ポスト坂本に名乗り! 巨人ドラ4ルーキー・門脇が「ストロング」な理由

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、新人らしからぬ守備力とタフネスぶりで注目されている巨人のルーキー・門脇誠選手にまつわるエピソードを紹介する。

ポスト坂本に名乗り! 巨人ドラ4ルーキー・門脇が「ストロング」な理由

【プロ野球巨人新人合同自主トレ】取材に応じる巨人・門脇誠=2023年1月13日 川崎市・ジャイアンツ球場 写真提供:産経新聞社

いよいよ春季キャンプも終盤に突入。2月23日には今季初のオープン戦、ヤクルト−巨人戦が沖縄の浦添で行われました。3年ぶりのペナント奪還が至上命題のジャイアンツ。戦力アップには、若手の成長も欠かせません。

そんななか、日に日に評価を高めているのが、巨人のルーキー・門脇誠です。奈良県出身で、岡本和真と同郷。創価高校〜創価大学から昨年(2022年)のドラフトで4位指名を受け入団しました。ポジションはショートで、遠投110mの強肩と好守備、パンチ力も武器の走攻守揃った即戦力の左打者です。背番号は「35」。甲子園経験こそありませんが、大学時代は1年春からレギュラー遊撃手として活躍し、3年秋に首位打者と最多打点、4年秋には首位打者に輝いています。

身長171センチと小柄ですが、特筆すべきはそのタフネスぶりです。創価高時代、1年夏の西東京大会初戦に出場してから、創価大4年まで公式戦116試合、すべてフル出場を果たしたのです。7年間で実に999イニング連続出場。入れ替わりの激しい学生野球でそんな記録がつくれたのは、実力はもちろんですが、強靱な体力があったからこそです。

命名するのが好きな原辰徳監督も、さっそく「ストロング門脇」というニックネームをつけ、早くも広まりつつあります。春季キャンプ中も、紅白戦でフルイニング出場を志願。再三にわたり好守備を見せ、沖縄での2次キャンプでも1軍に残りました。明るく場を盛り上げるキャラクターも評価を集めています。

巨人は昨季(2022年)、チームリーダーである坂本勇人が再三にわたり故障で離脱、83試合出場にとどまったこともBクラス転落の一因になりました。坂本の負担を和らげるため、遊撃から一塁へのコンバート案も挙がっており、いずれにせよ「ポスト坂本」の育成は急務なのです。キャンプ中の猛アピールで、門脇はその有力候補に名乗りを挙げました。

原監督が門脇を絶賛したのは、22日に行われた初の対外試合、WBCに出場するキューバ代表との練習試合です。門脇は8番・遊撃でスタメン出場。深い当たりに追いついたり、軽快なフィールディングを見せたり、ルーキーとは思えない堂々とした守備を披露。圧巻だったのは8回、センターに抜けそうな当たりをスライディングキャッチで好捕すると、そのままクルリと1回転して一塁へ送球。ヒットをアウトにしてみせました。原監督は試合後、こう一言語っています。

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『反応良さが並ではない』

~『日テレNEWS』2023年2月22日配信記事 より

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門脇の守備は、初動が早いのが特徴です。バットにボールが当たった瞬間、どこに打球が飛ぶか瞬時に予測し、もう足がそちらに動いている。だから打球に追いつけるのです。また、試合に臨む姿勢にも好感が持てます。試合のときも、練習のような平常心でいることを心掛けている門脇ですが、キューバ戦の際は、こんな発言も。

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『気持ちを出すところ、執念だったりは出していかないと』

~『日刊スポーツ』2023年2月21日配信記事 より(門脇のコメント)

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このあたりも、原監督好みかも知れません。23日、ヤクルトとのオープン戦初戦でも9番・遊撃でスタメン出場。打っては、3回に右中間へタイムリー二塁打を放ち、オープン戦初打席でいきなり打点を挙げてみせました。

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『初球から合わせながらいって、捉えられたので良かった』

~『サンケイスポーツ』2023年2月23日配信記事 より(門脇のコメント)

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さらに4回の第2打席でも、四球で出塁した8番・岸田行倫をライト前ヒットで進塁させ、1番・丸のファーストゴロの間に追加点が入るお膳立てをしました。守っては、ショートで強肩を披露。再び原監督を「見事でしたね」と唸らせました。

