NBA本契約・渡邊雄太 特訓支えた少年時代からの“秘密兵器”

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、日本時間4月19日にNBA本契約を結んだバスケットボール日本代表、渡邊雄太選手のエピソードを取り上げる。

NBA本契約・渡邊雄太 特訓支えた少年時代からの“秘密兵器”

ラプターズと本契約を結び、記者会見で笑顔を見せる渡辺雄太(共同)=2021年4月21日 写真提供:共同通信社

バスケットボールの世界最高峰リーグ・NBAは、いよいよこれからシーズンが佳境を迎えます。プレーオフ進出、さらにはファイナルの舞台を目指し熱戦が続くなか、日本のバスケットボールファンにとって嬉しいニュースが飛び込んで来ました。

日本時間4月19日、トロントラプターズ所属の渡邊雄太選手(26)がNBA本契約を果たしたのです。NBA本契約は、田臥勇太選手、八村塁選手に続いて、日本人選手3人目の快挙。これまでは、下部リーグとNBAを行き来し、NBAでの活動日数や試合数に制限のある「2WAY契約」でしたが、今回の本契約によって出場機会はさらに増えることになります。

渡邊選手がNBAでプレーするようになったのは2018年からで、今シーズンは3年目。なかなか本契約に至らなかった要因は「オフェンス面」と言われていただけに、渡邊選手も自らの課題について、こんなコメントを残していました。

『ディフェンスはずっと開幕当初から評価をしてもらえていたので。ただ問題はオフェンス面にずっとあって、3ポイントも2月3月と確率が落ちていましたし、2ポイントに関しても高確率で決められていなかった』

~『FNNプライムオンライン』2021年4月28日配信記事 より

今シーズンはケガの影響もあり、一時期は出番も減っていた渡邊選手。しかし、状態が万全になった4月以降は、何度も1試合キャリアハイの得点を記録するようになります。

とくに、本契約が決まる直前は3試合連続で2ケタ得点をマーク。4月16日には3ポイントシュートやダンクを立て続けに決めるなどの大活躍で、自己最多の21得点をマーク! はじめて、大台である20点以上を記録できるようになったのです。

オフェンス力向上の背景には、NBAのプレッシャーに慣れて来たこと、チームの信頼を得て思い切りよく打てるようになったことなど、さまざまな要因があります。ただ、少年時代から休むことなく続けて来たシュート練習の積み重ねの結果であることも間違いありません。そのシュート練習の陰には、両親の協力と、ある“秘密兵器”の存在がありました。

渡邊選手の父・英幸さんは元実業団の選手。母・久美さんは元日本代表。稀に見るバスケ一家に育った影響もあって、渡邊選手もまた1歳を過ぎたころにはもうバスケットボールで遊び始め、小学2年生のときには「NBAの選手になりたい」と口にしていたと言います。

その夢を叶えるべく、毎朝5時に起きて、父との特訓を始めた渡邊少年。小学校の校庭でランニングやドリブルなどの基礎練習を繰り返しました。そして、大事なシュート練習で渡邊親子が的にしたもの……それが電信柱でした。

円柱の的ですから、ピンポイントでその中央に当てなければ、ボールはまっすぐに返って来ません。父と取り組んだこの「電信柱シュート」を通して、結果としてシュートの精度が磨かれて行ったのです。

実は今シーズンが始まる前、香川県の実家に帰省した渡邊選手は、少年時代のように父と、さらには母も交えた早朝シュート練習を重ねていました。

『本当に、感謝しかないんですけれど、5時半とかにいっしょに起きてくれて、体育館にいっしょにいって。2人とも仕事前なんですけれど、僕のシューティングを手伝ってくれました』

~『Number Web』2020年12月24日配信記事 より

新型コロナウイルスの影響もあり、人との接触を避けて体育館を借りられるのは早朝だけ。そんな毎日の早朝シュート練習で、両親がボール拾いなどのサポートをしてくれたのです。それだけに、シーズン前に、こんな言葉を残していました。

『2人とも年も年なんで、今まで以上に身体は動いていないですし、目の前にきたボールとかも肩が上がらないとか言って取れなかったりするんですけれど(笑)、文句も言わずに僕の練習にずっとひたすらつきあってくれる両親がいるっていうのは、本当にありがたいです。なので、2人のためにも今シーズン、よりシュートを決めたいと思っています』

~『Number Web』2020年12月24日配信記事 より

その宣言通り、フィールドゴール成功率ではNBA挑戦1年目が30%を切っていたのに対して、今シーズンは本契約をつかんだ時点で45%にまで向上。さらに、3ポイント成功率は1年目が12%台だったのに対して、今シーズンは40%近くにまでアップしています。

『昨シーズンのNBAで、3Pシュートを規定数以上打ち、40%以上決めていたのは28人だけ』

~『Number Web』2020年12月24日配信記事 より

いまの渡邊選手がNBAでもトップレベルに近い位置にいることを物語る数字とも言えます。

こうして、念願のNBA本契約を結んだ渡邊選手ですが、もちろん、これで満足はしていません。来シーズンの契約がどうなるかも、今シーズンの残りの結果にかかっています。電信柱から始まった道の到達点はNBA本契約ではなく、NBAでの大活躍のはず。その証拠に、自身のSNSではこんなコメントを残しています。

『努力し続けたかいがありました!更に上を名指してもっともっと頑張ります!今後も応援よろしくお願いします!』

~4月19日 Yuta Watanabe 渡邊 雄太 Twitter(@wacchi1013)より

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