ジャーナリストの須田慎一郎が9月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。福島第一原発の処理水放出について解説した。
中国による日本産水産物の全面禁輸、政府が新たに200億円の支援を調整
福島第一原発の処理水放出で、中国が日本産水産物を全面禁輸したことを受け、政府は検討されている水産事業者への支援策として既存の基金とは別に、新たに200億円程度を充てる方向で調整を進めていることがわかった。政府は水産事業者への支援策を今週中にも取りまとめ、公表するとしている。
飯田)放出開始から10日ほど経ちました。
須田)いろいろな問題が出てきており、今後は「風評被害を抑える」ということが必要になると思います。もちろん、中国の全面禁輸に対して、このように約200億円の支援で穴埋めなどを行う必要はあります。ただ、心配なのは、いろいろな形で風評が広がりつつあることです。
水俣病の映像を使って「同じことが起きる」という情報を拡散する中国政府 ~それをリポストする日本の国会議員も
須田)驚いたのは中国政府が、かつての熊本の水俣病に関する出所不明の映像を使って、水俣病に罹った患者の方の非常に痛ましい映像とともに「同じことが起こるのだ」というような情報を拡散しているのです。
飯田)水俣病の映像を使って。
須田)しかも、日本のある国会議員がそれをリツイート(リポスト)しています。そういうことを1つひとつ対処していかないと、国内でも国外でも、いろいろな風評被害が起こる可能性があります。
飯田)中国が情報戦を仕掛けているのですね。
中国政府の仕掛けてくる情報戦に先手を打ち、積極的に発信するべき
須田)完全に突入していますよね。ただ単純に、科学的に冷静に説明したところで、向こうはこれを政治利用しているわけですから、そういう受け止め方をする必要があります。「説明不足だ」という声に向き合って説明だけをしていると、相手の情報戦に巻き込まれてしまうと思います。
飯田)言ってきたことに対して反論し、潰すというよりも、積極的にこちらから広報する必要がありますか?
須田)先手を打つ形で対応しなければならないと思います。
日本やIAEAの正しいデータが開示されているにも関わらず、開示されていないという思い込みで議論する中国
飯田)ロシアによるウクライナ侵略のときも、いろいろなプロパガンダが全世界に向けてロシアから発信されましたが、ウクライナは自分たちで映像を出すなど、積極的に動いていました。
須田)さらに状況がどんどん変わっていきます。そもそもトリチウムの問題だったはずが放射性物質、いわゆる核種の問題になっている。これについても国際原子力機関(IAEA)の調査だけでなく、第三者機関を含めて情報開示されているし、明確に「問題はない」と言われているのです。
飯田)そうですよね。
須田)ところが聞く耳を持たず、まだ「不明確だ、説明不足だ」と言う。環境省や経産省、あるいはIAEAの元データをしっかり見れば、開示されているではないですか。そういうものが開示されていないという思い込みで議論が行われています。それも問題ではないかと思いますね。
次から次へと新しい問題を提起して「だから危ないのだ」という論の立て方をする中国
飯田)本当にその辺りはリアルタイムに近い形で情報を出しています。しかも、複数の機関から出している数字が近似値になっているのだから、どこかが恣意的に歪んだ情報を出しているわけではありません。少し考えればわかるのですけれど、そういうことも関係ないのでしょうか?
須田)そういう情報が明らかになっていくと、「とは言えIAEAも何か問題が起きたときに、それを保証するわけではない」と主張しますが、それはそうでしょう。あくまで当事者は日本政府であり東京電力で、最終的に責任を負わなければならないのは、日本政府や東京電力です。IAEAに頼んだのは、中立的な立場でいちばん権威を持っているところだから、「そこに検証してもらおう」としたのであり、そこが保証するわけではありません。
飯田)そうですよね。例えば決算の数字が出てきたときは監査法人に監査を頼むけれど、赤字の責任を監査法人が持つことはありません。責任を持つのは経営陣です。これも少し考えればわかるのですが、そういう弁論法のようなものですか?
須田)次から次へと新しい問題を提起して、「だから危ないのだ」という論の立て方なのです。
飯田)イメージで「危ないかも知れない」と感じさせればそれでいい。
須田)そうですね。
何があっても処理水放出に賛成しない中国・ロシア・北朝鮮 ~この3ヵ国へはもう理解を得る必要はない
飯田)先手を打って「こうなっています」と繰り返し情報を出すことが大事なのでしょうか?
須田)加えて処理水の放出については、「何があっても賛成できない」という部分だけは動かないのです。それに結びついていくようなものを次々と出す戦略を取っている以上、「何を言っても仕方ないのかな」という諦めに近い気持ちにもなりますよね。
飯田)ただ、全世界のなかで日本を罵るような形で批判しているのは、中国・ロシア・北朝鮮であり、他の国々は理解する形になっている。こういう国々にアプローチを行い、一緒に声を上げてもらうことが大事でしょうか?
須田)とは言っても、いま挙げた3ヵ国は何をしても理解しませんから、もはや理解を得る必要はないのではないかと思います。
飯田)同じ土俵に立つと、日本の価値や信用がかえって下がってしまう。
日本国内で「何があっても反対する」教条的なスタンスを持つ人たちにどう向き合うか
須田)それよりも国内です。国内でも、何があっても反対するという教条的なスタンスを持つ人たちがいて、それにどう向き合っていくのか。彼らが風評被害を広げ、福島の漁民や県民の方々を苦しめているのです。この問題をどう考えているのか。
飯田)最近は「風評加害」という言葉や、いろいろなニュースが出てきます。福島の魚や野菜は、モニタリング調査で安全なものしか市場に出さないというやり方を、ここ10年以上続けていますからね。
須田)なおかつ大手メディアが堂々と「トリチウムが魚のなかで濃縮されたらどうするのだ」というような非科学的なことを言い出している。どうなっているのだろうと思います。トリチウムは生物濃縮されませんから。
飯田)そうですよね。濃縮できるのだったら、手前の段階で取り除くことができます。濃縮されないからこそ問題なのですよね。
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