作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴と政治ジャーナリストの田﨑史郎が2月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆院本会議の代表質問で政策活動費の説明を拒否した岸田総理について解説した。
岸田総理、政策活動費の説明を拒否 ~立憲民主党は連座制導入を要求
岸田総理大臣は1月31日の衆院代表質問で、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治改革をめぐり、政策活動費の使途の説明を拒否する考えを示した。総理は「使途については答えは控える」と述べ、党勢拡大や政策立案のための支出だとして「適切に使用されていると認識している」と強調した。
飯田)立憲民主党の泉代表は議員が連帯責任を負う連座制の導入や、政策活動費廃止などをあげて実行を迫ったということです。現場を議場でご覧になっていて、いかがですか?
青山)本会議は参議院も衆議院も大荒れですよ。主権者の方は本会議場に来ていただくこともできるのですが……。
飯田)傍聴できますね。
青山)来ていただくと、テレビで見ている状況とあまりにも違うので驚かれると思います。今国会の現場にいると、特に総理の場合ですが、ヤジで話が聞こえないのですよ。
飯田)答弁している内容が。
「政策活動費」を見たことは1度もない
青山)あまりにもヤジが多い。でもそれには理由があって、ただ「野党がヤジを飛ばしている」という話ではありません。例えば政策活動費ですが、我々は1度も、1円も見たことはありません。立法事務費も1度も見たことがない。今回、歴代の幹事長によっては約50億円を受け取ったのではないかという報道もあります。少なくとも10億円は受け取ったのではないかと。我々も「その金はどこに行ったのだ」と思っているわけですよ。
飯田)一旦党に入ったあと、どこへ行ったのか。
青山)「我々にも配れ」という意味ではないのですよ。ただ、公金であることを考えると捨て置けません。岸田総理の「適切に使用されていると認識している」という答弁に対して、ヤジも出るでしょう。
複数候補の場合、降りてもらった候補者にある程度の金を出す
飯田)政策活動費は一旦党に入って、そこからの差配は党の幹事長などにお任せなのですか?
田﨑)政策活動費は、幹事長のところに毎年10億円くらい入ります。二階さんは5年間幹事長を務めたので50億円と言われていますが、茂木さんも10億円近いので、大体10億円です。幹事長のところに行って、幹事長から渡されるわけです。現在の状態では、その先は明らかにする必要がないのですね。
飯田)いまの法律では。
田﨑)それは改めた方がいいと思います。幹事長は毎年、約10億円のお金を何に使っていたのかということですが、なかなか説明するのは難しいでしょう。自民党の場合、自民党から選挙に立ちたい人が多いから、通常は複数の候補者が手を挙げるのです。それを一本化しないと勝てないから、手を挙げた人に降りてもらうため、「これで我慢してくれ」とある程度のお金を渡す。そのようなことが行われていると聞いたことがあります。そうなると「誰にいくら渡した」とは言えないですよね。また、「この選挙区を重点選挙区にする」となったとき、その選挙区には多くのお金を出すようになるわけです。選挙で当選するためにね。
ほとんどの党に政策活動費はある
田﨑)他の選挙区にもお金は配りますが、それより多い金額を配った場合、それが見えてしまうと「なぜそこにばかりお金を出したんだ」などというクレームが出るから、上乗せ分については外に出せない。そのため幹事長の政策活動費から出すのです。「使い道を示せ」という意見は論理としては通るけれど、一方の立憲民主党も2022年に代表と幹事長にそれぞれ5000万円ずつ、トータル1億円が流れているのです。「その使い道はどうなっていますか?」と聞くと、そこは言わない。公明党や共産党を除いて、ほとんどの政党にあるのではないでしょうか。
飯田)そういうお金はどの党にもある。
これまでの政治での常識がいかに非常識であるか ~各議員が胸に手を当てて考え直すべき
