代表としてのラストラン「もう代表はきつい」男子マラソン・川内優輝(30歳)【スポーツ人間模様】

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川内優輝

男子マラソン 日本勢最高の9位に入り、笑顔で引き揚げる川内優輝=ロンドン 2017年8月7日 写真提供:共同通信社

世界陸上、代表としてのラストランは、9位。日本勢最上位にもかかわらず、

「最低でも入賞といってきた。許してくれない人もいるかもしれないけど、自分としてはやれることはやった」

と涙を流しながら話しています。ゴール後、車いすで移動する姿が痛々しい。前半、左足を看板に激突させたことから始まり、レースはアクシデント続き。中盤には転倒して、25キロ過ぎには給水にも失敗。

一時は17位まで順位を落としたものの、終盤でのスパートで意地を見せつけたのです。

「本当は医務室にお世話にならない選手になりたい。でも、100パーセント近い力を出しきらないと、勝負にはなりません」。

今回に限らずフルマラソンでは、意識もうろうというシーンが確かに多い。それだけ、全身全霊で走っている証でしょう。

今回は71回目のフルマラソン挑戦で、3度目の世界陸上でした。過去2回は、18位。自己ベストの成績です。

「もう、代表はきつい。重たいです。今後もマラソンはたくさん走りたいけど…」。

日本男子最速の市民ランナーは、事前に代表引退を口にしています。そうはいっても、大きな目標がある。100回のフルマラソン挑戦。2020年までには達成する計画です。

現況をみれば、川内の存在は代表には欠かせません。しかし、なぜ、引退を宣言したのでしょうか。それは、夏のレースが苦手で嫌いだから。とはいえ、ロンドンは高温多湿ではない。川内は「かなり自信がある」とヤル気満々でした。試走を兼ねた下見時点から、「カレー屋さんの下見も済んだ」と口に。レース前日、カレーライスを口にするルーティンは変わらない。

2016年福岡国際では、行きつけのカレー店がつぶれていて、

「松屋のカレーを食べました」。

とにかく、話題には事欠きません。実は、100回のフルマラソンに加え、ターゲットがもうひとつ。フルマラソンを6大陸で走ることです。すでにユーラシア、北米、オーストラリア、アフリカの4大陸を走破しました。残りは南米と南極ですが、南極でのレースはありません。

そんな話が出るのは、「旅行が大好き」だからでした。もしも、ランナーでなければ、

「トラベルライターになりたかった」

そう。

「近い将来、レースで出かけた、紀行文を書いてみたい」

とも話しています。一方、マラソンランナーには、こんな特権もありました。過去3年で2時間10分以内の記録を持っていれば、ゴールドラベルランクとなる。

各レースの招待選手の資格を得られるわけです。

「自分で走ってみたいレースへ招待していただけます。で、マラソンを走る。こんなに楽しいことはございません」。

このように、とても丁寧にコメントするのも川内の特性です。

現在も埼玉県庁職員で、県立久喜高定時制主事。12時45分から21時45分までが定時勤務で、事務職の傍ら、来年の久喜高100周年へ向けて、記念誌を作成中です。

8月7日(月) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」

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