心が活発になれば、苦しみも深くなる 【瀬戸内寂聴「今日を生きるための言葉」】第69回
心が活発になればなるほど、苦しみは深くなります。 歓びにも必ず苦しみがともないます。 この世は火宅であり、火元であるということすら知らずに苦しみの中にいるのが、われわれ衆生(しゅじょう)なのです。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤…
心が活発になればなるほど、苦しみは深くなります。 歓びにも必ず苦しみがともないます。 この世は火宅であり、火元であるということすら知らずに苦しみの中にいるのが、われわれ衆生(しゅじょう)なのです。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤…
神護寺の薬師如来は、不気味なほど力強い筋肉質の肉体を感じさせる。 その盛り上がった肉体のデフォルメといい、峻厳で暗い冷たい表情といい、 およそ如来ということばのもたらす慈悲とか愛のあたたかさは感じられない。 人間の卑小さ…
殺したいほどの憎しみは、愛の裏がえしです。 愛しもしない、憎しみもない。 それがいちばん冷淡なことで無関心なこと。 無関心より、憎しみをそそげる相手のほうが、 縁があるといえるでしょうか。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ …
若い人とつきあうことが若さを保つことといわれますが、それは全く常識的なことです。 むしろ、すぐれた老人とつきあうことのほうが、発奮させられ、元気づけられ、若くなって、老いこまない秘訣ではないでしょうか。 瀬戸内寂聴 撮影…
旅がひたすらわたしを招き、旅情がひとしお身にしみるのは、旅で出会うすべての風景や人とは、やがておとずれる別れを前提として接するためなのでしょう。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫
人間は不完全なものです。医者も新発明の薬も全能ではありません。医者に見放された患者が、信心して健康になった例もあります。 しかしそれを信心したから霊験(れいげん)で救われたと短絡して考えるのはどうでしょう。 医者に見放さ…
人間は、人も自分をも裏切ってしまうものです。 だからこそ儚い愛の中につかの間、いっそういじらしく、 自分を解き放そうとするのです。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫
倦怠期ということばが、昔は流行しました。結婚にかぎらず、仕事の上にも、その他のどんな生き方の上にも、倦怠期はくり返し訪れるものでしょう。 その人が感じやすく、生活に意欲的で、夢を持てば持つほど、その訪れる度は頻繁で、濃度…
この世に無駄ないのちはひとつもないのです。 あなたが元気にそこに居てくださるだけで、世の中は明るくなるのです。 がんばって。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫
恋愛が下手、恋人ができないという人は、相手の気持ちを察する想像力に欠けている人です。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫
人は夜眠る時、愛する人の上を思います。目ざめた瞬間やはりその人のことをまず思います。それが恋というものでしょう。愛でも恋でもいい。自分以外に心にかかる人がいるということ、それが生きる喜びです。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユー…
旅は恋と似ています。 旅を好む人は、すべて詩人といっていいかもしれません。 旅はまた、死にも通じています。 還らぬ旅に出る、ということばを考えだしたのは、どこの詩人なのでしょう。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生…
仏教では、縁ということを、大切にします。わたしたちが生きていることのすべてはこの縁によって行われているのです。 たとえば家に柿の木があるとしましょう。その柿の木は、はじめからそこにあるわけではありません。 だれかが食べた…
どんな親密な関係でも、たがいの心に秘密が全くないということはありえません。たがいの秘密を尊重しあってこそ、同じ家に住めもするのではないでしょうか。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫
機械でぽんぽん型を抜いたカップのような画一的な人間のなかに、手づくり茶わんのような味のある人間が生まれるには、茶わん造りのなかに、青春も血も汗も涙もとかしこんでゆく苦行を強いられるのかもしれません。 瀬戸内寂聴 撮影:斉…
人との出逢い、一枚の絵、一個の茶碗、あらゆる出逢いの偶然は、人の一生の終わったところからふり返るとき、決して偶然でも卒爾(そつじ)でもないことに気づくだろう。編み物のひとつの目を外しても、その編み物が編みあげられないよう…
人間は、息を吐くたびに嘘を吐いて暮らしている存在なのかもしれません。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫
何の心配も知らずおかあさんのおっぱいに吸いついて、ぐいぐいお乳をのんでいる健康な赤ちゃんほど、幸福のシンボルはありません。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫
だれでも一度は、愛する者に別れるという悲しみの試練を受けています。愛する者と一刻でも多く共にいたいと思い、愛する者の長く生きることを願うのは当然の感情です。それなのに死が愛する者を奪い連れ去るのですから、こんな悲しいこと…
お金をいくら送れば、水子の永久供養をしてあげる、などという新聞広告を見かける。 供養はお金で出来るものではない。たくさんお金を出したから仏になった人の菩提がとむらえるなら、金持ちの仏だけがあの世で安らぎ、貧乏人の仏はあの…
自己の孤独にどっぷりつかり、浮かび上がった人間にしか、真の人間的やさしさは生まれません。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫
恋の情熱などやがてはさめるものなのです。かつて、今の夫と恋に落ちたときの情熱を思い出してみて下さい。あの恋がこうも色あせ、魅力を失うときが来るなど、あのとき予想したでしょうか。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生き…
わたしはこの半生で、したいことをまことにしたいように生きてきました。 世間の道徳も人の思惑(おもわく)も、ときには人の不幸さえもかえりみず、勝手気ままに自分本位に歩くことを貫いてしまいました。その点においてわたしはおよそ…
人を愛することは、マイナスに見えることでも、いつプラスに変化するかわかりません。 人の苦しみが思いやられる人間になっただけでも、愛の苦悩を味わわされたことは幸せなのです。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉…
幸福になるためには、人から愛されるのがいちばんの近道です。そのためにはまず、自分が自分を愛さないといけません。よくがんばっているなと、自分をほめる。そして自分が幸せな気分になるのです。 自分が自分を愛して幸せになったら、…
人間は、生まれる場所や立場はちがっても、 一様に土にかえるか海に消えます。 何と平等なことでしょう。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫
祈りは答えを求めるものではありません。 自分を投げだし、自分を無にして、生まれたままの自分にもどることです。 我(が)を捨てさせてもらうための祈りです。 神も仏も、共に苦しみを分けもっていてくださることを感じるための、祈…
人は一度この世の旅に送り出されたが最後、いやでも前へしか進めない運命を担わされています。一度通った宿へ引きかえす道はふさがれていいきます。 道づれのほしさに目がくらみ、道づれに頼りすぎると、裏切られることが多いのです。 …
わたしが親しみと友情を感じるのは、迷わない女、道を誤らない女ではなく、 心に罪を感じ、過ちに傷つき、愚かな涙を流しつくしたような女です。 小説とは、そういう人たちに読まれたいために書かれるものなのです。 瀬戸内寂聴 撮影…
一見、平凡で穏やかで、よそ目には何の苦労もなさそうに見受けられる人の内部に、どんな激しい人知れぬ嵐が吹き荒れているのか、それは摑みきれるおのではありません。 瀬戸内寂聴 撮影:斉藤ユーリ 出典:『生きる言葉 あなたへ』光…