経済アナリストのジョセフ・クラフトが9月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。東京都内の衆院小選挙区で選挙協力を復活させる合意文書に署名した自民党と公明党の今後の関係について解説した。

2023年9月1日、記者の質問に答える岸田総理～出典：首相官邸HPより（https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202309/01kaiken.html）

自民党と公明党が東京での選挙協力復活で合意

飯田）次の衆議院選挙に向け、自民・公明両党が東京での選挙協力を復活させることで合意しました。「信頼関係は地に落ちた」とまで言われていた東京での選挙協力ですが、自民党の岸田さんと公明党の山口さんは9月4日、合意文書に署名しています。

クラフト）そもそも大人気なかったですよね。冷静になってみれば、自民・公明両党にとってマイナスです。少し時間を置いて、落としどころを見つけたのでしょう。

清和会が岸田政権支持を表明したことで麻生派、茂木派も支持に回る　～自民党総裁選の前に解散に踏み切る必要はない

クラフト）ただ、合意があったからと言って、すぐに解散するとは思わない方がいいのではないでしょうか。もちろん解散の選択肢もありますが、いまの自民党内の政局を見ると、直近の8月31日、清和会が常任幹事会を設置する新体制を発足させました。

飯田）安倍派ですね。

クラフト）そこでいち早く安倍派の存在感を示すために、岸田政権への支持を表明しています。最大派閥が支持を表明したことで、麻生派、茂木派もおそらく支持に回るでしょう。岸田政権としては、2024年9月の自民党総裁選は既に主要派閥の支持を取り付けられたので、わざわざその前に解散に踏み切る必要がないのです。

飯田）主要派閥の支持を得ているので。

クラフト）リスクを取ってまで、自民党総裁選に挑む必要がなくなった。もちろん、選挙に勝てるし任期を伸ばしたいという意向であれば解散を打つこともあり得ますが、6月のときよりは焦って行う必要はなくなったと思います。

公明党と合意してすぐに選挙となると自民党議員が出られない選挙区も出てくる　～総裁選を固めてから選挙を行った方が党内も治めやすい

飯田）そもそも論として、今回の解散は「次の総裁選を乗り切るため」と考えると、その間に対抗馬の人たちがそれぞれ矢面に立たされた感じがありましたね。

クラフト）今回は公明党と合意しましたが、すぐに選挙となると、自民党の議員が出られない区も出てきます。そうなると党内から不満が出てしまうので、むしろ「将来の合意」として少し時間を置き、総裁選を固めてから選挙を行った方が、党内も治めやすいと思います。

解散がなければ、人事も適材適所で自由にでき、マイナンバーカードへの対応もできる　～ガソリンなどの補助金を含め、政策重視の運営ができる

飯田）解散が遠のくとなると、9月中旬に行われるとされる改造人事がどうなるか。「無風なのではないか」などとも言われますが。

クラフト）小規模人事と言いますか……。

飯田）主要なところは変わらないと。

クラフト）変わらないと思います。若手議員、女性議員をどこまで入れられるかではないでしょうか。いまはマイナンバー問題がありますし、人事でも大きな変更がない。そういったところから、選挙を戦っていくような材料も少ない。私はむしろ選挙がないと思えば、人事も適材適所で自由にできますし、マイナンバーについてもしっかり対策できると思います。また、いろいろな補助金のこともあり、これから予算の話も出てきます。

飯田）ガソリンなどですね。

現在の主要閣僚を維持した形で次期自民党総裁選に挑む方が政権運営は安定する

クラフト）むしろ年内は、岸田総理が好きな政策重視の運営ができるのです。選挙が好きなイメージもありませんので、年内の選挙はないのではないかと踏んでいます。

飯田）改造も小規模となると、少し前まで噂されていましたが、幹事長が代わるのではないかという話や、主要閣僚でも、木原官房副長官をどうするのかということも言われていました。そういうものも、もしかすると、そのまま乗り切ってしまうかも知れませんね。

クラフト）外交的にも内政的にもさまざまな問題を抱えており、官房副長官を代えることは難しいです。また幹事長を代えると、茂木派からの支持が得られなくなり、基盤が弱くなります。いまの主要閣僚を維持した形で、2024年9月の自民党総裁選に挑む方が政権運営が安定するのではないかと思います。