トップリーグであるB1・B2への参入を目指し、日本各地で活動を続けるもう1つのB、それが“B3リーグ”です。この連載「もう1つのB“群雄割拠B3リーグ”」は、バスケットボール歴16年・ニッポン放送アナウンサーの私、内田雄基が、地元を背負い、上を目指すB3リーグのクラブ活動や見どころをご紹介していきます。
賽は投げられた――
共和政ローマ末期の政務官、ガイウス・ユリウス・カエサルの言葉です。賽とはサイコロのことであり「運命に向かってことは進み始めた。行くしかない!」という意味を持ちます。
連載7回目の今回ご紹介するのは、このカエサルの名言から、相手がどのような強豪であろうとも不退転の決意を持って試合に臨み勝利するという決意が込められた“サイコロ”の名を冠する、「立川ダイス」です。
立川ダイスは、2016年に3人制バスケットボールのクラブとして発足しました。5人制のチームが出来たのは2022年4月。5人制のクラブとしてはまだ創設2年目ですが、1試合平均の観客数は2,082人(4月4日時点)。B3リーグ上位で、人気も非常に高いクラブの一つです。
どのようなクラブ運営をしているのか、その人気の秘密について広報の斎藤さんにお伺いしました。
「ファンの皆さんの熱い応援は、我々にとってとても大きな力になっています」――広報・斎藤さん
内田:まず、ホームアリーナのアリーナ立川立飛についてお伺いしたいんですが、立飛駅の目の前にあるんですね。びっくりしました。
斎藤さん:アリーナ立川立飛は収容人数3,275名のバスケを観戦できる大きなアリーナで、多摩モノレール立飛駅から徒歩1分という好立地です。周辺には大型ショッピングモール、映画館、ビーチBBQ場などがあります。
内田:人が沢山集まるエリア、その真ん中にバスケットボールクラブのホームアリーナがあるのは、バスケファンとしても嬉しいです。個人的に、観戦していてとても心地のいいアリーナだなと思っていたんです。広いけれど、会場の応援の一体感が感じられますし、コートとも近いので選手の表情までしっかりと見ることが出来る素晴らしいアリーナだなと思います。これだけ良いアリーナを使えるクラブは、なかなかないと思うんですけれど……。
斎藤さん:私の所属する株式会社多摩スポーツクラブは、元々アリーナ立川立飛を運営していまして、バスケクラブの運営をしていませんでした。しかし、ご縁があって、2020年に立川ダイスの運営権を多摩スポーツクラブに譲渡していただき、立川ダイスのホームアリーナになったという経緯があります。
内田:アリーナとクラブ、両方を運営されることになったと。
斎藤さん:立川ダイスは、商工会議所や商店街、観光協会、青年会議所など、地元の皆さんが立川をバスケットボールで盛り上げたいという気持ちから立ち上げられたクラブです。一方で、我々多摩スポーツクラブも、良いアリーナは持っていても使用しなくては意味がないので、ゆくゆくはスポーツチームを運営していきたいと考えていました。その中で、運営のお話があり、チャンスをいただいたという形ですね。運営する側の重みは感じています。「立川をバスケで盛り上げる」という使命をしっかりと果たしていきたいと日々思いながら運営しています
内田:そうだったんですね。元は3人制のクラブ。そこから5人制のクラブを作ったのはどのような経緯があったのでしょうか?
斎藤さん:それも「立川をバスケで盛り上げる」ためでした。3人制の強みはどこでも大会を開催出来ることですが、ホームコートという概念が薄いです。また、1年中試合があるわけではありませんでした。一方、5人制には1シーズンの中で半分の試合をホームコートで出来ます。立川の皆さんにより喜んでもらいたいという想いが5人制、B3への参入へつながっていきました。
内田:今日(3月16日(土))の東京八王子ビートレインズ戦も2,467人のファンの方が会場にいらっしゃっているんですよね。参入を決めたことで、今日のように沢山のファンの方がアリーナ立川立飛に集まるようになったんですね。
斎藤さん:2シーズン目の今年は、ホーム戦があるたびに沢山のファンの方に足を運んで頂いて声援を頂いています。ですが、最初の1年は本当に大変だったんです。お客さんも今より全然少なくて、1試合平均500人台でした。
内田:え、500人台ですか?
