女子マラソン関根「被災地で過ごした経験があって、今、私はここにいる」

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関根 花観 名古屋ウィメンズマラソン

2時間23分7秒で日本勢トップの3位でゴールする関根花観=2018年3月11日ナゴヤドーム 写真提供:共同通信社

先月の東京マラソンで、設楽悠太選手が16年ぶりに日本新記録を塗り替え、ニュースター登場と話題になりましたが、昨日、女子の方でも、待望の新たなスターが現れました。

名古屋ウィメンズマラソンで、初マラソンながら日本人トップの3位に入賞した日本郵政グループ所属の 関根花観(はなみ)選手・22歳です。タイムは2時間23秒7で、女子の初マラソンでは日本歴代4位と立派なもの。

この大会の前身である「名古屋国際女子マラソン」は、オリンピック金メダリスト・高橋尚子選手、野口みずき選手がマラソンランナーとして飛躍するきっかけになった大会でもあります。関根選手は、東京オリンピックの代表選考レースとなる「マラソングランドチャンピオンシップ」への出場権を獲得。いよいよ2年後に迫った大舞台の代表候補に、名乗りを挙げました。

生まれは東京・町田市。子供の頃は駆けっこも好きではなかったそうで、中学校では軟式テニス部でした。ある日、陸上部に「選手が足りないから出てくれない?」と町田市の大会に駆り出されたら、なんと優勝。さらに東京都の大会でも上位に入り、テニスか陸上か、どっちを取るかで大いに悩んだそうですが、2年生から陸上一本に絞りました。

その才能に注目した宮城県の名門・仙台育英高校からスカウトを受けます。ところが、入学直前の2011年3月11日、東日本大震災で学校が被災。

ご両親は、わが子をこのまま入学させていいものか、迷いました。しかし、関根選手は入学の意思を変えず、プレハブの仮設校舎で授業を受けながら、トレーニングを積み、1年生で全国高校駅伝に出場。3位入賞に貢献しました。クラスメートには、津波で家を流されたり、家族を亡くした生徒もいましたが「みんな温かく接してくれた」ことが今も心に残っているそうです。

その後、諸事情あって、陸上部のチームメイトたちと一緒に名古屋の豊川高校へ転校。3年生の時、全国高校駅伝でエース区間の1区を走り、優勝に貢献。

卒業後の2014年、日本郵便に入社。この年、新たに結成された日本郵政グループ・女子陸上部の一期生になりました。

実は、陸上一本でやると決めた中学生の頃から、だんだん距離を伸ばしていき、実業団に入ったら、マラソンをやり、

「東京オリンピックにマラソン代表として出る!」

という目標がありました。

初のフルマラソン参加となった、昨日の名古屋ウィメンズマラソンは、関根選手にとって、マラソンランナーとしての第一歩だったわけです。

「とにかく、積極的なレースで先頭集団に食らいついていきたい」

と、序盤から先頭集団で快走。レースは25キロ過ぎ、ペースメーカーの選手が抜けた瞬間に、2位になったケニアのジェメリ選手が仕掛けましたが、関根選手は4番手で先頭集団を追いかけていきました。

27キロ過ぎに前にいたバーレーンの選手をかわすと、そのまま順位をキープし、みごと3位でゴールしました。

「ラスト10キロから何度か心が折れそうになったけれど、自分で奮い立たせることができたので、良かったなと思います。世界のトップレベルはまだまだ上にあるので、さらに成長していきたい」

とレース後に語った関根選手。くしくも昨日は、震災発生日の「3.11」。1年間、被災地・仙台で過ごし、

「あの経験があって、今、私はここにいる」

と語りました。

3月12日(月) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」

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