.7兆円というのは非常に岸田さん的だ」と。突きどころが難しい。立憲としては10兆円~20兆円ほど出すべきだと言っているので、もちろん総額が少ないということはあります。ただ、中身を見てみると、当然やらなければいけないことはきちんとまぶしてある。
飯田)メニューだけを見ると並んでいるのですね。
鈴木)何かが突出しているのであれば、「これは何だ!」という形で攻めていけるのですが、今回は小ぶりなものが総花的に並べてある。1点を突くことが難しい。「岸田さんらしい」と言っていました。
飯田)ある意味で政権の色のようなものがない。
1ヵ月3000億円を超えるガソリン補助金 ~いつまで続くのか
鈴木)もう1つは、ガソリンのことを言っていました。ガソリン補助金は月に3000億円を超えます。
飯田)そうですね。
鈴木)3ヵ月で約1兆円です。いつまで続くのだろうかという話になります。おそらく9月から秋にかけて、その幹部の人は、「物価も含めてさらにひどい状況になっていきますよ」と言っていました。いま通したとしても、将来を見据えたときに、2.7兆円で果たしていいのかどうか。ガソリンについても、トリガー条項や消費税で対応した方がいいのではないかなど、いろいろな意見があります。
飯田)二重課税されていますよね。
鈴木)そうなのです。そういう意味では、その辺りの突っ込みどころはあるかなと言っていましたので、その話になるとは思います。
飯田)ガソリンについては。
鈴木)総理も出てきますので、野党はいろいろな問題を仕掛けてきます。野党にしてみれば、参院選前の最大の見せ場になるのですから。
最大の山場は「細田衆議院議長のセクハラ発言問題」
鈴木)これは自民党の幹部も立憲の幹部も言っていたのですが、最大の山場はおそらく、細田さんの問題だろうということです。
飯田)26日発売の週刊誌の広告を見ると、大展開になりそうですね。
鈴木)週刊誌がいきなり大きくと出すということは、第2弾、第3弾まで準備しているということです。
飯田)女性記者に対して深夜に家まで呼び出すなど、最初は特集ワイドの一記事だったのですが。
鈴木)そこに書いた時点で、既に他のものもあったのかも知れません。もしくは、ここまでに、さらに詳しい証言、例えば音声やメールでのやり取りが出てきたとか。細田さんは衆議院議長ですから、相当尾を引くと思います。この前の100万円発言もそうです。
1人の国会議員にかかる費用は年間7000~8000万円 ~まるで政治家が稼業のような感覚も問題
飯田)国会議員は月に100万円しかもらっていないのだという。
鈴木)領収書を使わなくてもいいお金を含めて、払った税金も入れれば収入がいくらになるのか。ある大学の先生が試算していましたが、5000万円を超えるのですよ。
飯田)年収ベースで。
鈴木)立法費や文通費(文書通信交通滞在費)、JRのパスなど。それだけではなく、3人の秘書の給与は国から出ているのです。それ以外にも、政党交付金などをすべて加えると、1年間に7000万~8000万円ほどが1人の議員にかかるのです。
飯田)なるほど。
鈴木)細田さんとしては、「地方議員を減らすのはダメだ、地方議員を1人雇っても月100万円程度で済むのだから」ということを言いたかったのだと思いますが、その金銭感覚がまずおかしい。また、お金の話を出すということは、政治家が稼業のような感覚になってしまっているのだと思います。その辺りも大問題だと思います。
衆議院小選挙区の「10増10減」が自民党内でどうなるのか
鈴木)衆議院小選挙区の「10増10減」についても、自民党がこのような形で見直していこうというルールを決めたのですから、「異論があるのならば、自民党のなかで議論してください」と、「衆議院議長が言う話ではない」ということもあります。
飯田)細田さんの言うことではない。
鈴木)また、小選挙区制そのものが「現代に馴染むことなのか」という根本議論もあると思います。10増10減については、あくまでもいまの制度のなかで、自民党が地方でも頑張って当選しているから減らされると困るよね、ということでした。
減員対象の当事者となる安倍元首相、二階元幹事長 ~このままでは党内政局に
鈴木)安倍さんの選挙区である山口や、二階俊博さんの和歌山も減員対象に含まれています。ある自民党幹部は、参院選後の最大の政局は「10増10減」だと言っていました。
飯田)10増10減が。
鈴木)山口では4区が安倍さんで、3区は林芳正外相が当選した選挙区です。また、二階さんが地盤とする和歌山では、世耕弘成参院幹事長が出るつもりでいます。二階さんは自分の後継者をつくりたいようですが、どうするのか。
飯田)難しいですね。
鈴木)このままだと党内政局になってしまいます。岸田さんの判断によっては、「許せん」という話になってしまう。政策ではなく選挙制度が党内政局の最大の争点になるのではないかと言われています。
細田衆院議長の「セクハラ発言報道」への説明責任が最大の山場に ~不信任案提出の可能性も
鈴木)そういう問題もありますが、どちらにしろ、細田さんの説明責任が最大の山場になるのではないかということは、立憲側も言っていましたし、自民党側も言っていました。
飯田)それこそ最初の報道が出たあとに、議院運営委員会などで説明するべきだとなった際、議長は「事実無根なのだから」という話をした。しかし、追撃する記事が出て、「これは事実なのかも?」となっているのが現状ですよね。
週刊文春を訴えず、抗議文とした理由
鈴木)最初は報じた週刊文春を訴えるという話もありましたが、抗議文で止まっています。「訴えて徹底的にやってしまったら、深みにはまっていくという判断があったのだろう」と、自民党の幹部が言っていました。
飯田)訴えてしまったら。
鈴木)今後の対応によっては、少なからず選挙にも影響してきます。野党の戦術からすると、このあとは不信任案や議長解任などの話題が出てくると思います。岸田さんは行政区の話ではないからと言っていましたが。
飯田)議院内閣制なのだからと。
鈴木)それは通用しなくなりますよね。どのような説明責任を果たすのか。場合によっては議長職を退く、退かないも含めた山場が終盤、国会にくるのだろうと思います。
参院選のあとの注目は、10増10減をめぐる自民党内政局と野党の政党再編の動き ~微妙な国民民主と立憲の関係
飯田)国民民主党は本予算には賛成しました。今回、補正予算も採決があるわけで、不信任案と合わせると、そこには2つあるということになります。
鈴木)もし不信任ということになると、国民民主へのある種の踏み絵のような形になると思います。国民民主と立憲の関係は、実はもう、その段階にきているのではないでしょうか。参議院選挙が終わったあとに、おそらく国民民主そのものにも山場がくると思います。政党再編と言っていいかも知れません。
飯田)国民民主の。
鈴木)連合が絡んでいるので、着地点がまだ取材中で見えませんし、選挙結果にもよります。しかし、参議院選挙のあとにくるのは、10増10減をめぐる自民党内政局と、野党の政党再編の動きだと考えています。そのような政局的な動きが出るのだろうと思います。
飯田)なるほど。
鈴木)しかし、それをやっていていいのかと。安全保障や物価対策など、やることは他にもあるのではないかと思うのです。1日も早く臨時国会を開いて対応するのが、岸田さんの役目というか責任ではないでしょうか。
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