5/12(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③
再び浮かび上がる日韓の深い溝の実態
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター宮家邦彦(キャノングローバル戦略研究所研究主幹・外交評論家)
安倍総理と文在寅大統領 昨日午後およそ25分間にも及ぶ初の電話会談
安倍総理大臣は昨日韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と電話会談し、慰安婦問題に関する日韓合意の着実な履行を要求しました。これに対し文大統領は「情緒的に受け入れられないのが現実だ」と返答し、日本と韓国の間で歴史問題の溝が深い実態が改めて浮かび上がりました。
高嶋)言われなくとも非常に難問の日韓ですけども。ニッポン放送報道部森田耕次解説委員です。
森田)文在寅大統領は一昨日の就任宣誓のときに「必要なら今すぐにもワシントンに飛び、北京・東京にも行く」と述べていましたが、その通り外交の優先度もアメリカ・中国・日本の順番で、電話会談もこの順番でした。
安倍総理大臣とは昨日の午後およそ25分間電話会談を行いまして、この中で文在寅大統領は慰安婦問題に関する日韓合意の見直しについては直接触れなかったものの「国民の大多数が情緒的に受け入れられないのが現実だ」と安倍総理に伝えました。
外務省幹部は「意見対立に発展したのか」と記者団に問われて「コメントできない」と口を閉ざし、官邸筋も「日韓合意を否定した発言は無かった」と説明に追われておりました。
文在寅大統領は選挙期間中も日韓合意の無効化と再交渉を公約に掲げておりまして、両国の今後の懸案になるのは必至です。
これに対し菅官房長官の昨日の記者会見です。
菅官房長官)国際社会から高く評価された合意を、日韓それぞれが責任を持って実施していく。このことは極めて重要だと思っていますし、こうした点について今後とも韓国の新政権にも様々なルートで伝えていきたいという風に思っております。
森田)また文在寅大統領は昨日の電話会談で日本側が求める慰安婦像の撤去についても「民間の領域で起きた問題を韓国政府が解決するには限界があり、時間が必要だ」とも述べています。
文在寅大統領は元々人権派の弁護士だったということで、この慰安婦問題については人権問題としては強く意識しているようなのですが、大統領として外交上どう対処していくのか、具体策は見えていません。
「国民が情緒的に受け入れられない」では済まされない 大統領としての韓国“統治”が重要
高嶋)これでもまあまあ穏やかだったというようなことで、ほっとしている向きもあるのですよね(笑)。
宮家)困りますよね(笑)。「情緒的に受け入れられない」ということは要するに「あんた嫌いよ」ということでしょ。そう言われたらもう立つ瀬無いじゃないですか。そうなったら政治家要らないですよね。
彼はもう選挙中に公約したのは分かりますよ。そりゃ良いけども、もう大統領になったのだから“統治”をして欲しいのですよね。統治をするということは、それは韓国の名誉、韓国の国家としての信用、これも含めて守って貰わなきゃ困るのです。
高嶋)「国民が受け入れない」と言ったら一番楽ですよね。
宮家)そう、政治家要らないですよ。だからそういう意味ではこの人はやはり政治家ではないのだなと。人権弁護士というより一種の原理主義者ですよね。日本にもいたじゃないですか、昔。
高嶋)誰のことですか(笑)? 鳩山さんですか?
宮家)いやいや、宇宙人の方ですよね(笑)。言いたいことを言うのは良いのですけどね。まあ「共に民主党」だかなんだか知らないけど、私に言わせてみれば“未だに民主党”をやっている訳ですよね。
これだけ現実的な判断が求められている時期に、だって北朝鮮は一線を越えているのですから。「そのような時期に原理原則だけじゃやっぱり駄目なのではないですかね」と言いたいね。
国民の関心は国内経済や雇用問題 大統領は下手に“親日発言”できないのも事実
高嶋)しかしここで、例えば日本に対して「約束は守るから」とか「慰安婦像も撤去するから」とか言ったらもう大統領じゃいられないでしょ。
宮家)そうそう。だから彼なりに苦渋の選択でやったのでしょうけどね。
しかしまあこの後私が一番心配しているのは、彼が国内で批判される、もしくは経済――国民は経済と雇用が一番関心あると思うのですけどね、それが上手くいかなくなったときに追い込まれて弱い立場になったときにはこの切り札を切ってくる可能性はあります。
高嶋)また財閥叩きが始まるのではないかと言われていますけども、矛盾しているじゃないですか、例えば若い人の失業率も非常に高いと、皆もう苦戦して、若い人可哀想ですよね。大学をせっかく出ても就職が無いとか。だからと言って財閥を叩きに叩けば、他に何があるのですか? 韓国は今。
宮家)だからあの財閥だけで本当にGDP(国内総生産)の大半を出しちゃうのでしょ。だけどそれをちゃんとメスを入れなかったらば、次の発展は無いという風に分かっているはずなのですけど。
高嶋)じゃあごく冷静に明日を見て踏み出す第一歩は何をすべきなのですかね? 文在寅さんは。
宮家)まあ僕だったらやはり国内の経済を立て直す為にいろんな施策をやって、あまりポピュリスト的な感情論はあまりやらないようにした方が良いと思いますけど。
高嶋)なるほど。安倍方式が良いと。
宮家)と私は思いますけどね。
高嶋)なるほどね。しかしこの理想主義的なこの旗を降ろすつもりは無いようですから。
宮家)それはそれで民主主義で選ばれた訳ですから良いですよ。しかしそこにも“現実”はあるということですよ。
選挙公約にも掲げていた“南北統一” 実現するにはこれまでのやり方では難しい
高嶋)最後にもうひとつ訊きたいのですけど、あの南北の統一というのを選挙期間中からけっこう口にしているようですけど、これって具体的ななにか取り尽くしはあるのですか?
宮家)まあ彼は盧武鉉(ノ・ムヒョン)さんの時に向こうに行って話をして来たという成功体験があるので、それが成功かどうかは知りませんよ。しかしそれを繰り返そうとすることは分かるし、同じ民族がふたつに割られていがみ合っている状態が良いとは私も思いませんよ。
だけど「10年前にある程度上手くいったことが、今の世の中に通用するのですか? また同じことをやるんじゃないんですか? 向こうに金払ったら結局ミサイルと核兵器になるんじゃないですか?」という疑問には答えられていないと思います。
高嶋)何やら大きな問題をたくさん抱えて船出したという印象ですけど。