青山)田﨑さんは現実を踏まえて正確におっしゃっていると思います。その上で我々側に重大な問題がいくつかあります。まずいまの法律では、政策活動費の使い道は示さなくてもいい。その法律を誰がつくったかと言うと、国会議員がつくっているわけです。自分たちに都合のいいことをしておいて、政治家以外のところには「厳しい法律もある」とするのはおかしい。法改正は必ず行わなければなりません。
飯田)法改正をする。
青山)選挙区での候補者調整のために使われているのではないかということも、私は10年ほど政治記者を務めていましたから、取材を通じて知っています。直接聞いたこともあります。重なる候補者にお金を渡して降りてもらうということですが、自由民主党の現職議員として申し上げると、金で黙らせるのが政(まつりごと)なのかと。そんなことを大事な選挙の現場でやっていて、そこから出てきた国会議員を集めても、まともな政ができるはずはありません。
飯田)そんなことで選挙を勝ち上がっても。
青山)これまでの政治で常識とされていたことが、いかに非常識なことなのか、私自身も含めて胸に手を当てて考え直すべきです。総理・総裁の指導力はそこでこそ発揮されないといけません。だから本会議で「適切に使用していると認識している、と言って乗り切る」という政自体が違うのですよ。問題は1つひとつ解決しなければならない。解決しようとしないから、能登での悲惨な現実も起きるわけです。ここで自由民主党が変わらないと、日本自体が滅んでしまう。総理から私たちのような末端の人間に至るまで、身を捨てて進める必要があります。その覚悟がまだ全然足りません。
党内で反対意見を言えば不利益を被り、圧力も掛かるが戦うのが仕事
飯田)「うちは派閥解消したのだから」というような話でもないし、それは入り口ですらないということですか?
青山)「政治刷新本部」と名が付いた、その本部長である総理の下で議論するとき、「派閥ではお世話になりました。おかげで副大臣・政務官になれました」、「安倍派が悪いのであって我々は悪くない」という発言が複数の議員から出るわけです。私はそこで反論するだけでなく、それぞれの議員に会い、「それは違うだろう」と話しています。違うタイプの利権と似ていますよね。仲間内で話して回していけば、利益は回ってくる。そこから外れたら違う世界の人間だと。そんな政権党ではやっていけないですよ。
田﨑)自民党の凄さは、このような意見を言う人もきちんと包容しているところです。堂々と言っても処分されず、上から注意されることも……。
青山)いや、それは違う。不利益は被っていますよ。例えば、私はLGBT法に真正面から反対したので、いまも処分中です。副大臣・政務官などのポストも一切、意図的に回ってきません。利益にあずかっているから、派閥にいる議員には見えないのです。本当に真正面から戦っていると、不利益はたくさんあります。
飯田)不利益はある。
青山)でもそれが何なのでしょうか。それと戦うのが本来、主権者から託された仕事ではないですか。敢えて言うと孤立しているのではなく、たった2人で始めた新しい意見集団「日本の尊厳と国益を護る会」は、1度も勧誘していないのに94人ですよ。派閥とは違うけれど、政策を行う集団はできているので、自分たちでやってきたのです。圧力はもちろん掛かります。でも戦うのが仕事ではないですか。
「政治変革会議」の役割
飯田)現状では無派閥の人たちの連絡会ができたり、青山さんも「政治(まつりごと)変革会議」を立ち上げ、いろいろな意見を出す集団ができつつあります。こういうところから自浄作用は生まれていくものですか?
田﨑)生まれてくると思いますよ。
青山)「政治変革会議」の役割は、政治評論家の方は言及されないと思いますが、現職閣僚で2人の方が支持を表明しに来られたし、党中枢の方でもはっきりと支持を表明する人がいます。森山総務会長が意を決して自派閥を解散されたこととか、直接動かしているなどと傲慢なことは言いませんけれど、影響は及ぼしています。それが田﨑さんもおっしゃった自由民主党の“救い”ですよ。たくさん直さないといけない部分はありますが、いいところもあります。
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