トップリーグであるB1・B2への参入を目指し、日本各地で活動を続けるもう1つのB、それが“B3リーグ”です。この連載「もう1つのB“群雄割拠B3リーグ”」は、バスケットボール歴16年・ニッポン放送アナウンサーの私、内田雄基が、地元を背負い、上を目指すB3リーグのクラブ活動や見どころをご紹介していきます。
連載3回目となる今回は『アースフレンズ東京Z』について紹介します。
アースフレンズ東京Zは、皇居の南側に位置する城南エリアを拠点とするクラブで、ホームアリーナは大田区総合体育館。Bリーグの発足する前の2013年から日本バスケットボール協会が中心となって開催されていた男子バスケットボールリーグのNBDLに所属し、2016年からBリーグの開幕に合わせてB2リーグに参入したクラブです。
クラブサイトには「Bリーグ唯一のベンチャー企業が世界に挑む!」と書かれていますが、一体どのようなクラブなのでしょうか。アースフレンズ東京Zを運営するプロバスケットボール運営法人「株式会社GWC」の広報・瀬間琴日(せま・ことか)さん、そしてキャプテン#22の近藤崚太選手にお話を伺いました。
「地域の皆さんとのつながりが、私たちの活動の原動力になっています」――株式会社GWCマーケティング担当・瀬間さん
内田:最初に、クラブのサイトにある“Bリーグ唯一のベンチャー企業”についてお伺いできればと思います。
瀬間さん:言葉の通りです。他のクラブだと名だたる大企業さんがオーナーになっていたりしていますよね。アースフレンズ東京ZはBリーグ初年度から参入していますが、その当初からGWCはベンチャー企業としてチームの運営をしています。
内田:ベンチャー企業がプロスポーツチームを運営していくのは、相当大変なことではないでしょうか?
瀬間さん:確かに、大きな企業さんがオーナーだとその分強いバックアップが出来ます。ただ、ベンチャー企業にも強みがあります。それは、スタッフが自由に働け、自由に意見が出来るところ。それから会社が大きくない分、ファンの方や、スポンサーさんの支えが直接感じられます。地域の皆さんとのつながりが、私たちの活動の原動力になっています。
内田:なるほど。実は、今日試合を観戦していて、ファン目線の取り組みが多いなと感じていました。これもベンチャー企業だからこそなのでしょうか?
瀬間さん:社長が創設当初からずっと、ファンやクラブ、地域のことをよく見ているので、そのような工夫は社長からも沢山出てきます。ホームゲームの試合後は、選手がコート周りにいるファンとハイタッチをして一周するのですが、この時のハイタッチの仕方も社長からこうしたほうがいいよねと指導があります。そして社内から出たアイデアだけでなく、ファンの方から言われた意見もなるべく取り入れるようにしています。そういう現場のスピード感も持っていると思います。
内田:社長をはじめ、皆さんで知恵を絞ってクラブの運営をしているんですね。先ほどから地元について熱く語っていただいていますが、アースフレンズ東京Zは城南エリアがホームタウンですよね。この地域ならではのファンの方の雰囲気はありますか?
瀬間さん:城南エリア、特にホームアリーナのある大田区は商店街が多いです。商店街が持つ温かさが町全体にあると思います。東京23区内にありながらも下町の人情と感じています。例えばチームの成績が振るわず落ち込んでいる状況だとしても、『頑張ってね』と支えてくれます。
内田:商店街と一緒に何か取り組んでいることはあるのでしょうか?
瀬間さん:大田区にある6つの商店街の街灯にチームのタペストリーを掲げていただいています。地域のお祭りなどイベントにありがたいことにお声がけいただくこともあり、選手をはじめ積極的に参加しています。拠点の蒲田駅近くで開催される、大蒲田祭や、夏・秋に行われるお祭りにもたくさんお声がけいただいています。選手個人も商店街の方のお店にお世話になって、良くしてもらっていることもあります。非常にありがたいことです。
内田:クラブと街の商店街がお互いに協力し合える理想的な関係ですね。 バスケットボールはチームスポーツですけれど、アースフレンズ東京Zさんの場合のチームというのは、街全体という感じがします!
「ビッククラブではないけれど、全員でクラブを作ろうという雰囲気がある」――キャプテン#22近藤崚太選手
内田:近藤選手はアースフレンズ東京Zが4チーム目の在籍ですが、このチームの良さはどのようなところにあると感じていますか?
近藤選手:正直ビッククラブではないと思います。ビッククラブではないですけれど、フロントスタッフ含めて全員でクラブを作ろうという雰囲気がある、アットホームなクラブです。ファンの皆さんも親戚の子を見ているような距離感で接してくれます。試合が終わった後のハイタッチでもそういう温かい部分を感じます。やっぱり応援されるクラブというのは作ろうと思っても中々作れるものではないと思うので、それはこのチームの一つの強みなのかなと思います。
内田:ファンの方との距離の近さは近藤選手にとっても力になっているのですね! ファンの方とコート外で話をしたりすることはあるのでしょうか?
近藤選手:ありますね(笑)。町を歩いていて、「近藤さ~ん!」と声をかけてくれたりします。お恥ずかしい話なのですが、自転車のカギを無くして自転車屋さんに持っていかなくてはいけなくなったことがありました。その道中で、自転車を肩に担いでいたら、「近藤さん、手伝いましょうか?」と声をかけて頂きました。そういう距離感はありがたいなと。あとは、イベントにもファンの方は熱心に来てくださることもありがたいです。
内田:素晴らしい関係が築かれていることがよく分かります(笑)。近藤選手自身、ここまでファンの方が熱心に応援してくれる理由をどのようにお考えですか?
近藤選手:やはりビッククラブではないので、自分たちもクラブの一員としてチームを支えるんだ、応援するんだという気持ちを持ってくれているんじゃないかと思いますね。
内田:残りのシーズンはどのような戦いを見せていきたいですか?
近藤選手:この先は上位チームとの対決が続いていきます。もちろん上位だからといって負けるつもりはないですし、僕らはアップセットできると思っているので、そういう気持ち・姿を全員で見せていきたいです!
内田:クラブとホームタウンのお互いの協力の上で、高い目標に挑み続ける姿勢がアースフレンズ東京Z最大の強みだとよく分かりました!
アースフレンズ東京ZはB3リーグの中でも、現時点ではクラブ規模は決して大きな方ではありません。しかし、地域の皆さんの温かい心と選手たちの向上心はこのクラブの大きな武器になっています。試合会場には“世界へ大きくはばたけアースフレンズ東京Z”という言葉が横断幕となって掲げられていました。
下町から世界へ。アースフレンズ東京Zとファンの皆さんの挑戦は、これからも続いていくと強く感じています。
もう1つのB“群雄割拠B3リーグ”
バスケットボール歴16年、ニッポン放送アナウンサー・内田雄基が、B1・B2リーグへの参入を目指し、地元背負い上を目指す「B3リーグ」のクラブ活動や見どころをご紹介していきます。