
2026年10月28日(水)、茨城県つくば市の奥村組技術研究所にて、「40年目の免震実証実験PR発表会」が開催された。
本イベントは、日本初の実用免震ビル「奥村組技術研究所 管理棟」が竣工から40年という節目を迎えたことを機に実施されたもので、会場には多くの報道陣が集まり、奥村組の代表取締役社長・奥村太加典氏や技術研究所長・上寛樹氏が登壇したほか、ゲストとして俳優の森川葵さんも新ユニフォーム姿で駆けつけた。
40年間にわたる免震技術の検証をはじめ、実際の建物を揺らす迫力ある自由振動実験や技術研究所内ツアーなど、見どころ満載となった本イベントの模様をレポートしていく。
日本の免震技術の発展と普及に一定の役割を果たしてきた奥村組
発表会の冒頭では、主催者を代表して代表取締役社長の奥村太加典氏が登壇。

開会の挨拶に立った奥村社長は、「当社は40年にわたって、免震のパイオニアとして免震技術の研究開発と実用化に努めてまいりました」と述べ、日本初の実用免震ビル建設以来、長年にわたり建物の安全性を検証し続けてきた歩みを振り返った。
さらに超高層ビルや病院をはじめ、文化財の免震展示ケースや既存建物の免震レトロフィットなど適用範囲の拡大に触れ、「あらゆる分野の免震に対して常にパイオニアとしての気概をもって取り組んでまいりました。この40年にわたる取り組みは、我が国の免震技術の発展と普及に一定の役割を果たしてきたものと考えております」と自負を語った。
続いて、今後への展望として「こうした取り組みを継続していくことで、『免震の奥村組』と言っていただけるよう、信頼を勝ち得てまいりたい」と力強く意気込みを表明。管理棟竣工以来、継続して地震観測や計測を行ない、免震性能を確認してきた経緯を提示した。
本日公開された自由振動実験については、「供用を始めて40年を経過した免震装置の性能を実際の建物を揺らして確認するという、ほかに例を見ないものです」とその特別さを強調。「こうした成果の積み重ねが免震技術のさらなる信頼性向上につながり、免震構造の一層の普及展開に寄与するものと考えております」と、実験の意義を熱く訴えた。
挨拶の最後には「ぜひ実験の様子とともに、その意義についても取材いただき、広く社会の皆さまへお伝えいただければ幸いです」と呼びかけ、温かい拍手に包まれながら冒頭の挨拶を締めくくった。
奥村社長に続いて、技術本部 技術研究所長の上寛樹氏が登壇。実施される自由振動実験の概要について解説が行なわれた。

上氏は「本日は竣工40年目の自由振動実験となります。管理棟は1986年に完成した日本初の実用免震ビルで、油圧ジャッキで建物を10cm押し、一気に解放して揺らすことで積層ゴムの性能を確認します」と説明。10cmの変形は震度6弱相当の揺れに該当するという。実験の目的については「実際に使われている積層ゴムの経年変化を直接把握し、設計時の予測値の正しさを検証するためです」と語られた。
データによると、剛性変化率は40年目で12%上昇と予測範囲内に収まっており、「今後も充分な健全性を維持できることが実証されました」と胸を張った。
特別ゲスト、奥村組の新ユニフォームに身を包んだ“奥村くみ”こと、森川葵さんが登場!
続いて、奥村組の新ユニフォームに身を包んだ特別ゲストの森川葵さんが登壇。2018年より同社社員・奥村くみとしてCMに出演している森川さんは「私自身もまだまだ免震について知らないことがたくさんあるので、みなさんとツアーを回りながら勉強したい」と期待を語る。

来年2月の創業120周年を機に刷新される新ユニフォームを一足早く着用した森川さんは、「デザインがスタイリッシュで動きやすく、スポーツもできそうなほど軽い」と満足気な表情を見せると、会場からは大きな拍手が起こり、華やかな雰囲気に包まれた。
報道陣とともにそのまま管理棟前に移動すると、いよいよ自由振動実験がスタート。森川さんはヘルメットを着用し、メガホンを手にして「実験スタート!」の合図を送る。