斎藤さん:そうなんです。元々3人制のクラブがあったので、知ってくださっている方もいましたが、今ほどの認知度はなかったんです。商店街にポスターを貼ってもらうために足を運んだ時も、皆さん、何となく知っているという感じでした。ですから、広報活動には力を入れました。家族連れの方に来ていただきたいという思いがあったので、エスコートキッズで選手と一緒に入場してもらったり、無料で遊べるバスケスペースを設けたり、学校訪問をしたりなど、様々取り組みました。特別なことというよりは、地道な活動ですけれど少しでも多くの方に知っていただきたいという思いで活動してきました。
内田:その思いと行動が、今の熱いファンの皆さんの心を掴んだんですね。
斎藤さん:今シーズンは本当に多くの方に足を運んでいただいています。正直なところ、こんなに早くこれほど多くの方に足を運んでもらえるとは思っていませんでした。ファンの皆さんの熱い応援は、我々にとってとても大きな力になっていますし、まだ道半ばですけれども、その期待に応えられるクラブになっていかなければいけないなと思いますね。
内田:試合を観ていて、立川の皆さんの 応援の力は選手たちにしっかりと届いているようにみえました。
斎藤さん:それはもちろんです。例えば、5人制で最初にダイスに入ってくれた#53森黄州選手。彼は元々立川ダイスの3人制チームの出身で、チームを一緒に作るところから一緒にやってきている選手です。立川の皆さんにダイスを知ってもらうため、商店街に一緒にポスターを貼ってもらいにお願いに行ったりもしました。立川のみなさんの想いがあってこのクラブがあることを理解してくれている彼のような選手がいることは、立川ダイスにとって大きな財産です。
内田:クラブの理念が、選手、フロント、ファンと皆さんを繋いでいるんですね!
そして、斎藤さんのお話にも出てきた#53森黄州選手にも、インタビューさせていただきました。
「凄い声量がコートに向かって降りそそいでくるんです」――#53森黄州選手
内田:選手の立場からも、立川ダイスのファンの方の熱量は感じますか?
森選手:立川全体に応援してもらっている感覚があります。やはりホームゲームの時の声援は凄いなと感じます。アウェーから帰ってくると特に感じますね。他の選手ともよくそういう話をしています。
内田:具体的にどういう時に感じますか?
森選手:フリースローの時とか、凄い声量がコートに向かって降りそそいでくるんです。対戦相手だったら相当嫌だろうなと思いますね。立川に来る相手はどこでも飲み込んでしまうぐらいの応援があります。今まで、商店街にポスターを貼ってもらったり、学校訪問したりしてきましたが、スタッフさんが精力的に集客の取り組みをして下さっているので、そのおかげが大きいですね。
内田:その応援を力にして今シーズンは戦えているわけですね。
森選手:はい。もちろん勝てるときも、勝てないときもあるんですが、毎試合沢山の方に来ていただいていて、それが力になっているのは間違いないです。是非もっと沢山の方に応援に来ていただいて、自分たちに力を貸してもらえたらなと思います。
今シーズンの立川ダイスは今週末の残り2試合、どちらも勝利することがプレーオフに進める最低条件です。しかし、会場はホームコート・アリーナ立川立飛。頼もしい応援が、立川ダイスの運命を握るかもしれません。賽は、投げられています。
もう1つのB“群雄割拠B3リーグ”
バスケットボール歴16年、ニッポン放送アナウンサー・内田雄基が、B1・B2リーグへの参入を目指し、地元背負い上を目指す「B3リーグ」のクラブ活動や見どころをご紹介していきます。