【大人のMusic Calendar】
メッセージ力。
世界的なスーパースターとなった歌って踊れるマイケル・ジャクソン。8月29日はマイケルの誕生日だ。1958年(昭和33年)生まれ。この年の生まれには、プリンス、マドンナ、ベイビーフェイスがおり、まさに「花の1958年組」と言える。2009年6月25日に彼が死去してから、はや8年経つ。
そんな中、マイケル・ジャクソンが残したメッセージは今の混迷の時代、世界にも大きな示唆、意味を持つ。それはかつて、マーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーらが発信したメッセージと同じだ。
マイケルのメッセージを知るには、本人が語った過去のインタヴューを紐解いたり、スピーチを聞いたりすることでできるが、なにより一番直接知ることができるのが彼の作品に書かれた歌詞群だ。
マイケルが歌った曲の歌詞をしっかり理解すれば、マイケルの考え方や哲学、思考、嗜好が理解できる。マイケルの歌詞を精査し、正しく理解することはそのメッセージを受け取るときにとても大事になってくる。ベストは、正しい訳詞集がリリースされることだが、残念ながら著作権の関係でそれが現状では不可能だ。
そこで、その一助となるのが日本のCDのライナーノーツに書かれている訳詞だ。ただマイケルの歌詞は様々なダブル・ミーニングや隠喩があったりして、ひとつの解釈だけで収まらない。英語ネイティヴの人でも、解釈が分かれるものも少なくない。
ただ、ひとつの曲のひとつの解釈ということで捉えるだけでも、マイケル・ジャクソンの楽曲は「勉強」になる。
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哲学者。
たとえば、ここでは訳詞は紹介できないが、どのあたりの曲からマイケルのメッセージを受け取ればいいか、そのガイドを書いてみよう。読者の方は、それぞれCDの訳詞をじっくり読むなり、ネットで検索などしてみてほしい。
まず、「ウィ・アー・ザ・ワールド」と「ヒール・ザ・ワールド」。マイケルの「2大ワールド・ソング」。マイケルの人道主義者的な側面が顕著に出た作品で、後者はマイケルがコンサートで必ず歌う。「ウィ・アー・ザ・ワールド」が諸事情でなかなか歌いづらい中、その「ウィ・アー・ザ・ワールド」に代わるものとしてマイケルが作った入魂の一曲が「ヒール・ザ・ワールド」だ。
そしてこの延長線上にあるのが、「アース・ソング」。ワールドを地球そのものとして捉え、我々が住む「プラネット・アース」の問題を憂いている作品。
さらに、彼自身のメッセージの中でもっとも強烈な作品が、実は彼自身が書いた曲ではないが、「マン・イン・ザ・ミラー」だ。「チェンジ(変革)を起こさなければならない。チェンジを起こしていくのはまずは鏡に映る自分だ。自分自身が変わらなければ、世界を変えることもできない」という大変重く普遍的なメッセージを持つ。
この「チェンジ」はのちにオバマ元大統領のキャッチフレーズ、キーワードにもなった。
そのようなことをマイケル死後に考え、こうしたこと全般を「マイケル・ジャクソン学(Michael Jackson-longy)」と名付けた。
マイケル・ジャクソンは、一流の哲学者であり、社会学者であり、思想家であり、評論家でもある。
【著者】吉岡正晴(よしおか・まさはる):音楽ジャーナリスト、DJ。ソウル・ミュージックの情報を発信しているウェッブ『ソウル・サーチン』、同名イヴェント運営。1970年代には六本木「エンバシー」などでDJ。ディスコ、ブラック・ミュージック全般に詳しい。ラジオ番組出演、構成選曲、雑誌・新聞などに寄稿。翻訳本に『マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル』(デイヴィッド・リッツ著)、『マイケル・ジャクソン全記録』など。自著『ソウル・サーチン R&Bの心を求めて』など。毎月第二火曜夜9時東京のインターFM(89.7mhz)で『ソウル・サーチン・レイディオ』、毎月第一木曜夜10時『ナイト・サーチン』(ミュージックバード)を生放送中。最新情報は、ツイッターで。