誰でも学生時代に友達をあだ名で呼んだと思うんだけど、男女違うあだ名があったりする事も多かった気がする。そのうち女子が呼ぶあだ名に統一される事なんかもあるワケで、オレはその“女子命名あだ名”で呼ぶのにスゴい抵抗ありました(今でもw)。
高校の時、1年下に佐藤っていう歌のすごくウマい女子がいて、「おい佐藤 この曲知ってるか」なんてやりとりを放課後よくしてたんだけど、その子、女子の間からは“エポ”って呼ばれてました。
やがてその“佐藤エポ子”チャンがEPOとしてデビューし、アレンジやツアーで一緒になっても、そのEPOっていう呼び方に抵抗感があり、初めて“エポ”って呼んだ時は「好きです」って言うのと同じくらい顔から火が出そうに! 1ヶ月くらいはドキドキが続きました
実はEPOはデビュー前からレコード会社8社対抗運動会なんかに、当時タマ数のなかったRVC(浅野ゆう子が「私もうオバンだから出ないわ」とEPOと同い年なのに言ったのは秘密)の貴重な戦力として出場し、司会の故・小川哲也さんから「イーピーオー速い!イーピーオー速い!」等と言われてましたね。
その後デビューアルバムの制作が始まったんだけど、EPOってレコーディングの事まだ全然分かってないからヘッドフォンでモニターしないで スタジオの壁から漏れ聞こえるドラムの音を聞きながら歌って、「EPOってリズム悪いのか」って激しく疑われたのが今でも笑えます。
曲ごとに記憶を辿ってみましょう。
1.DOWN TOWN
よく知ってる好きな曲だったんだけど、まさか実際にレコーディングするとは!ってビックリし、カバー曲という概念が今ほどなかったので、「宮田(茂樹)さん何考えてんだ?」と思ったのは秘密。結構シュガー・ベイブのオリジナルのフレーズを忠実に再現したりで楽しかった。
2.約束は雨の中
今聞くとブラス・アレンジに隙があるのが新鮮ですね。宮田さんに「ジャズにはしないでくれ」と言われたんだけど、「大丈夫 出来ないから」などとへらず口MAXだったのは秘密。
3.クラクション
この曲はレコーディングには参加してないんだけど、ライヴでも初期に数回やったか、やんなかったかっていうくらいの離れた距離にいるって思ったのは秘密。あっオレとの距離はあるけどいい曲ですよ!(念押し)
4.日曜はベルが鳴る前に
この曲はベーシック・アレンジがエモーションズとシェリル・リンだったので、ツアーの度にアレンジを激しく変えたのは秘密。
5.語愛
今や名ギタリストの佐橋佳幸サンのプロ・デビューの曲です。間奏でギター・ソロ弾いてますが 4弦のチューニングが甘かったのは秘密。んで、フェードアウトの繰り返しの2回目の頭にEPOの咳が入っちゃってるのも秘密。
6.ポップ・ミュージック/DOWN TOWN
ペトゥラ・クラークの方のDOWN TOWNですね。山下達郎御大アレンジでキーボードで参加し、上物のダビングは任されたのですが、当時珍しかったシンセサイザーPROPHET5とPOLYMOOGで原曲のオーケストラを忠実に再現し、達成感を得たのですが、なぜか最後のサビとフェードアウトしか使われませんでした。今考えたら何か宮田さんに考えがあったんだろうけど、当時は「あんなにカッコよく完成したのに何でだ ターミヤてめー覚えてろ」と思ったのも秘密。
7.アスファルト・ひとり…
確かこの曲はEPOが高校の文化祭とかでやった時は「丘」ってタイトルだった気がする。この歌に出てくるカレシらしき人物は⚪︎⚪︎君の事であろうと察しているのも秘密。
8.言い訳はしないけど
渾身のピアノのイントロのフレーズがテンポを速くしてスウィングさせると、「Honeysucle rose」に似ている事から、この曲を聴く度に宮田さんが「♪野に咲くローズ」っていちいち歌うので、再び「マジで一回ブッ飛ばそうかな」と思ったのは秘密。
9.水平線追いかけて
最初の打ち合わせで宮田さんが「エルトン・ジョンのこんな感じのブラスのイントロで」などとリクエストして 実際鼻歌で聞かせてくれたんだけど、その通りにイントロにブラスでそのフレーズを入れたらミックスダウン時に消えてました。またもや「ターミヤお前なに考えてんだ」と思ったのも秘密。
10.珈琲タイム
まさに眠る前の一曲って感じ。自分で弾いてるエンディングのピアノ聴いて、「明日は大阪からです」っていう、わかる人しかわからない印象を持ったのも秘密。
秘密だらけのレコーディングでしたね!
『DOWN TOWN』写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
【執筆者】清水信之