パリ五輪を目指すための覚醒 バスケ日本代表・河村勇輝が止まらない!

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、バスケットボール日本代表のポイントガードで、Bリーグの横浜ビー・コルセアーズで得点を量産する河村勇輝選手にまつわるエピソードを紹介する。

パリ五輪を目指すための覚醒 バスケ日本代表・河村勇輝が止まらない!

第4クオーター、ドリブルするBブラックの河村勇輝(右、横浜BC)。左はBホワイトの富樫勇樹(千葉)=2023年1月14日、茨城・アダストリアみとアリーナ 写真提供:時事通信

スポーツ界はいま、21世紀になって生を受けた「2001年世代」が熱く盛り上がっている。

プロ野球では佐々木朗希(千葉ロッテ)や宮城大弥(オリックス)を筆頭に、ケガからの復活を目指す奥川恭伸(ヤクルト)、今季ブレイクしそうな西純矢(阪神)と高校時代から注目を集めてきた逸材がずらり。また、サッカー界ではカタールW杯でも存在感を示した久保建英。体操では東京五輪金メダリストの橋本大輝。女子ゴルフでは昨季年間女王の山下美夢有、そして西郷真央や笹生優花らが名を連ねる。

そしてバスケ界の2001年生まれと言えば、日本代表のポイントガード(PG)、河村勇輝。身長172センチとバスケ選手としては大柄ではないが、その存在感はとにかく大きい。それほど、ここ最近の河村は勢いが止まらないのだ。

1月18日の新潟戦ではキャリアハイとなる36得点と7本の3ポイントシュートを記録。そして1月21日、レバンガ北海道との試合では、2試合連続でキャリアハイを更新する39得点。試合後、“#河村なんなん”のハッシュタグがトレンド入りしたほどシュートを決めまくった。さらに1月22日にも25得点を決め、これで3試合連続20点オーバー。中地区首位を走るチームを文字通り牽引している。

実は昨年(2022年)12月、昨季B1王者・宇都宮ブレックスとの2連戦でも1戦目が32得点、2戦目に34得点と、このときも2試合連続でキャリアハイを更新。チームの司令塔としてアシストやゲームメイクが本職であるはずのPGにもかかわらず、2ヵ月連続での「2試合連続キャリアハイ&30点越え」という爆発力には驚くほかない。

もちろん、本職であるアシストでも仕事人ぶりを発揮。今季2節から8節まで、Bリーグ最長となる7試合連続2ケタアシストを記録。現在、1試合平均8.8アシストでアシストランキングは堂々のリーグ1位だ。

福岡第一高校時代にはウインターカップで2連覇を果たすなど、4度のタイトルを獲得。高校在学中にBリーグの三遠ネオフェニックスに特別指定選手として加入し、「高校生Bリーガー誕生」として話題になったのがちょうど3年前のいまごろだ。

その後、大学バスケ界の名門・東海大学に籍を置きながら、特別指定選手としてBリーグ1部の横浜ビー・コルセアーズでプレーしてきた河村。だが、昨年3月、大学は2年で中退し、2022-23シーズンからプロ契約を結ぶことを発表。すべては来年(2024年)に迫ったパリ五輪で結果を出すための決断だった。

「プロ選手」として挑む今シーズン。それだけに「真価」が問われていたのは間違いない。その意味でリーグ1位のアシスト数だけでなく、平均18.8得点はリーグ9位。昨季が平均10.0得点だったことを考えれば、驚異的な「進化」と言える。

今季のこの爆発ぶりのきっかけの1つには、開幕前の日本代表での経験が大きかったのではないか。実は8月のイラン代表との強化試合の途中、トム・ホーバス代表ヘッドコーチ(HC)から厳しく指導を受ける場面があったのだ。その内容について、トム・ホーバスHCはこう明かしている。

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『何でか分からないですが、彼は全然リングを見てなくて、パッシングばっかりのポイントガードになっていました。それは良くないので注意しました』

『彼はシュートもあるのに、なんで打たないんだと思う』

~『BASKET COUNT』2022年8月14日配信記事 より(トム・ホーバスHCの言葉)

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まさに、得点への意識を課題として提示されていたのだ。

プロになった自覚。そして、パリ五輪を目指す上での代表での学び。21歳の伸び盛りの時期にこれだけプレッシャーの掛かる環境に身を置くからこそ、明確な数字として結果が表れているのだろう。

そして、これだけの結果を残すことで、ファンからの注目度と期待度はますます高まりを見せている。先日行われたオールスターゲームには史上最多得票で初選出。オールスター戦前日の「スキルズチャレンジ」では、同じ日本代表のPG、富樫勇樹(千葉ジェッツ)との「ユウキ対決」を制し、見事に初優勝。ノーミスで歴代最速タイム、というオマケ付きだった。

もちろん、日本代表での序列という意味では、経験値的にもリーダーシップの面でも、代表キャプテンでもある冨樫の方がまだ高いだろう。ただ、その「超えるべき目標」があればこそ、河村はさらに成長ができるのではないだろうか。

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『自分よりも身長は小さいですが(167cm)日本一のポイントガードで、全てにおいて日本のNo.1。自分が日本代表を目指す上で富樫選手という壁は乗り越えていかなくてはいけません。憧れの選手ではありましたが、今は超えていかないといけない選手だと思っています』

~『Number Web』2022年3月31日配信記事 より

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2月頭にはその冨樫率いる千葉ジェッツとの2連戦が控えている。「スキルズチャレンジ」に続いて、目標の冨樫超えを果たせるか、非常に楽しみな戦いだ。

パリ五輪へも期待大だが、今年の夏にはインドネシア、日本、フィリピンでの共催となるW杯も控えている。NBAで活躍する八村塁や渡邊雄太らの存在ももちろん楽しみだが、Bリーグから世界を目指す河村の活躍にもこれまで以上に注目したい。

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