すると、先ほどまで報道陣が詰めかけていた管理棟の大きな建物全体が水平方向に揺れ始め、しばらくして揺れが収まっていく様子が見てとれた。目の前で巨大な建物が、免震構造によって大きくしなるように揺れる迫力ある情景に、参加者から歓声が上がった。
40年目の免震実証実験を体験してみる
屋外実験の後は、施設内のツアーが行なわれた。
まず、向かったのは管理棟北側の反力壁エリア。「先ほどの自由振動実験で建物を10cm動かした油圧ジャッキがここにあります」と担当者が説明を始める。深さ1.5mのコンクリートで構築された反力壁には黄色い伸縮装置(パンタグラフ)と油圧ジャッキが取り付けられている。

「変位を与えた後、中央のジャッキでパンタグラフを瞬間的に折りたたむことで、建物が手放されて自由振動を始めます」との解説に、巨大な建造物を揺らすメカニズムへの理解が深まった。
続いて、管理棟の地下で、天井高約1.4mという限られたスペースの「免震ピット」へ。暗くひんやりとしたピット内には、40年間建物を支え続けてきた積層ゴムなどの免震装置が整然と並んでいる。

担当者が「柱の下に設置した積層ゴムが地震の揺れをなめらかにし、さらに併設されたダンパーが揺れを抑えます」と構造を解説。「40年経った今も健全な状態が保たれている」との説明に、参加者からは感嘆の声が漏れた。
ゴムの経年劣化についても「屋内にあるため紫外線の影響が少なく、劣化は抑えられます。40年間のデータ検証でも、剛性変化は想定範囲内でした」と語られ、長年の技術的裏付けに一同納得の表情を浮かべていた。
再び管理棟1階のロビーに移動し、森川さんとともに建物内に留まった状態で自由振動実験を体感することに。油圧ジャッキが解放された瞬間、足元の床がゆったりと水平方向に往復運動をスタート。

しかし、建物内のイスなどが倒れるほど強い衝撃や突き上げるような振動は一切なく、免震建物ならではの「揺れをうまくなだらかに受け流す」という不思議な感覚を身をもって味わうことができた。
ツアーの最後は、耐震実験棟にて「長周期地震動装置」の見学が行なわれた。

担当者の説明によると、施設内には3次元振動台や長周期振動台が備わっており、「激しいガタガタした揺れから、ゆっくりとした大きな揺れまで再現でき、国内トップレベルの性能を有した設備で実験しています」とのこと。
さらに、発展途上国などへの普及を見据え、黒鉛やゴムシートなどの安価な材料を活用した新しい地震対策「直置き型構造物」の実証実験も公開された。

実験では熊本地震や兵庫県南部地震の波形が再現され、激しい揺れの中でも上部の揺れが抑えられている様子が確認できた。担当者は「震度5以上の揺れになると上の構造物が滑り、地面の揺れが伝わらなくなります」と説明し、低コストで優れた揺れ低減効果を発揮する最新技術の可能性を示した。
森川葵さん「誰かの心を温めて、元気を届けられるような人間になりたい」

すべての見学プログラムを終え、会場を再び管理棟ロビーに移して、新CMがお披露目されたのちに、森川さんによるトークショーが行なわれた。
ステージ上の大型モニターで新CMが初公開された後、新ユニフォームに身を包んだ森川さんが登壇。来年2月に創業120周年を迎える奥村組と、CM出演10年目を迎える自身の節目が重なったことに触れ、「新しいユニフォームを着て撮影に臨み、前へ進んでいく明るい気持ちを表現できました」と晴れやかな表情で振り返った。
自由振動実験については、「免震効果によって大きなゆったりとした揺れとなることに驚きました。奥村組さんが長年実験を重ねて、私たちの生活を守ってくださっていることを実感できました」と素直な感動を語った。専門用語の多かった「免震」という言葉も、実際に体験したことで「身近で大切な存在だと感じられるようになった」という。
また、日頃から自分と向き合うことや年1回の海外一人旅で視野を広げることを大切にしている森川さん。最後には「私自身ももっと免震や防災について学びを深めていきたいです」と意気込みを語り、温かい拍手の中でトークショーは締めくくられた。
代表質問では、まず直近で印象的だった出来事としてバルセロナでの体験を振り返った。
現地で花火を打ち上げて悪魔を払う祭りに遭遇したと明かし、「花火の音が街中に響き渡るなか、1年で一番楽しみにしていた人たちが集まって盛り上がっていました。その姿がとても明るく、私自身もすごく元気をもらい、日本に帰ってから頑張ろうと思えました」と笑顔を見せた。
続いて、40周年という節目にちなみ「40歳までに叶えたい姿」を問われると、「温かい人になっていたいです。友達や表に出るときの言葉など、自分が発する言葉やお芝居によって、誰かの心を温めたり元気を届けられるような人間になれていたらいいなと思います」と回答。現在の達成度については「まだ50%くらい。これから残り9年かけて100%にしていきます」と意気込みを見せた。
また、理想の住まいやこだわりについての質問には、「今日免震について学んだので、地震対策も考えながら家を建てたいです。個人宅向けの免震技術も開発されているそうなので、いつか取り入れてみたいですね。個人的にはソファーの上にいる時間がとても長く、動画やアニメ、ドラマを見てリフレッシュすることが多いので、ソファーには一番こだわりたいです」と素顔をのぞかせた。
最後に、年齢や経験を重ねても大切にしたい生き方を聞かれると、「嘘をつかないこと」と回答。「自分が自分のまま、真っ直ぐ生きていけるようにということを大切にしています。日々自分に嘘をつかずに過ごすのは簡単ではないですが、そうでありたいと考えながら頑張ってまっすぐ生きていきます」と誠実な眼差しで誓い、温かい拍手に包まれて代表質問を終えた。
免震技術が進化すると、私たちの暮らしはどうなる?

