「芸の道」はプロになっても厳しい。辛いときに聞きたい一曲。

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しっとりと優しい音色から、ポップで心がワクワクと楽しくなるような楽曲まで、変幻自在に奏でる、フルート奏者の横田美穂さん。

インタビュー最終回となる今回は、大変なイメージが強い“芸の道”を進んだことで大変だったこと、辛い時期をどう乗り越えたのかをお伺いしました。

【横田美穂インタビュー 第3回】
芸の道はプロになっても厳しい。辛いときに聞きたい一曲

「芸の道」はプロになっても厳しい。辛いときに聞きたい一曲。

●プロでも辛いときは辛い

編集部:芸術を仕事にするのはとても大変なイメージですが、音楽家以外の道を考えたことはありますか?

横田:音楽以外の道は全然考えませんでした。いろいろな選択があったはずですよね。“芸の道は厳しい”と小さい頃から常々言われていましたが、フルートを吹きたい、音楽に身を投じていたい、という気持ちが強かったんです。だから、上手くいかなくても「元々厳しい道を選んでいるから」と受け入れて乗り越えていけました。

編集部:横田さんはよくアンサンブルされていらっしゃいますが、その演奏家の方々にも支えられたのですよね?

横田:実は、フルートは単音楽器なので一度に複数の音(和音)が出ないです。特殊奏法・現代奏法で出せたりはしますが、基本的には単音楽器なので、ピアノやチェロなどの楽器とアンサンブルした方がフルートは楽しいんです。

ニッポン放送で毎週日曜朝に放送中の「魔法のラジオ」が始まってからは、番組のテーマソングを演奏している音楽ユニット『オトのハコブネ』として活動をしています。メンバーは、フルートは私、チェロは櫻井慶喜さん、ピアノ佐々木祐子さん、ギター中村修司さん、パーカッション今野多久郎さん、計5人でユニットを組んでいます。一人ひとりが素晴らしい音楽家で、昨年の12月に公開収録ライブをしたのですが、その時、みんなが一緒に音楽を奏でるとものすごいパワーが生まれることが分かったんです。その音楽のエネルギーを皆さんに感じてもらえること、一緒に共感してもらえる瞬間は本当に幸せです。

編集:フルートが大好きな横田さんでも、辞めようと思ったことはありますか?

横田:「もう良いんじゃないかな・・・」と思ったことは何回かあったかもしれません。バイオリン奏者はクラシックの枠を超えて活動している方が多くいますが、フル―ティストでの前例はほとんどなく、周りの理解が少ないのが現状です。私が活動して、お世話になっている方々の大変な様子を見ていて、厳しいなぁと思いました。

編集部:つらい時や、気持ちが上がらない時、どうやって乗り切ったのですか?

横田:なるべく笑ったり、楽しむことを心掛けました。昨年の4月からニッポン放送「魔法のラジオ」でパーソナリティをさせてもらい、番組では日本の文化や、風習、毎日をより良く生きるための知恵を紹介していますが、このラジオのお陰で四季や天気をしっかり感じたり、それまで当たり前で見過ごしていた些細なことでも楽しめるようになったんです。番組を始めてから、応援してくださる人が多くいることを知って自信になったし、自分にできることを積極的に考えるようになりました。

「芸の道」はプロになっても厳しい。辛いときに聞きたい一曲。

●辛いとき、泣きたいときにおすすめの一曲

編集部:最近、悲しいことがあって音楽に癒されたいな、と思っているのですが・・・元気になれる曲があれば教えてください。

横田:私の曲で恐縮ですが、「泣くのはやめよう」はどうでしょう(笑)?明るくなれる曲です。

これは子どもの頃に泣いた時の思い出を曲にしたものなんですよ。私は3人姉妹で喧嘩ばかりしていて、お母さんはいつも妹たちの味方ばかりして。それで、「私、家出する!」って言って、凄く寒い雨の日に、家を飛び出したんです(笑)。

それで、わざと凄く雨に濡れて“かわいそう感”を出して帰って。お母さんは「こんなに遅くまで、どれだけ心配したと思っているの!!」って迎えられると思ったら……「何やってんの?早くご飯食べなさい!」って言われて拍子抜けしました。

だけど、暖かいご飯を食べたら「まぁ良いかぁ」と思えてきて。やるせない気持ちはあるけれど、食べて元気になったし、“泣くのはやめよう”って思った時のことを曲にしました。

フルートの音楽は歌詞がないけれど、聴いてくれる人の想像力で曲の世界観を心の中で思いっきり広げて楽しんでもらえたらと思います。嬉しいこと、楽しいこと、悲しいこと、日々色々な感情が生まれますが、そんな思いをフルートの音楽にすることで、聴いてくれる人の心を励ましたり、また優しい気持ちになってもらえたら嬉しいなと思います。

編集部:早速この後聞いて、元気をもらいたいと思います!長時間、ありがとうございました。

「芸の道」はプロになっても厳しい。辛いときに聞きたい一曲。

<編集後記>
ラジオや写真の雰囲気通り、実際にお会いしても、とても柔らかい印象の横田さん。フルート奏者のイメージ通りの方でした。でも、華やかなステージの裏では大変な努力と、「音楽家でありたい」という強い思いが支えていることが分かりました。辛いときにおすすめの曲『泣くのはやめよう』を聞いてみました。“無理矢理”元気にする感じではなく、なんとなく「まぁ・・・何とかなるよね」と、ゆっくり柔らかく元気にしてくれる曲でした。

■「魔法のラジオ」番組HP
https://www.1242.com/radio/mahou/

■横田美穂 オフィシャルWEBサイト
http://www.miho-yokota.net/

■横田美穂 CD楽曲情報
http://www.miho-yokota.net/discography

文:allnightnippon.com 編集部 望月知世
写真:allnightnippon.com 編集長 長浜純

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