12月11日(日)、スポーツライター金子達仁がメインパーソナリティを務めるラジオ番組「The Deep」(ニッポン放送・毎週日曜20時~20時20分)が放送。天皇杯優勝・ヴァンフォーレ甲府・山本英臣選手が出演。天皇杯決勝で、痛恨の「ハンド」を犯した時の心境を明かした。
一流アスリートたちをゲストに迎え、スポーツの面白さや、アスリートの心の奥底にある想いを届けていく番組、「The Deep」。山本は、2003年にヴァンフォーレ甲府に加入し、今年で在籍20年目。「ミスター甲府」と称される。今年2022年10月の天皇杯では、J1で3位のサンフレッチェ広島に対し、J2で18位のヴァンフォーレ甲府が、PK戦の末に勝利し、歴史に残る下剋上で優勝を果たした。
金子:河田選手がPK(決勝戦の延長後半116分。山本選手のハンドから与えたPK)を止めた。こういう場面、ほとんどの選手がそうでした。河田選手のところに抱きつきに行った。祝福に行った。山本さん、行ってないんですよ。どうしたんだろうと思ったんですけれど、呆然だったんだ?
山本:そうですね。本当だったら感情が爆発するはずなんですけど、やってしまった事の大きさのショックを受けすぎて……。「ありがとう」って言う前に、まず「ごめんなさい」を言いたくなっちゃって、河田に(笑) それはまだ試合中だしな……。なんて思いながら、行かなかったんです。その時は「行けなかった」のが正しいと思うんです。
金子:いや、行けなかったところに、どれほどの地獄を見たんだろうっていうのは、ちょっと垣間見えて……そこもまた鳥肌だったんですよね。
山本:今思い返しても、自分が自分じゃないみたいな動きをしているっていう感じだったので。何ていうか、人間ってこうなっちゃうんだなって。思考が1回停止したみたいな感じだと思うんですけど、あの時って。
金子:魂はなかったですよね。
山本:あの時はなかったです。
金子:抜け殻がそこにいて。
山本:一応ちょっとだけ走った、みたいな感じでした。
金子:我を取り戻すことはできましたか?残り時間で。
山本:そうですね。まあ、実際できていたかはわからないですけど、みんなの動いた穴をしっかり埋めなきゃいけないっていう。そういう作業だけはしっかりしようって。もう1つにやることを絞ってやった感じですね。で、このまま終わったほうがいいのか、それともワンチャンス狙うのかとか、そういうこともしっかり考えなきゃいけないはずなんだけど。とにかく「このまま試合が終わって欲しい」って心境でプレイしていた気がします。
金子:ではPK戦にもつれ込むことが決まった時は、「よし!」な感じ?
山本:まずはホッとしたのが、とりあえず最初だなと思います。PK戦だってなって、そこからは意外と冷静にというか、蹴りたいなと思っていて。
金子:マジですか?
PK戦では、最後のキッカーとしてゴールを決めた山本。「河田が1本止めていたら蹴らないで終わっていただろうし、逆に言えば、相手全部決めていたら自分が最後の結果にならなかったわけで。」と、巡り合わせを感じたという。ゴールネットを揺らした時の気持ちを聞かれた山本は、「ゴールが遠いなと思ったんです。」と、スローモーションに感じたと答えた。金子は、「インタビューをしていると活字にしなきゃと思うことがあるんですが、今日は最たる例でしたね。」と言い、強く印象に残った様子だった。
番組情報
スポーツライターとして幅広く活躍する金子達仁が一流アスリートたちをゲストに迎え、“心の奥底にある想い”を聴くラジオ番組です。アスリートたちの対談を通し、ここでしか聴く事のできない“Deep”な想いと知られざるエピソードに迫っていきます。
また、オンエアでは聴く事ができなかった部分をディレクターズカット版としてPodcastコンテンツとして配信していきます。