いよいよCS(クライマックスシリーズ)ファーストステージが開幕します。セ・リーグで終盤、最も勢いがあったのは横浜DeNAでしょう。ペナントレース3位とはいえ、下剋上も十分に可能。最大の理由は、筒香。リーダーを中心に絶対のチームワークは、短期決戦では最大の武器となります。
振り返れば、2013年夏。現役だったラミレス監督が横須賀で2軍調整中の筒香へ、
「ぼくが監督になったら、君が4番。もちろん、1軍でね」
と語りかけた。ところが、このシーズン、成績は最低。打率2割1分6厘、本塁打1本、3打点と目を覆いたくなる惨状でした。これに激怒したのは、当時の中畑監督。叱咤激励するのではなく、突き放したそうです。その際の「自分で考えろ」のメッセージは大正解。
筒香も状況はわかっていた。ある日、中畑監督の元をたずね、
「どうしたら、松井(秀喜)さんのような、オーラを放つバッターになれるのでしょうか」
と質問をした。これに中畑さんが感心して、巨人のコーチ時代に指導したことがある松井さんを臨時コーチとして、15年の春季キャンプへ迎えています。さらに、筒香をキャプテンへ任命した。このことが横浜DeNAだけではなく、日本の4番が誕生するきっかけになったのです。
今季は昨年のようなタイトル奪取はならなかったものの、ここ一番での勝負強さと人間性はひと回りも、ふた回りも大きくなったと言われている。象徴的な出来事は、筒香が8月の月間MVPへ選出された際に、裏方といわれるスタッフから記念Tシャツを贈られたことかもしれません。そのお返しとして、9月、筒香はスタッフへ特注のグラブをプレゼントしました。
しかし、このエピソードには、伏線があった。特注といえば、すぐに用意できるものではありません。それも大量です。筒香がメーカーへ発注したのは6月でした。当初から、シーズンの感謝を表す意味でプレゼントを用意していたのです。たまたまと言っては失礼ですが、8月の月間MVPが後から来たわけです。そうは言っても、スタッフがプレゼントを用意するほどだから、普段からの気配りがあればこそ。横浜のリーダーたちは、引退した三浦大輔さんをはじめ、スタッフを大事にしていることで知られています。
CS出場を目指して残り10試合という時期のこと。ラミレス監督のミーティング終了後、筒香は
「おれたちはファミリーだ。残り試合はすべて勝つ」
と宣言。そして10月1日、ホームの横浜スタジアムで3位を確定させると、
「ファミリーの前で、決めることができて最高です。ファンの皆さんがいなければ、ぼくらの仕事は成り立ちません」。
このひとことには、グッときました。まずはファーストステージでの活躍を期待しましょう。
10月13日(金) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」