打撃に関しては、これからプロの投手が操る変化球などにも慣れていかなければなりませんが、打撃コーチも門脇のバッティングを絶賛。大久保博元打撃コーチが、身長が門脇と同じくらいのレッドソックス・吉田正尚を彷彿とさせると褒めれば、亀井コーチはその長所についてこう語りました。

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『ルーキーの門脇とかスイングも鋭いですしね。ちょっと見た目と違ったスイングしていたのでね。小さいので、もうちょっとコツコツ系なのかなと思ったんですけど。しっかり振れているので、また違った魅力がある、楽しみな選手』

~『スポーツ報知』2023年2月9日配信記事 より

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もちろん、坂本が実戦に合流すれば控えに回るのでしょうが、オープン戦で引き続き安定した活躍を見せてくれたら、公式戦でも試合展開によっては坂本を早めに下げて、あとは門脇で……ということになるかも知れません。そこでも活躍すれば、原監督もコンバート案を真剣に考えることになりそうです。

門脇の長所はもう1つ、すべてにおいて研究熱心であるということです。キャンプ中、ポジションを争うライバルでもある坂本のグラブを借用して、革の違いに驚いたり、守備の一挙手一投足をじっと観察。吸収できるものは何でも採り入れようとする貪欲さを見せていました。

キャンプ中も、最新の機器を練習に採り入れ話題を呼びました。球速160キロの高速マシンで打撃練習を行う際、門脇はレンズが高速でチカチカ点滅する特殊なサングラスを装着。「ビジョナップ」という新兵器で、これをかけると視界がコマ送りのようになり(パラパラマンガを想像してください)、当然ボールは見えにくくなります。

これをつけて160キロの球を打つ練習をしていれば、外したときに少々速い球でも余裕でアジャストできるようになるというわけです。他の選手たちが160キロマシンに手こずるなか、門脇はポンポンと打っていたのを見ると、練習は正直だなと思います。

また大学3年のときに、米国・シアトルのトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」で考案された練習用の特殊なボールを購入。緑が1000グラム、青が450グラム、赤が225グラムと、重さと色の違う3種類のボールを、壁に向かって投げていくトレーニングを実践しています。これはエンゼルス・大谷翔平も採り入れている練習法で、投手の場合は制球力と球速アップにつながる効果がある、と言われています。野手で使っている選手は珍しいですが、門脇によると、これは故障予防も兼ねているのだとか。

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『ショートで全試合に出ている以上、ピッチャーと同じくらい投げているというのがあった。じゃあ、ピッチャーぐらい(ケアを)やらなきゃなと思って』

~『スポーツ報知』2023年1月26日配信記事 より(門脇のコメント)

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また、高校・大学とフルイニング出場を継続できたのも、体のケア方法について研究を怠らなかったからです。1次キャンプ地・宮崎に門脇が持ち込んで話題になったのが、約65万円するという「酸素発生器」です。宮崎では練習が終わると毎晩使用。疲労回復に役立てていました。

しかし、沖縄に移るときに思わぬ誤算が……。

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『約65万円の「酸素発生器」は飛行機の規定で持ち運べないもので、なくなく寮に送ることに』

『宮崎入り時は手荷物の検査で止められ、後から陸路で送ってもらっていた』

~『日刊スポーツ』2023年2月16日配信記事 より

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ベテランならともかく、ここまで体のケアを心掛けているルーキーは初めて見ました。また、宮崎→沖縄の飛行機移動の際にも……。

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『袋から背もたれ付きの椅子用のクッションを取り出し、広げた。約1万3000円で、長時間座っていても疲れないグッズ』

~『日刊スポーツ』2023年2月16日配信記事 より

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とにかく自己管理が徹底されています。それができるのは、イチローや大谷もそうですが、一流選手の証し。門脇はこう語っています。

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『1軍に居続けることが目標。最終的に新人王を取れるくらい、スタメンを奪っていきたい』

~『スポーツ報知』2023年2月5日配信記事 より

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二岡智宏の故障をきっかけにショートのレギュラーを奪い、昨季まで維持してきた坂本も、いよいよウカウカできなくなってきました。もちろん、若手の挑戦は望むところ。坂本だってそう簡単にはポジションを明け渡さないでしょう。こうやってチームは活性化していくのです。

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