7日、発表されたJリーグの今季表彰者。最優秀監督賞は、チャンピオンシップ(CS)を制し、7年ぶり8度目のリーグ優勝を飾った鹿島の石井監督が受賞しました。特に、CS第2戦で逆転勝利をおさめた名さい配は、お見事のひとこと。元日本代表監督の岡田武史さんが、「あそこまで勝利に徹したさい配を、日本人監督ではみたことがない」と大絶賛しています。
チームの支柱、小笠原と、決勝点となるPKを演出した鈴木を途中交代させるなど、リーグ3位からの下剋上を飾った裏には、さまざまな苦悩の後がみられます。
千葉県市原市出身。順天堂大学から、JFL2部のNTT関東へ入社して、91年からJリーグへ加入する鹿島の前身、住友金属へ移籍しました。鹿島の創設メンバーとなるも、現役時代はジーコなどの陰に隠れて、スポットを浴びることもない、守備の人でした。
98年、福岡へ移籍。この年に現役を引退すると、指導者として鹿島へ戻りました。サテライトコーチを経て、02年から10年間、トップチームのフィジカルコーチ。12年に総合コーチとなって、昨年7月、成績不振でセレーゾ前監督が解雇されると、初代の宮本さん以来、21年ぶり2人目の日本人監督へ就任しました。
その就任会見でのひとことが、今でも耳に残っています。「僕ができるのは、選手を気持ちよくプレーさせることだけです」。この件でも、おわかりでしょう。とにかく人がいい。また、「Jリーグで100試合も出ていない僕が何で監督になったのだろう」、「監督ではなく、石井さんと呼んでくれ」と語るなど、本当にやさしい。サラリーマンの世界でいえば、素晴らしい上司と言えるのかもしれません。
ところが、Jリーガーは個性的。今年8月20日の湘南戦では、途中交代を命じた金崎夢生が、腹を立てて反抗的な態度をとり、大きく報道されました。誰よりも、ショックを受けたのが石井監督。体調不良で休養することになったのです。非は明らかに金崎でしたが、クラブ側も、退任を視野に入れていた。リオデジャネイロ五輪代表・手倉森監督などをリストアップするなど準備をしたと言われています。
でも、辞めなかったのは、なぜか。休養中の石井監督へ、他のクラブにいる同期、指導者講習会で一緒に学んだ関係者から、電話やメールが…。それは激励ではなく、いずれも、「逃げるのか」という叱咤でした。
そうしたことが、石井監督が再び、ヤル気を抱かせ、同時にやさしい人ではなく、勝利のためには非情になる勝負師へ大変身させたわけです。
8日から開幕する、クラブワールドカップカップヘは、開催国代表としてチームを率います。真価が問われる石井監督。今夜のオークランドシティ戦どころか、「4試合、全て勝って終わりたい」と宣言しています。
12月8日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」