先日、伊勢志摩サミットが開催され、その現場を4日間に渡って取材した。
(公式写真)
各国の首脳が一堂に会して行われるこのイベントは、開催前後にわたって連日報道された。そのため現地の映像を見たり、都心をはじめとして各地で敷かれた厳戒態勢を肌で感じたりした方も多くいらっしゃるのではないだろうか?
警備に導入された警察官は、全国でおよそ7万人。会場近くでは田んぼの畦道にも警察官が立っているような態勢の中、サミットは大きなテロに見舞われることなく、無事閉幕した。
(自動販売機も販売停止)
このサミットは多くの政府関係者や県、市、そして警察官や民間の警備会社の方々などによって準備され運営された事は皆さんもご存知のことだろう。例えば、我々が取材の拠点とした伊勢市の国際メディアセンターには各国の報道陣が集まって、全世界にその模様を伝えた。
こちらの入り口では厳戒なセキュリティチェックが行われ、IDカードがないと入れないのにもかかわらず、カッターやはさみは没収された。また会場内はホスピタリティで溢れていた。トイレは和式をすべて最新の洋式に入れ替え、フリードリンクで、共用の取材スペースも広く確保されていた。
ただ私の知る限り、このイベントを支えたボランティアスタッフについて詳しく報じられている記憶がないので、この機会にここで紹介しておきたいと思う。
前述の国際メディアセンターは記者が会議の情報を受け取るだけでなく、多くの観光や産業のPRコーナーが設置されていた。これらのインフォメーションのために多くの通訳ボランティアが活躍していた。英語・ドイツ語・フランス語…IDには通訳可能な言語が書かれている。スタッフによると、現地で活躍したボランティアスタッフはおよそ350人に及んだ。彼らは会場だけでなく、名古屋駅など主要な交通拠点にも多く配置され、会場への誘導を手伝っていた。多くはそのポジションに立ったまま。
サミット開催の前の日、その350人の1人、近鉄の名古屋駅構内で通訳ボランティアをしていた女性に話しかけてみた。とても明るく、なんというかとても誇らしげに、仕事を全うされていた。これが日本の「お・も・て・な・し」なのだろう。
そしてボランティアスタッフといえば、国際メディアセンターと報道陣が泊まるホテルを行き来する送迎バスの誘導案内にも多くのスタッフがいた。会場だけではない。ホテル側でも24時間態勢で待機していた。時間で運行しているので、時には報道陣が全く乗っていないバスがつくこともある。それでも彼らは笑顔で、たとえ雨の中でも、報道関係者を出迎えていた。
私は彼らこそ、サミットの陰の功労者だと思う。
サミットの締めくくりとして行われた安倍総理大臣の議長声明を酷評した海外のメディア関係者も、誰一人として彼らに賛辞を送らない人はいないだろう。日本人の誇りとやさしさ、思いやりの精神は確かにそこにあった。
伝えられる事のなかった彼らの活躍を、一人でも多くの人に知ってもらいたい。
ボランティアスタッフの皆さん、おつかれさまでした!!!
最後に…
あれだけの厳戒態勢が敷かれていた国際メディアセンター。前述したように入り口で愛用していたカッターナイフを没収されたのだが、なぜか会場の中にあるコンビニエンスストアに、売っていたのだ。カッターナイフもはさみも。
これだけは疑問のままで、会場を後にした。
(ニッポン放送 報道部記者 後藤誠一郎)