
画像を見る(全21枚) 佐々木亮介/破壊/港カヲル Photo by Viola Kam (V'z Twinkle)
ニッポン放送プロデュースの音楽イベント「何が起こるか“未定”、いま“見てぇ”対バンシリーズ」、題して「未定」が始動。その第1弾として、グループ魂、THE KEBABSの対バンライブが9月8日(月)にKT Zepp Yokohamaで開催された。
グループ魂は、破壊(Vo/阿部サダヲ)、暴動(Gt/宮藤官九郎)、小園(Ba/小園竜一)、石鹸(Dr/三宅弘城)、遅刻(Gt/富澤タク)、港カヲル(46歳/皆川猿時)によるパンクコントバンド。そしてTHE KEBABSは、佐々木亮介(Vo&Gt/a flood of circle)、新井弘毅(Gt/ex.serial TV drama)、田淵智也(Ba/UNISON SQUARE GARDEN)、鈴木浩之(Dr/ex.ART-SCHOOL)からなるロックバンド。それぞれ俳優活動、本業バンドでの音楽活動などがありながら“課外活動”的にバンド活動をしている2組による、超レアにして激アツのステージが繰り広げられた。
開演前のBGMは七尾旅人「crossing」、くるり「さっきの女の子」、細野晴臣「北京ダック」など、横浜を舞台にした穏やかな楽曲たち。19時ちょうどに照明が落とされ、THE KEBABBSのステージが始まった。パンキッシュなアッパーチューン「枕を変えたら眠れない」を放ち、「We're tasty Rock Band, THE KEBABS! エブリバディ! “未定”へようこそ!」(佐々木)というシャウトから軽快なギターカッティングを軸にした「THE KEBABSを抱きしめて」へ。さらに“ド”シンプルなロックンロール「オーロラソース」でフロアを熱狂へと巻き込んでいく。生々しい初期衝動が炸裂するようなサウンドがTHE KEBABBSの魅力なのだが、全員が高い技術とセンスを持ったミュージシャンなので、どんなにラフに演奏しても高品質のロックミュージックになってしまうところがめちゃくちゃ面白いし、楽しい。
「楽屋行ったら、“芸能人だ!”みたいな(笑)。テレビで見るより肌がきれい……言いたいことはそれくらいかな」(佐々木)というMCからは、このバンドが持つ多彩な音楽性を体感できるシーンが続いた。不穏な雰囲気のサウンドと佐々木のラップとシャウトが刺激的に絡み合う「チェンソーだ!」、高速のビートのなかで全員の鋭利なフレーズがぶつかり、爆発的なテンションを生み出す「てんとう虫の夏」、“マジで遊ぶぜ”というメッセージと軽やかなグルーヴが響き合う「やっぱチョキ」(田淵のラップもカッコいい)、穏やかなメロディラインと温かい感情がゆったりと広がる「うれしいきもち」、「パパ! あっちにゴリラがいるよ!」(田淵)というシャウトから始まった「どうぶつがいっぱい」。最新アルバム「THE KEBABS 新譜」でも感じたことだが、本当に自由なバンドだなあと改めて実感させされてしまった。
シンプルで研ぎ澄まされたロックンロールは確かにTHE KEBABSの武器だが、このバンドの魅力はそれだけではない。やりたいアイデアをできるだけ速いスピードで実現しながら、枠を決めずにどこまでも自由に遊び倒す。それこそがTHE KEBABSの本質であり、それは同時にロックバンドのあるべき姿なのだと思う。
佐々木のポエトリーリーディング、そして、田淵の切なくてエモーショナルなボーカルが高らかに響きわたった「ラビュラ」で気持ちいい感動を生み出したあと、ライブは後半へ。「(グループ魂との対バンについて)なんでこうなってるのか意味わからないですけど、超うれしいです。いまから取っておきの歌詞が美しい曲をやります」(佐々木)というトークから始まった「フタバスズキリュウ」を皮切りに強烈なロックチューンを叩き込み、会場の熱気は最高潮に達した。「恐竜あらわる」における新井の速弾きギターソロ、「猿でもできる」演奏前の「“未定”って最高だな! 好きにやろうぜ! 猿でもできるぜ!」というシャウトなど、最後まで見どころビッシリ。最後に残った感想は“ロックバンドは楽しいな!”だけだった。
