ときに人は悩み、苦しむもの 【瀬戸内寂聴「今日を生きるための言葉」】 第9回
世に別れ上手ということばがありますが、男も女も、どうも日本人は別れ下手ではないかと思います。 それは自分はちっとも損をしないまま、今までの関係は断ち、他へ移りかわろうという不心得があるからです。 自分がいい思いをしたけれ…
世に別れ上手ということばがありますが、男も女も、どうも日本人は別れ下手ではないかと思います。 それは自分はちっとも損をしないまま、今までの関係は断ち、他へ移りかわろうという不心得があるからです。 自分がいい思いをしたけれ…
み仏は、ただ向こうから何かを与えて下さるのではなくて、人間のなかに自分で立ち上がり、自分で考える力をよみがえらせて下さるのだと思います。 それにみ手をかして下さるのです。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉…
人は孤独だから互いに手をつなぎ、肌と肌であたためあおうとします。 心と心で語りあいたいと思い、相手をほしがるのです。 自分の孤独をわかってくれる相手がほしい、そしてその孤独を分かちあってほしいのです。 瀬戸内寂聴 撮影:…
わたしたちはいちど愛を捕らえたと思うと、謙虚さを忘れてしまいます。 この愛を得たのは当然の運命だったかのように思い上がり、 愛を独占しようとします。 苦しみは、その日からはじまるのです。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出…
恋に生きているときは、どんなに愛しあい、どれほど時間を共有し、いかに喜憂を分け合っても、相手のなかに未知なる青い地図が残されている気がします。 まだ、ふみこんだことのないその地図の不思議さに魅せられ、かくされているはずの…
愛する人に別れたことのない幸せな人は、 愛する人に別れた人に、やさしい手をさしのべることはできないでしょう。 悲しみを知らない人は、人の悲しみがわからないからです。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あな…
世の中はおおきな編み物と思ってください。 編み物は一目一目編んでいきます。 編み物の目が、右の目と左の目と、上の目と下の目と、 ずっとつながっているから次から次へとつながって、 あたたかいマフラーやすてきなテーブル掛けに…
人間にはさまざまな運命があります。 神様は公平で、一人の人間だけにいいことばかりは与えません。 長い一生を見れば、どんな人も、いいことや悪いことに くり返し見舞われています。 雨の日が一カ月もつづくということはないのです…
死ぬ日に向かって、なぜこの世に生かされているかを真剣に考えるのが、わたしたちの今日であり、明日であるのでしょう。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