「岸田政権の予算の積み方は実効性がない」 高橋洋一が言及

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数量政策学者の高橋洋一が11月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2022年度第2次補正予算案について解説した。

「岸田政権の予算の積み方は実効性がない」 高橋洋一が言及

2022年10月28日、記者の質問に答える岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202210/28kaiken.html)

2022年度第2次補正予算案を決定へ

政府は11月8日、2022年度第2次補正予算案を閣議決定した。高騰する電気やガス料金の抑制策などを盛り込んだ総合経済対策を中心に、一般会計の歳出総額で28兆9222億円を計上。財源には、当初の計画を上回った税収などもあてるが、歳出の約8割にあたる22兆8520億円は新たに赤字国債を追加発行して賄う。

飯田)11月中旬に臨時国会に提出、年内の成立を目指すということです。

赤字国債をこんなに出さなくても予算は組めるはず ~繰り越したものは埋蔵金として残る

高橋)赤字国債をこんなに出さなくても予算は組めると、まず思いました。同じようなときに「過去の経済対策でどのくらい使い残しがあったか」という会計検査院の報告がありますが、それが20兆円くらいでした。それを繰り越すなり、不用(額)を立てるので少し減るはずなのだけれど、繰り越しているのだから、どこかに必ずありますよね。

埋蔵金を残しながら多くの国債を出して「財政危機だ」と言う矛盾

高橋)そういうものを集めてくれば、簡単に予算がつくれると私は思いました。しかし、国債を増やしているということは、残したものはいわゆる埋蔵金になってしまうのですよ。埋蔵金を残しつつ、多くの国債を出して、見かけ上で「大変だ」と言ったのかなと思ったくらいの予算でした。

飯田)22兆円が赤字国債だということで、「財政規律が」という話が出ています。

高橋)だから私は埋蔵金の話をしているわけです。埋蔵金というのは細かい話で、例えば独立行政法人であれば、数百億円や1000億円~2000億円のレベルになってしまうから、わかりにくいと思い、外為特会では40兆円くらいあるので、大きいところを言っているだけなのです。

飯田)わかりやすいところで。

高橋)使い残しを集めてきて一般会計繰り入れにすれば、「こんなに国債を出さなくても済むのに」と思います。それなのに、わざと国債を出して「大変だ」と言いつつ、埋蔵金のことは言わないでしょう。私はそこにいつも矛盾を感じているのです。

飯田)「大変だ」と言いつつ、埋蔵金のことには触れない。

高橋)埋蔵金のことを言うというのは、繰り越しなら繰り越しで、どこにどうしたかという使途を言わないと。はっきり言えば、そういうものに蓋をしておいて「財政危機」などと言うのは少しおかしいと思います。

支出には補助金系と減税系がある ~補助金系は手続きが多く執行が難しい

飯田)コロナ対策なども含めて相当、財政出動したはずなのに、それが実需になっていないのはどういうことなのか。

高橋)執行していないのです。もともと支出には補助金系と減税系の2つがあって、減税系は執行率がほぼ100%になります。税金を取らないだけだから簡単なのです。しかし、補助金系は支出において、いろいろな書類が必要で手続きがたくさんあるのです。だから補助金系は執行がうまくいかないときがあります。

通常、景気対策は「減税系」7で「補助金系」が3 ~日本は逆になっている

高橋)世界の普通の景気対策は、OECDなどを全部調べると減税系の方がはるかに大きいのです。ウエイトはだいたい減税系が7で、補助金系が3くらいです。

飯田)普通は減税でやる。

高橋)日本はそれがひっくり返っています。過去もそうだけれども、補助金系が8で減税系が2です。今回の岸田政権では、ほとんど減税系がありません。要するに補助金系が10という感じで、「かなり執行残がありそうだ」とわかるのです。

予算を積んでも執行できなければ意味がない ~実効性がない岸田政権の予算の積み方

高橋)「こんな予算をわざとつくっているのかな」と思ってしまうくらいです。普通は、補助金系は増やさず、減税系を増やして執行しなければならないのです。予算を積んでも執行できなかったらダメなのです。

飯田)意味がないですよね。

高橋)執行を考えるときには、減税系で大玉をつくるのが基本です。しかし、そうしていないでしょう。予算を積んでいても実効性がないように見えてしまいます。

「減税系が嫌だ」という財務省と「補助金系が好き」な他省庁と政治家をうまく組み合わせた予算案 ~執行が難しい

高橋)「減税は嫌だ」と思って予算をつくると、不自然なことになってしまう。

飯田)まず入り口にそれがあるという。

高橋)もう1つ言うと、補助金系の方が官僚や政治家は喜ぶのです。

飯田)裁量がそこに働くということですか?

高橋)「減税系が嫌だ」という財務省と、補助金系が好きな他省庁と政治家をうまく組み合わせたような感じです。

飯田)そうなると、特定のところにしかお金が流れず、世の中全体の経済が上がっていくわけではないという。

高橋)そうですね。

減税系でバラ撒く方が景気対策としては優れている

飯田)一般庶民が割を食うということですか?

高橋)そうですね。かつ執行がうまくできないでしょう。「いい予算ではない」とは思います。よくバラマキと批判されますが、特に減税系でばら撒く方が景気対策としてはるかに優れているのです。

飯田)あまねく人に恩恵が及ぶようにすれば、いろいろなイノベーションが起こる可能性がある。

高橋)でも、バラマキは必ず批判を受けるでしょう。

飯田)確かに。

高橋)私は、どうせ予算をつくるのであれば、バラマキで100%執行した方がいいのではないかという立場なのです。

飯田)ガソリンのときも「暫定税率を廃止した方がいいのではないか」という話をここでも言っていましたが、結局それも補助金で屋上屋を架しましたし、今回のガスや電気だって結局……。

高橋)そっくりなのですよ。補助金ばかりです。官僚系は喜ぶけれども、執行という観点からみれば、景気対策で100%の効果は出にくいのです。

飯田)それがそのまま埋蔵金になっていく。

高橋)そうです。

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