そして、グループ魂の舞台へ。まず登場したのは“永遠の46歳” 港カヲル。冒頭から「いちばん好きなブスは、ケバブスです!」と不適切すぎる口上で会場を沸かせる。さらに遅番(少路勇介)を紹介し、「ここにいるのは“ケバブス目当てで来たけど、お父さんお母さんが好きだったグループ魂でも冷やかして帰るか”っていう冷やかし連中と、グループ魂ばっかり追いかけてたら友達がいなくなったぼっち連中。この2つの連中が分離しないようにかき回すのが俺たちの今日の仕事だから!」と話しているうちにメンバーが登場。いきなり「モテる努力をしないでモテたい節」「アイサツはハイセツよりタイセツ」と曲名だけで笑いそうになるパンクチューンを続け、かっこいいのか面白いのかわからない空間が出現。“Charのローディー”を主人公にした人気曲「チャーのフェンダー」(暴動と遅刻のギターソロ、そして遅番のサックスが炸裂!)でライブはいきなり最初のピークに達した。破壊が投げる“魂スリッパ”のキレも抜群だ。
暴動、破壊、遅番のコントでさらに笑いを取ると、女子高生に扮した港が登場。「今年の夏、暑いよねー。暑いと食欲が落ちるじゃん? 全然落ちないのー」というグチから“おっさんが女子高になっちゃった”シチュエーションを歌った「High School」。そして“叶姉妹に入りたい”という願望を夏っぽいサウンドに乗せた新曲「来世は叶姉妹」、サーフロックを取り入れたポップチューン「ラブラブエッサイム’82」を披露。ここでいったんメンバーがステージ袖に引っ込み、今度はポリス姿になった港が「HOWEVER」(GLAY)を一人で熱唱。我々は何を見せられているのか……と呆然と笑ってしまう。
革ジャンからアロハに着替えたメンバーが再びステージに。ダンサブルなサウンドに乗せて“宮藤さんへの職質”を歌った「職務質問」では破壊、港、遅番が華麗なパフォーマンスを披露。「ペニス JAPAN 」でシンガロングを巻き起こし、さらに「本田博太郎~magical mystery UPAAAAAAAAA!!!!!~」「Over30 do The 魂」とキャリアを代表する楽曲へとつなげる。個人的にもっともグッと来たのは「それでも生きなきゃ死んじゃう音頭」。世知辛い世の中、あの人もこの人も逝っちゃったけど、それでも死ぬまで生きなきゃね……と歌い踊るこの曲、マジで元気もらいました。
本編ラストは超高速のパンクチューン「IN」と“死ぬまでモテたい!”という切実な願望を露わにした「モテる努力をしないとモテないゾーン」。そしてアンコールは“中村屋”(破壊が扮する歌舞伎俳優の「九代目中村屋華左右衛門」の挨拶に他のメンバーがツッコみを入れるコント)から始まり、ヒット曲「君にジュースを買ってあげる♥」ではTHE KEBABS・佐々木とのセッションが実現した。最後は、破壊、暴動の若かりし頃の姿を投影した「高田文夫」。かっこよくて面白くてちょっと泣ける、今のグループ魂の良さが存分に発揮されたステージだった。結成30周年を迎えたグループ魂、本当にやれるところまでやってほしいと心から願う。
THE KEBABSとグループ魂という絶妙すぎる対バンが実現した「未定 vol.1」。互いの個性がぶつかり合う、最高の共演だった。次回の「未定」にもぜひ期待したい。(文/森朋之)
■THE KEBABS セットリスト
「枕を変えたら眠れない」
「THE KEBABSを抱きしめて」
「オーロラソース」
「ゴールデンキウイ」
「チェンソーだ!」
「ベガスでカジノ」
「てんとう虫の夏」
「やっぱチョキ」
「うれしいきもち」
「どうぶつがいっぱい」
「ラビュラ」
「フタバスズキリュウ」
「恐竜あらわる」
「猿でもできる」
「THE KEBABSのテーマ」
■グループ魂 セットリスト
「モテる努力をしないでモテたい節」
「アイサツはハイセツよりタイセツ」
「チャーのフェンダー」
「High School」
「来世は叶姉妹」
「ラブラブエッサイム’82」
「職務質問」
「ペニス JAPAN 」
「本田博太郎~magical mystery UPAAAAAAAAA!!!!!~」
「Over30 do The 魂」
「それでも生きなきゃ死んじゃう音頭」
「IN」
「モテる努力をしないとモテないゾーン」
アンコール~中村屋
「君にジュースを買ってあげる♥」(w/佐々木亮介)
「高田文夫」
<公演概要>
■イベント名「未定 vol.1 グループ魂×THE KEBABS」
■開催日時:2024年9月8日(月)
■会場:KT Zepp Yokohama
■出演:グループ魂/THE KEBABS
■主催:ニッポン放送
■イベントHP:https://event.1242.com/events/mitei/