ジャーナリストの佐々木俊尚が1月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の中国経済について解説した。
中国、2022年のGDP成長率は3% ~予想を下回る
中国国家統計局が1月17日に発表した2022年の国内総生産(GDP)の成長率は、2021年と比べ3.0%のプラスとなり、目標の5.5%前後を下回った。また2021年のプラス8.4%から大きく減速している。同時に発表された2022年10~12月期の中国の実質経済成長率は、前年同期比2.9%増にとどまった。
飯田)10~12月期の数字が出たので、通年のものも出たというところですが、経済は減速しています。
ゼロコロナ政策の緩和が今後、経済にどのような影響を与えるのか
佐々木)直接的な引き金はコロナ以外の何者でもありません。ゼロコロナ政策を長くやっていて、大混乱になり経済も停滞した。しかし、ここで一気にゼロコロナ政策をやめて開放したため、それが今後、どちらに振れるのか気になるところです。人もすごい勢いで亡くなってしまっています。
飯田)高齢者を中心に亡くなっています。
佐々木)病院のベッドも大変なことになっているそうですが、その辺りと経済との関係はどうなるのか。もう少し底の方まで見ると、ゼロコロナの影響だけではなく、習近平国家主席の経済政策の影響も出てくるのではないでしょうか。1970年代末の毛沢東の失敗後、鄧小平氏が改革開放政策の方向へ舵を切り、一気に資本主義に突っ走ってきたのが1980年代~2000年代の約30年でした。
飯田)そうですね。
佐々木)その後の国家主席は全員、鄧小平さんの路線を踏襲してきたのだけれど、習近平さんはそれを否定する方向に持っていきました。「みんなで豊かになろう」というような意味だと思うのですが、「共同富裕」と言い出し、例えば中国のEC大手アリババグループなどの締め付けを厳しくしていった。その結果、アリババの創業者であるジャック・マー氏は一時行方不明になってしまったのですが、最近日本に現れて……。
飯田)そうらしいですね。
「今後、中国でビジネスを展開することは難しい」と思う企業家が増えている
佐々木)日本に住んでいるという情報があります。同様に日本に逃げてくる富裕層の中国人が多いようです。これが日本にとって吉なのかどうかはわかりませんが、とりあえず中国はそのような状況になっている。
飯田)共同富裕を押し進めた結果。
佐々木)「もう中国でビジネスを展開するのは難しい」と思う企業家などが増えてきているのは間違いないわけで、それが今後どう影響するのかというところはあります。
飯田)アリババグループにしても、金融子会社のアントを「上場する、しない」から揉め出して、創業者であるジャック・マー氏の株式の支配率が5割を切るどころか、10%も切ったという話が報じられていました。
佐々木)昔のような国有企業にしていきたいという感じです。
飯田)逆戻りしているのではないかと。
佐々木)それでうまくいくのかどうか。
習派で固めた中国共産党幹部 ~ゼロコロナ政策で中国経済を壊した李強氏や蔡奇氏
佐々木)この前の共産党大会で新体制が発表されたのですが、新たな組織を見ると、経済に強いテクノクラート(技術官僚)が追放されて、習近平さんと仲のよい部下などをたくさん集めている。その人たちは経済にあまり強くないのではないかという指摘もされています。中国の経済政策の舵取りについては、かなり疑問視されている。
飯田)そのなかでナンバー2だと言われている次期首相の李強氏や、北京トップだった蔡奇(さいき)氏など、ゼロコロナ政策で中国経済を壊した人たちばかりです。
佐々木)しかも、地方経済しか経験していないので、中央で経済をコントロールできるのかとも言われています。おそらく習近平さんは毛沢東になりたいのではないでしょうか。すべてを自分がコントロールするという。
習近平国家主席は毛沢東になろうとしているのか
佐々木)しかし、コントロールしてもうまくいかないから、鄧小平さんが改革を開放して「みんな好きにやれ」と変えたわけです。「そんなものうまくいくわけがないだろう」と思うのですが、何を考えているのでしょうか。プーチンさんと同じで、わからないところではあります。
飯田)これだけの経済成長率の低迷が、コロナ真っ盛りの2021年を除けば、大躍進時代などと。
佐々木)文化大革命終了時の1976年以降で最低(の成長率)などと言われていますから、「大躍進」や「文革」に戻るというイメージは既になかったのですが。
飯田)しかし、「毛沢東になろうとしている」と考えると……。
佐々木)そういうことですよね。
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