最後に、技術本部 技術戦略部 技術推進課 小山慶樹氏に個別インタビューの時間をいただいたので、その様子をお届けしたい。
──── 奥村組がただ建築物や構造物を作るだけでなく、免震技術の研究開発を進めている意義について教えてください。
小山氏:当社のようなゼネコンは、建物やトンネルなどのインフラを担っている以上、激甚化する災害に対して継続して対応していく技術が必要だと考えています。建築基準法に準拠した最低限の技術にとどまることなく、さらに安全を担保できるような技術を開発し提供していくことで、みなさんが安心して暮らせる環境をつくっていきたいですね。
──── 大きなモノづくりに関わる中で、ご自身の仕事の成果ややりがい、モチベーションはどのような時に感じられますか?
小山氏:開発したものを形にし、建物に実装する瞬間が一番やりがいを感じます。「地震対策につながり、世の中に安全・安心を提供している」という誇りを持って開発しているので、実際に設置された瞬間は本当に嬉しいですね。
──── 混同されがちな「免震」と「耐震」の違いについて教えてください。
小山氏:耐震は、地震が起きた際に建物全体で揺れを受け止めて崩れないようにする技術です。一方、免震は「免震層」を設けて、大きく動かすことで地震の力をそこに集中させ、建物自体に揺れを入れないようにする技術です。

──── 奥村組の免震技術の強み、他社との違いは?
小山氏:当社では「オールラウンド免震」や「性能可変オイルダンパー」といった「免震+アルファ」の技術を開発しています。免震が弱点とするところをひとつずつ克服しながら、より完全な振動対策を目指している点が強みです。
日本初の実用免震ビルを建てた実績をはじめ、会社として免震構造技術の開発に長年力を入れてきた実績があるからこそ、チャレンジマインドが育まれている気がします。
──── こうした技術の進歩によって、私たちの暮らしはどのように変わっていきますか?
小山氏:ゼネコンとしては、事前防災と発災後の迅速な復旧の2つがメインの役割だと考えています。
免震技術によって事前防災を進めることで、地震が起きても建物が継続して使用でき、日々の暮らしに安心感をもたらすことができるのではないでしょうか。
── 小山さんが今後注力していきたいことは?
小山氏:熊本地震の際、想定以上の揺れにより免震建物が側壁に接触する事例が確認されました。
地震には「想定外」が起こり得るため、どこまで想定を広げて建物の継続利用を担保できるか、研究開発を通じて効果を出していきたいですね。
おわりに

日本初の実用免震ビル建設から40年。長きにわたり実証実験とデータ収集を継続し、確かな安全性と技術進化を証明し続ける奥村組。
今回の密着取材を通じて、普段は見ることのできない建物の地下・免震ピットや大型加力装置、長周期地震動の実験施設に触れ、技術者たちの飽くなき探求心が私たちの安全な暮らしを足元から支えていることを深く実感できた。
いつ発生するかわからない大地震に対し、建物の安心・安全を高める取り組みと技術の進歩の重要性を感じさせる貴重な取材となった。
建設LOVE 奥村くみ 40年目の免震実験篇(30秒)
