引き分けをはさんで7連勝。単独首位に立った16年、セの優勝チーム、広島は今年も強いです。「引退した黒田の穴を誰が埋める」がテーマのひとつでしたが、九里がいました。
7連勝の間に、2勝。緒方監督が春季キャンプから、言い続けてきた言葉は本物です。
「九里はいい。伸びしろがあると思わせてくれる。今シーズン、一番期待ができる投手かもしれない。黒田の穴を埋めてくれるかもね」。
鳥取県米子市生まれ。父はかつてブレーブス傘下の3Aでプレー経験があるプロ野球選手。小学2年から九里が野球を始めると、いち早く才能を見抜き、よりよい環境でと、お父さんが帯同し渡米しました。ただ、さまざまな事情があり、1年で帰国。小学6年時には両親が離婚するなど、心が穏やかではない日々がしばらく続きました。
中学の入学式。ハーフで体が大きく、髪は茶色でイケメンなら、ひときわ目立つのは当然でしょう。3年生の不良グループから目をつけられ、俗にいうかわいがりで痛めつけられてしまった。大人数で1人の久里が取り囲まれてしまったのですから、かなうわけがない。ただ、悔しさばかりが残った時、以前、お父さんから言われたことを思い出しました。「けんかでやられたら、次の日にやり返せ」。
入学2日目。リーダーの元へ出向いて、1対1の勝負を申し込んだ。今度は気構えが違いました。やられたら、やり返す。何と、グループへスカウトされ、やんちゃな中学時代を送ることになった。中学では野球も中途半端。流されるままでしたが、一念発起して、再び、野球少年に戻ることを決意します。
そうは言っても、不良グループからは簡単には抜けられない。さまざまな嫌がらせなどを受けたそう。そんな中で祖母の淳子さんの尽力もあり、中学3年の2学期には特例ともいえる転校で、心機一転を図ります。
ゆとり世代でも久里は、昭和のたたずまいを感じさせる。亜大時代から追い続けてきた松本スカウトは、「今どきの選手にはない、負けん気の強さ、根性など精神的な強さがある」というわけです。入団発表で、苦労をかけた祖母、母、それから妹ともに晴れの舞台に臨んだのはそんな恩返しの意味もありました。
大学時代は、ファッションモデル、ホストやAV男優のスカウトまで受けたというエピソードも、今や伝説に。「格好いい男になりたい」と久里は言います。シーズンはスタートしたばかりですが、黒田の男気を継承する投手がカープに誕生。昨日の久里を見ながら、広島の強さを垣間見たような気がします。
4月10日(月) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」