熊本地震から1年。今日から行われる女子プロゴルフツアーの「KKT杯バンテリンレディス」は昨年、第1ラウンド前日に地震が発生し、選手や観客の安全面などを考慮して開催が中止されました。2年ぶりの今大会が、日本中の注目を集めるのも当然かもしれません。
スポットを浴びているのは、14人が出場する熊本県勢。中でも、会場と同じ菊池郡菊陽町出身の笠りつ子は、熊本地震をバネに大きくステップアップした選手です。
「今日あるものが、明日にはなくなってしまう。当たり前が、当たり前ではない。あの地震の教訓です。ゴルフができることが当然だと思っていた。それは間違い。当たり前のプレーができることへの感謝を、より強く心に刻むようになった。今日1日、悔いのないように全力で生きていこう。毎朝、目が覚めると、まずそれを自分に言い聞かせます」
と語る笠のプレーは、確かにガラッと変わりました。16年は、2勝をあげ、2位も5回。出場33試合でベスト10フィニッシュが22回と、いつも優勝争いを演じたわけですから。ゴルフは、メンタルのスポーツと言われますが、これほど変わった例も珍しい。獲得賞金も、日本人選手トップの約1億3,000万円を突破。
自宅なども大きな被害を受け、天井が落ちて、もう住める状況ではない。ただ、被害の審査などを受ける関係で、なかなか取り壊すわけにもいかなかったそうです。
「役所の方も大変だったと思います。両親のことを考えると、早く立て直した方がいいけど、わがままはいえない。瓦の屋根はやめたほうがいいとか、平屋にしようなど今、いろいろと考えている最中です」。
また、ご両親が経営するゴルフ練習場も比較的、被害は少なかったとはいうものの、約2カ月間、母の優子さんが車で寝泊りしながら、営業を続けました。
「帰省した時も、熊本の人は私以上に元気でした。いったい自分にできることはと考えたけど、いいプレーをすることです。この大会を心から楽しみにしてきた」
と話しました。
ゴルフを始めたのは小学3年。ピアノや水泳、さまざまな習い事をしたけど長続きしない。でも、ゴルフだけは楽しくて仕方がなかった。高校時代は、サンスポ女子アマ、九州女子アマで史上最年少優勝を飾り、06年のプロテストで一発合格。プロ12年目、20代最後のシーズンは、獲得賞金2億円という大目標を掲げました。
その原点となったのが、地元で開催される今大会。
「中学時代、ボランティアで参加して、また、初めて経験したプロの試合がここでした。いつかは勝ちたいと願っている試合。自分のペースで、自分のベストを心掛けるだけです」
と、ここはあえて淡々と語っていたのも、笠の成長を物語る証明といえるかもしれません。プロフェッショナルは、あくまで成績で勝負。キャディーをつとめる父・清也(せいや)さんは、
「そろそろ、(優勝の)匂いがしてきた。調子は良さそうだ」
と、タイコ判を押しています。
4月14日(金) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」