岸井ゆきの、感涙 着実にキャリアを積み重ね初受賞 【第46回日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞】

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1108回】

※写真は、第46回日本アカデミー賞授賞式より (C)東京写真記者協会

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シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画・ドラマを発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

3月10日、グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールにて開催された「第46回日本アカデミー賞」授賞式。最優秀主演女優賞に輝いたのは、今回が初受賞となった岸井ゆきのでした。

そこで今回は、受賞作『ケイコ 目を澄ませて』とともに、岸井ゆきのの魅力に迫ります。

※写真は『ケイコ 目を澄ませて』より

※写真は『ケイコ 目を澄ませて』より

「この作品には、私が見たことのない景色をたくさん見せてもらいました」

元プロボクサー・小笠原恵子の自伝「負けないで!」を原案に、耳が聞こえないボクサーの奮闘を描いた人間ドラマ『ケイコ 目を澄ませて』。

さまざまな感情の間で揺れ動きながらもひたむきに生きる主人公と、彼女に寄り添う人々の姿を丁寧に描き出した本作で、主人公のケイコを演じた岸井ゆきの。

聴覚障害を持つボクサー役ということで、3ヵ月にわたるボクシングのトレーニングを行うと同時に手話を取得。丹念な役作りを経て、撮影に挑みました。

撮影を終えたいまも、ボクシングは続けているとのこと。ステージでのトークでは、最優秀主演男優賞を受賞した妻夫木聡とスパーリングした出来事に触れるなど、飾り気のないチャーミングな姿が印象的でした。

※写真は、第46回日本アカデミー賞授賞式より (C)東京写真記者協会

※写真は、第46回日本アカデミー賞授賞式より (C)東京写真記者協会

嘘がつけず、愛想笑いも苦手。言葉にできないモヤモヤとした思いを心の内に溜め込みながらも、下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける主人公を、まさに全身全霊で演じ切った岸井ゆきの。

まるで役が乗り移ったかのような気迫が伝わってくる熱演に、すでに作品をご覧になった方のなかには、思わず鳥肌が立ってしまったという人も多いのではないでしょうか。

もともと、演技力の高さには定評がありましたが、今作では日本アカデミー賞の前哨戦となる賞レースを席巻してきただけに、今回の最優秀主演女優賞受賞は誰もが納得の一言でしょう。

※写真は『愛がなんだ』より

※写真は『愛がなんだ』より

そんな彼女が一躍注目を集めた映画と言えば、『愛がなんだ』(2019年)。

岸井ゆきのは、恋に盲目なアラサー女子・テルコを瑞々しく好演。同世代の女性を中心に共感を呼び、評判が口コミで広がって、スマッシュヒットを記録。「第43回日本アカデミー賞」では新人俳優賞を受賞しました。

その後は、着実にキャリアを積み重ね、2022年は5本の出演映画が公開された岸井ゆきの。主演から助演まで、そしてメジャー大作からアート系作品まで、その縦横無尽の活躍ぶりから、いかに映画製作者に愛され、必要とされている存在であるかが垣間見えます。

身長150.5cmと小柄ながらも、実際にお会いしてみると全身からエネルギーがみなぎっていてパワフルな印象がある彼女。その存在感は、1作品ごとに増すばかりです。

※写真は、第46回日本アカデミー賞授賞式より (C)東京写真記者協会

※写真は、第46回日本アカデミー賞授賞式より (C)東京写真記者協会

受賞の瞬間は驚きのあまり、両手で顔を覆った岸井ゆきの。ブロンズ像を手に壇上に立っても、まだ信じられないという表情を浮かべ、その瞳には光るものが。

そんな彼女の様子を見て、笑顔で割れんばかりの拍手を送っていたのが、吉岡里帆、のん、清野菜名といった同世代の女優たち。ライバル的な立場にある彼女たちが、受賞者である岸井ゆきのを祝福する姿は実に美しく、日本映画界の未来を明るく照らしてくれているように感じたのは、きっと私だけではないはず。

「映画が大好き」と語る岸井ゆきのは、次のようにスピーチを締めくくりました。

「劇場でまだやっているんです。上映中です。是非、劇場で観ていただきたいです。それだけが私の望みです」

『ケイコ 目を澄ませて』

『ケイコ 目を澄ませて』

■ケイコ 目を澄ませて

全国上映中
出演:岸井ゆきの、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中原ナナ、足立智充、清水優、丈太郎、安光隆太郎、渡辺真起子、中村優子、中島ひろ子、仙道敦子、三浦友和
監督:三宅唱
原案:小笠原恵子「負けないで!」(創出版)
脚本:三宅唱、酒井雅秋
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINEMAS
公式サイト https://happinet-phantom.com/keiko-movie/

※写真は『愛がなんだ』より

※写真は『愛がなんだ』より

■愛がなんだ

DVD&Blu-rayリリース デジタル配信中
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、筒井真理子、片岡礼子、江口のりこ
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織、今泉力哉
原作:角田光代「愛がなんだ」(角川文庫刊)
主題歌:Homecomings「Cakes」(felicity / SECOND ROYAL RECORDS)
配給:エレファント・ハウス
(C)2019映画「愛がなんだ」製作委員会
公式サイト http://aigananda.com/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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